出社するよりも完全リモートワークの方が幸福度が高いという研究結果

新型コロナウイルスのパンデミックをきっかけにリモートワークが普及しましたが、従業員の孤立や職場とのつながりの低下を懸念してオフィス勤務へ戻す企業もあります。コロラド大学ボルダー校のステファニー・ジョンソン氏らの研究チームが、アメリカの大規模医療機関が実施した従業員アンケートの回答7704人分を分析したところ、完全リモートワークの従業員が最も高い幸福度を報告したことが判明しました。
Frontiers | Rethinking return-to-office: the positive impact of remote work on well-being, connection, and employee retention
https://www.frontiersin.org/journals/psychology/articles/10.3389/fpsyg.2026.1848857/full
Remote workers report the highest well-being in study of 7,700 employees | CU Boulder Today | University of Colorado Boulder
https://www.colorado.edu/today/2026/08/12/remote-workers-report-highest-well-being-study-7700-employees

研究チームが分析したのは、アメリカ南西部の大規模医療機関が2023年に実施した従業員向けアンケートの回答です。研究チームはアンケートに回答した従業員のうち職場の雰囲気についての自由記述にも回答していた7704人を分析対象としました。その7704人のうち、1869人は出社日がない完全リモートワーク、2099人は通常は週2~3日出社するハイブリッドワーク、3736人は勤務日はすべて出社する完全出社でした。なお、勤務形態の分類には各従業員の勤務予定に基づいて医療機関の人事システムに登録されていた区分が使われました。
医療機関のアンケートでは、「勤務先は自分の健康や幸福を気にかけている」「仕事に活力を感じる」「健康や幸福について上司の支援を得られる」「仕事と生活を両立できている」という4つの文章にどの程度同意するかを1~5点で尋ねていました。研究チームはこの4項目の平均を幸福度として、勤務形態ごとに比較しました。
従業員1人ずつについて5点満点で算出した幸福度を勤務形態ごとに平均すると、完全リモートワークでは4.22と最も高く、ハイブリッドワークでは4.12、完全出社では3.89でした。完全リモートワークはハイブリッドワークより0.10点、完全出社より0.33点高く、ハイブリッドワークも完全出社より0.23点高くなりました。研究チームが回答者ごとの点数のばらつきや各勤務形態の人数を踏まえて検証したところ、3通りの比較すべてで、偶然によるばらつきだけでは説明しにくい差が確認されました。
アンケートには職場の雰囲気を3~5語で表す自由記述欄もありました。研究チームは従業員が挙げた言葉を確認し、「チームワーク」「一体感」「支援」など職場に一体感や助け合いがあることを示す言葉のリストを作り、各回答にこうした言葉が1つ以上含まれているかを調べました。その結果、各回答に一体感や助け合いがあることを示す言葉が1つ以上含まれる割合は、完全リモートワークで61%、ハイブリッドワークで58%、完全出社で55%でした。ただし、各勤務形態の人数の違いを考慮すると統計上有意な差はありませんでした。つまり、数字だけを見ると完全リモートワークの方が職場とのつながりが強いように見えますが、この数%の差だけでは勤務形態によって職場とのつながりが異なるとは言えないというわけです。

さらに研究チームは、アンケートの回答を医療機関が保有する1年後の在籍・退職記録と照合しました。その結果、1年後までに退職した人の割合は完全リモートワークが7.8%、ハイブリッドワークが8.3%、完全出社が8.8%でした。ただし、勤務形態によって退職しやすさが違うと言えるほどの差はみられていません。一方、どの勤務形態でも、幸福度が高い従業員ほど1年後までに退職する人が少ない傾向がみられました。
ジョンソン氏は当初、ハイブリッドワークなら自宅で柔軟に働きながら対面でも交流できるため、幸福度が最も高くなると予想していました。そのため、完全リモートワークの幸福度が最も高かったことに驚いたとのこと。今回の研究ではその理由までは調べていませんが、ジョンソン氏は「働く環境や1日の予定を自分で決めやすいことに加え、通勤が不要になり、子どもやペットの世話をしやすくなることが理由ではないか」と述べています。
ただし、今回の研究は1つの大規模医療機関だけを対象としており、完全リモートワークには事務職や分析職、完全出社には臨床職や現場業務が多いという偏りもあります。また、職場とのつながりは、自由記述に「チームワーク」などの言葉が含まれているかどうかで判断しているため、人間関係の深さや質までは分かりません。
研究チームは、企業が勤務方針を決める前に解決したい問題を明確にするための判断手順も示しています。離職率が高い場合は柔軟性や自律性を高めて従業員の幸福度を改善し、職場とのつながりが弱い場合はコミュニケーションのルールや行動を見直すよう提案。業績や働く場所そのものに問題がある場合は対象を絞った対策や方針を用い、いずれにも当てはまらなければ別の原因を探るべきだとしています。

ジョンソン氏は、企業は従業員がどこで働くかばかりに注目せず、従業員の幸福度を高める取り組みに力を入れた方がよいと述べ、「柔軟な働き方は定着すると思います」と締めくくりました。
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