サイエンス

二酸化炭素を90%以上の高効率で燃料化するプロセスが登場、ギ酸塩への変換で長期保存できる固体燃料へ


二酸化炭素を有用なものに変換するための研究がいろいろと行われていて、その中でも有望と考えられているのが、安定した燃料に変換して化石燃料に代えて利用することです。しかし、この種の変換プロセスは効率が低かったり、取り扱いが難しかったり、有毒だったり、燃料が可燃性だったりと、さまざまな問題を含みます。

マサチューセッツ工科大学とハーバード大学の研究者らが、これらの問題点をクリアし、安全な「ギ酸塩」に二酸化炭素を効率的に変換するプロセスを開発しました。

A carbon-efficient bicarbonate electrolyzer: Cell Reports Physical Science
https://www.cell.com/cell-reports-physical-science/fulltext/S2666-3864(23)00485-X


Engineers develop an efficient process to make fuel from carbon dioxide | MIT News | Massachusetts Institute of Technology
https://news.mit.edu/2023/engineers-develop-efficient-fuel-process-carbon-dioxide-1030


研究に携わるMITのジュ・リー教授によると、二酸化炭素の燃料への変換プロセスは、まず二酸化炭素をカルシウムと合成して炭酸カルシウムへと固体化したのち、加熱して二酸化炭素を排出することで燃料原料となる一酸化炭素に変換するという2段階が必要です。特に第2段階の変換効率が低く、通常、目的の燃料原料に変換されるのは気体の二酸化炭素の20%未満程度だそうです。

新プロセスのポイントは、第1段階で二酸化炭素を中間形態である液体金属重炭酸塩に変換することにより、非効率的な加熱を必要としなくなる点です。液体金属重炭酸塩は原子力発電や風力発電、太陽光発電などの低炭素電気を使用した電解槽で、電気化学的にカリウム溶液やギ酸ナトリウム溶液に変換可能です。この液体を乾燥させれば安定した固形粉末を得られるというわけです。変換効率は、実に90%にも上るとのこと。


今回、研究チームは液体金属重炭酸塩を陽イオン交換膜電解槽を利用して電気化学的に変換。96%以上の効率でギ酸塩の固体結晶に変換できることを確認しました。

二酸化炭素を燃料に変換するときの候補の1つに、生産時に二酸化炭素を消費するメタノールがありますが、メタノールは有害物質であり、漏出時に健康被害を引き起こす可能性があります。一方、ギ酸塩はアメリカの安全基準でも問題ないと判定されています。

この種のシステムについて、これまではいくつもの難題が立ちはだかってきました。今回、研究チームは膜の材料と構成についての設計を突き詰め、この種のシステムで避けられない「特定の副産物の蓄積によりpHが変化し、時間の経過とともに効率が低下する」という問題を、熱力学モデリングによってpHを定常状態に保つことでクリア。テストにおいては、システムを200時間稼働させても出力の大幅低下はみられなかったとのこと。

また、「望ましくない副反応により、役に立たない別の化学生成物が生成される」問題についても、こうした反応をブロックする重炭酸塩を豊富に含んだグラスファイバーウールによる緩衝層を追加することで、副反応を防ぐことに成功しています。

研究チームは、生成されたギ酸塩燃料を使用して発電するために最適化された燃料電池も構築しています。仕組みは、ギ酸塩粒子を水で溶解して、必要に応じてポンプで燃料電池へ送り込むというもの。水素を貯蔵するのに必要な高圧タンクの重量や体積を考慮すると、ギ酸塩燃料は所定の貯蔵体積に対してほぼ同等の電気出力が得られたとリー氏は説明しています。

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in サイエンス, Posted by logc_nt

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