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ビル・ゲイツが「クリーンな水素が脱炭素化のカギ」と提唱

by OnInnovation

Microsoftの創業者であるビル・ゲイツ氏が、自身の個人ブログであるGates Notesの中で、「安価かつ化石燃料から作られたものではないクリーンな水素が脱炭素化に役立つ」として、水素の幅広い用途や水素エネルギーの推進を訴えました。

To cut emissions, use this Swiss Army Knife | Bill Gates
https://www.gatesnotes.com/Energy/Clean-Hydrogen

温室効果ガスの排出量に関する議論では、自動車の利用や発電などが中心的な話題となります。しかし、ゲイツ氏によると自動車や電気が排出する温室効果ガスは、社会全体が排出する量の3分の1程度でしかないとのこと。残りの3分の2は、セメントやプラスチック、鉄など身の回りにあるさまざまな素材や製品を作ったり運んだりするような、多くの人にとって目に見えにくい場面で排出されています。


そこでゲイツ氏は、こうした場面で排出される温室効果ガスを削減する新技術として、「クリーンな水素」を提唱しました。水素自体は、既に世界中で年間7000万トン活用されており、肥料製造などの分野で役立てられていますが、それらのほとんどは化石燃料を燃焼させて作られた水素です。手始めに、これらの水素をクリーンな水素に置き換えるだけでも、全世界からの温室効果ガスの排出量を1.6%削減できるとのこと。

水素にはエネルギーとしての用途もあるので、低コストで大量の水素が得られれば化石燃料を水素に置き換えることも可能になります。また、航空機や長距離トラック、船舶での海上輸送など、EV化では限界がある貨物輸送の分野でも活用が検討されています。


幅広い用途がある水素の生産方法として、ゲイツ氏は4つの技術を提唱しました。そのうちの1つが、太陽光や風力、原子力エネルギーを使って水を水素と酸素に分解する電気分解です。この分野では、電解槽を用いた4つの技術が研究されていますが、水素を競争力のあるエネルギー源にするには、コストをさらに下げる必要があります。

2つ目は、通常通り化石燃料を用いて水素を生成し、その過程で発生する二酸化炭素を回収するというものです。これまでのところ、二酸化炭素を100%回収する技術はありませんが、水素を製造する世界中の産業施設が新技術に置き換えられるのを待つ間、水素を作るプロセスで排出される温室効果ガスを削減する手段として期待されています。


3つ目は、メタンの熱分解により水素を生成する方法です。現行の技術では、メタンと水を高温で反応させて水素と二酸化炭素を発生させる方法で水素が製造されています。しかし、酸素がない状態でメタンを加熱する熱分解という方法を使うと、メタンから水素を発生させつつ個体の炭素を残すことができるので、温室効果ガスを発生させずに済むとのことです。

4つ目は、世界中の地層に埋蔵されている水素を取り出して利用する方法です。この方法が実用化されれば、安価かつゼロエミッションの水素を大量に供給することができますが、記事作成時点ではまだ研究段階の技術です。

2022年2月にロシアが始めたウクライナ戦争により、水素は環境問題だけでなくエネルギー安全保障の議論でも重要な存在となりました。EUは既に、2030年までに2000万トンのグリーン水素を生産・輸入する考えを示しており、これだけの水素エネルギーがあればロシアからの天然ガス輸入への依存を3分の1以上に減らすことが可能となります。

一方で、水素は他のクリーン技術と同様に、コストという課題に直面しています。いくら水素が環境にやさしくても、コストが高ければ水素利用は遅々として進みません。そのため、ゲイツ氏が2015年に発足させた気候変動イニシアチブであるBreakthrough Energyは、クリーンな水素の実用化に向けて投資や資金提供を行っています。

ゲイツ氏は末尾で、「クリーンな水素がもたらす恩恵への関心が高まれば高まるほど、企業や政府は水素を化石燃料に代わる真の選択肢とするための取り組みを加速させることができます。そうすれば、気候変動による災害も回避することもできるでしょう」と述べて、水素社会の実現には1人1人が水素の利用に関心を寄せることが重要だと指摘しました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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