サイエンス

太陽光のエネルギーを高い変換効率で使いやすい水素に変換する新たな手法が開発される


近年は環境に優しい再生可能エネルギーとして風力発電や太陽光発電が注目を集めている一方、エネルギーを電気の形に変換すると用途が限られるほか、電力網が整備されていない場所では使えないという問題があります。そこでスウェーデン・ウメオ大学の研究チームが、「地球に豊富に存在する材料を使って、太陽光のエネルギーを使いやすい水素へ効率的に変換する手法」を開発しました。

Solar-Driven Water Splitting at 13.8% Solar-to-Hydrogen Efficiency by an Earth-Abundant Electrolyzer | ACS Sustainable Chemistry & Engineering
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acssuschemeng.1c03565


近年はさまざまな分野で二酸化炭素排出量を削減する機運が世界的に高まっており、太陽光などの再生可能エネルギーを使った発電はその目玉とも言えるものです。しかし、世界のエネルギー消費量のうち直接電気の形で消費されるものは20%に満たず、電力網が整備されていない地域も多いため、世界中で使われる全てのエネルギーを太陽光発電に置き換えることはできないとのこと。

ウメオ大学の研究チームは、太陽エネルギーで水を電気分解して水素燃料に変換すれば、直接燃料として使うことも燃料電池として最終的に電気に変換することもできるため、化石燃料への依存を減らすには再生可能エネルギーを水素燃料に変換することが有効だと主張しています。

そこで研究チームは、印刷技術を用いて薄いガラスやプラスチックの基板上に作ることができるペロブスカイト太陽電池を用いて太陽光を電気に変換し、水を電気分解して水素を作り出す装置を開発しました。


水を電気分解するために用いる電極は、直径10マイクロメートル~20マイクロメートルの炭素繊維からなるカーボンペーパーを、化学気相成長(化学気相蒸着)で形成したカーボンナノチューブの薄膜でコーティングし、さらにその上を金属からなる触媒で装飾する方法で作られました。触媒に使われる金属は持続可能性や電気分解反応の促進性を考慮し、地球に豊富に存在する鉄・ニッケル・モリブデンの3種が選択されたと述べています。

実際に研究チームが、新たな手法で開発した電気分解装置を稼働させたところ、太陽光エネルギーを13.8%という高い効率で水素に変換することが確認されました。一般的な太陽光発電パネルのエネルギー変換効率は20%程度とされており、変換効率だけを見れば今回の手法は高くないように思えるかもしれませんが、電気ではなくさまざまな用途に使える水素燃料にできる点が重要だとのこと。水素燃料は重量当たりのエネルギー密度が高く、車などに利用されているほか、炭素フリーの鋼やアンモニアの生産といった産業用途に利用可能だそうです。

研究チームは今回開発した電気分解装置について、従来の太陽光電池より安価に製造できるペロブスカイト太陽電池を使用した点や、地球に豊富に存在する材料を用いて電極を作成した点を強調しています。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article A new method for converting solar energy….