「石油産業を守るために電気自動車を廃止する」という時代に逆行するトンデモ法案がアメリカで提出されている
二酸化炭素排出量の少ない移動手段とされる電気自動車への移行が世界的な潮流となっており、フランスやノルウェー、カリフォルニア州といった国や地域では将来的なガソリン車の販売停止が議論されています。そんな中、アメリカのワイオミング州で、「石油産業を守るために2035年までに電気自動車の販売を段階的に廃止する」という法案が提出されました。
Bill Detail
https://wyoleg.gov/Legislation/2023/SJ0004
問題の法案は、ワイオミング州議会の上院議員4人と下院議員2人によって連名で提出されました。法案では「石油とガスはワイオミング州の誇り高く価値ある産業である」「ワイオミング州の石油産業とガス産業は、これまでに数え切れないほどの雇用を生み出し、税収をもたらしてきた」といったことを根拠に、2035年までに電気自動車の販売を段階的に廃止することを求めています。
法案に記されているワイオミング州における電気自動車普及の懸念点は以下の通り。
・ワイオミング州には広大な幹線道路が敷設されているが、電気自動車の充電インフラが十分に配備されていないため電気自動車の普及には不向き。
・ワイオミング州に充電インフラを十分に配備するには、州内の発電量を増大させる必要がある。
・電気自動車に使われるバッテリーはアメリカ国内で十分に供給されておらず、バッテリーの生産に必要な物質には安定供給に不安がある物質も含まれている。
・バッテリーに含まれる物質は廃棄やリサイクルが困難であり、ワイオミング州で電気自動車を普及させるには、バッテリーを正しく処分するための開発が必要である。
一方で、法案ではガソリン車の継続販売のメリットとして以下のポイントを挙げています。
・アメリカ政府はガソリン車の維持に必要不可欠な石油産業やガス産業に投資し続けており、今後もワイオミング州内で石油産業やガス産業に従事する何千人もの人々を雇用し続けられる。
・化石燃料は、今後もワイオミング州およびアメリカ内における物資や人々の輸送に不可欠な存在であり続ける。
上記の電気自動車の懸念点やガソリン車のメリットを踏まえた上で、法案の末尾には「ガソリン車を犠牲にした電気自動車の普及は、ワイオミング州のコミュニティや経済に悪影響を及ぼすでしょう」と記されています。
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