電気自動車より「電動バイク」の方が石油使用の削減には効果的と専門家が提言
化石燃料を消費し排気ガス放出するガソリン車の代わりとなる交通手段として、電気自動車(EV)が注目されています。日常生活での移動に重いバッテリーを抱えて走るEVをひとりで運転するくらいなら、電動アシスト自転車や電動スクーターなどの電気バイクの方が家計にも環境にも優しいと、専門家が提唱しました。
The world's 280 million electric bikes and mopeds are cutting demand for oil far more than electric cars
https://theconversation.com/the-worlds-280-million-electric-bikes-and-mopeds-are-cutting-demand-for-oil-far-more-than-electric-cars-213870
オーストラリアのエディスコーワン大学でエンジニアリングを研究しているMuhammad Rizwan Azhar氏とWaqas Uzair氏によると、2022年の世界の道路にはEV2000万台と、バスやトラックなどの商用EV130万台が走っていたとのこと。
一方、同じ年には電動のモペッド、スクーター、オートバイ、三輪車が2億8000万台以上走っており、電気で動く2輪や3輪の乗り物は4輪のEVを完全に上回っています。
こうした電気バイクの人気により、世界の総石油需要の約1%に当たる1日100万バレルの石油需要が削減されているとの試算結果も報告されており、これはEVが削減している石油需要の4倍に相当します。
電気バイクの強みは安くて環境にも優しい点です。EVはガソリン車に比べると燃費や維持費が安い、つまりランニングコストは低い一方、車体は高価で初期費用がかさみます。例えば、2022年に最も売れたEVであるテスラの「モデルY」の記事作成時点での価格は563万7000円です。
また、EVは確かにガソリン車より環境に優しいものの自動車には違いないため、ガソリン車と同じ面積の道路を占有し、電気バイクより格段に多くの電力を消費し、そのために大きくて重いバッテリーを搭載しています。バッテリーの製造に必要なレアアースの採掘は環境に負荷をかけるため、「EVは全体的に内燃エンジンの車よりもはるかに環境に優しいですが、バッテリーの製造によりその利点の一部が台無しになる可能性があります」と専門家らは指摘しました。
もちろん、電気バイクは長距離の移動には適さないといった欠点もありますが、普段使いであればそれほど大きな問題にはなりません。例えば、アメリカではすべての車での移動の60%が10km未満だとのこと。
通勤や通学、子どもの送迎、食料品の買い出しといった短距離の移動に電気バイクが使われるようになれば、都市部から排出される二酸化炭素は削減され、公共交通システムを悩ませるラストワンマイルの問題も解消されます。例えば、イギリスで行われたeスクーターに関する調査では、eスクーターによる移動は他の移動手段に比べて二酸化炭素の排出量が最大で45%少ないことがわかりました。また、別の研究では、電気バイクによる移動が車両による全ての移動の11%になると、輸送による二酸化炭素排出量は7%削減できるとされています。
Azhar氏らは「電気交通革命は、私たちが都市を移動する方法を再考するまたとないチャンスです。結局のところ、自動車にはひとりで乗ることが多いので、自分だけで移動するにも多くのエネルギーを消費しています。対照的に、電動バイクは1~2人の移動に使うエネルギーが少なく、購入費もランニングコストもEVよりはるかに安くつきます」と述べました。
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