電気自動車の保険料が爆増しているとの報道、見積額が10倍になるケースも
環境意識の高まりに伴い電気自動車(EV)の普及も進んでいますが、修理費がかさむEVは保険会社から次々と保険の引き受けを拒否されるようになっており、中には約10倍の保険料を提案された人や約90万円の保険料を請求されたテスラ・Model Yのオーナーもいると報道されています。
‘The quotes were £5,000 or more’: electric vehicle owners face soaring insurance costs | Car insurance | The Guardian
https://www.theguardian.com/money/2023/sep/30/the-quotes-were-5000-or-more-electric-vehicle-owners-face-soaring-insurance-costs
イギリスの大手一般紙・The Guardianに「保険会社から契約の更新を拒否されたのはショックでした」と話すのは、イングランド北部のブラッドフォードに住む30代のModel Yオーナーであるデビッドさん(仮名)です。
デビッドさんは2022年7月から2023年7月までAvivaというイギリスの保険会社の保険に加入していましたが、契約の更新時期にさしかかると、会社からもうModel Yをカバーする保険は扱っていないという通知を受けたとのこと。
テスラ車のオーナーが集う公式フォーラムやSNSには同じ悩みが数多く投稿されており、その中には再契約ができても見積額が60%値上がりして最大1100ポンド(約20万円)になったという報告もあれば、447ポンド(約8万円)から4661ポンド(約85万円)へと約10倍に跳ね上がったという報告もあります。
やむを得ず何週間もかけて保険を比較したデビッドさんは、Direct Lineという保険会社の保険に加入することにしましたが、保険料は4500ポンド(約82万円)、月払いの手数料も含めると総額5000ポンド(約91万円)になってしまいました。
イギリスではあらゆる車のオーナーが史上最高水準といわれる保険料の高騰に直面しており、ある統計によると自動車保険の価格は2023年8月までの12カ月間で52.9%上昇しているとのこと。
特にEVの保険料の値上がりは激しく、ガソリン車とディーゼル車の値上がりが29%だったのに対し、EVは2022年に比べて72%も保険料が高くなったと、金融比較サービス・Confused.comは報告しています。
Confused.comの自動車担当専門員であるルイーズ・トーマス氏は、EVの保険料がかさむ理由について、「EVの普及が進んでいるとはいえ、イギリスの道路ではまだ少数派であり、保険会社にはこの種の車の保険を扱った経験があまりありません。これに加えて、EVには高価な機能やアップグレードが標準搭載されており修理費も高くなるので、それが保険料に響いています」と説明しました。
EVのコスト高に苦しんでいるのは、オーナーだけではありません。保険会社・Green InsurerのCEOのポール・バクスター氏によると、保険料の請求にかかるコストはディーゼル車やガソリン車よりEVの方が25%高く、修理にかかる時間も14%長いとのこと。これには部品の価格や入手のしづらさが関係しており、特にバッテリーなど下回りが故障すると修理費が青天井になってしまいます。
この問題に拍車をかけるのが、修理ネットワークの人材不足や技術不足です。業界団体・Institute of the Motor Industryは、EVの資格を持つ整備士が2032年までに1万6000人不足すると推定しており、ドアのへこみはともかくバッテリーが損傷すると対応の遅れは避けられないとバクスター氏は話しました。
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