サイエンス

二酸化炭素を太陽光だけで燃料に変えられる画期的な太陽電池

by Thomas Kohler

空気中の二酸化炭素を太陽光だけで炭化水素燃料に変換できるという安価で革新的な太陽電池をイリノイ大学シカゴ校(UIC)の研究者が開発し、特許出願しています。

Nanostructured transition metal dichalcogenide electrocatalysts for CO2 reduction in ionic liquid | Science
http://science.sciencemag.org/content/353/6298/467

Breakthrough solar cell captures CO2 and sunlight, produces burnable fuel | UIC News Center
https://news.uic.edu/breakthrough-solar-cell-captures-co2-and-sunlight-produces-burnable-fuel


太陽電池は、太陽光を電気に変換してバッテリーに貯める仕組みですが、今回設計された新しい太陽電池は大気中の二酸化炭素を燃料に変換可能で、エネルギー問題と二酸化炭素算出問題の二つを一度に解決できるというものです。太陽電池を大量に設置しているソーラーファームなどでは、かなりの量の二酸化炭素を燃料に変換できると期待されています。

研究グループの一員でUICの機械生産工学助教であるAmin Salehi-Khojin氏は、「新しい太陽電池は、ただの光電池ではありません。これは光合成なのです。これまでは化石燃料を燃やして温室効果ガスを排出するという一方向のみでしたが、新しい太陽電池ではこのプロセスを逆向きにして、大気中の二酸化炭素を燃料へとリサイクルすることが可能です」と語っています。植物はエネルギーを糖という形で生産しますが、新しい太陽電池は、水素ガスと一酸化炭素が混ざり合った合成ガスを生成します。合成ガスは直接燃やして使用できるほか、ディーゼル燃料や他の炭化水素燃料に変換することも可能です。

写真の左側に写っている男性がSalehi-Khojin氏です。


二酸化炭素を削減するための方法として、さまざまな触媒が研究されてきましたが、「これまでのところ触媒による変換は非効率的で、銀などの高価な貴金属に依存しなければなりません」とSalehi-Khojin氏は語っています。Salehi-Khojin氏は同僚と共に、「遷移金属ジカルコゲン化物(TMDC)」と呼ばれるナノ構造化合物に着目しました。その結果、最も優れた触媒は二セレン化タングステンだと判明したとのこと。

論文の筆頭著者のMohammad Asadi氏は、「二セレン化タングステンはより活発な触媒で、より多くの二酸化炭素の化学結合を壊すことができます」と語っています。実際に、二セレン化タングステンは従来の貴金属触媒よりも1000倍速く、コストは20分の1で済むそうです。

以下の写真に写っているのが、新しい太陽電池のモデルです。触媒の活性部位が酸化してしまうのを防ぐため、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラートというイオン液体を水と1:1で割ったものを使用しているとのこと。この二セレン化タングステンとイオン液体の助触媒システムを陰極側、コバルト酸化物をリン酸カリウム電解質に入れたものを陽極側に使用。100ワット毎平方メートルの光が太陽電池に当たると、陰極から水素ガスと一酸化炭素ガスが発生する仕組みとのこと。


Salehi-Khojin氏は、「火星の大気はほとんどが二酸化炭素で構成されているため、将来人類が火星に移住する際にこの太陽電池が非常に有用だと考えられます」と語っています。

by coniferconifer

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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