サイエンス

世界の全電力を太陽光発電でまかなうにはどのくらいの屋根にソーラーパネルを設置する必要があるのか?


化石燃料に代わるグリーンエネルギーの技術開発が世界中で模索されており、太陽光発電もその1つです。ソーラーパネルを建物の屋根に設置することは太陽光発電を行う方法として一般的ですが、世界中の電力を太陽光発電でまかなうには、果たしてどれくらいの建物の屋根にソーラーパネルを設置する必要があるのか、研究者が予測を発表しました。

High resolution global spatiotemporal assessment of rooftop solar photovoltaics potential for renewable electricity generation | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-021-25720-2

Solar panels on half the world's roofs could meet its entire electricity demand – new research
https://theconversation.com/solar-panels-on-half-the-worlds-roofs-could-meet-its-entire-electricity-demand-new-research-169302

太陽光発電のコストは急速に下がっており、2010年に比べると79%も安くなっています。このため電気への依存を絶ち、脱炭素化したい企業や個人にとって太陽光発電はより現実的な選択肢となっていますが、一方で、全ての家庭や企業が屋根の上にソーラーパネルを設置したとして、地球上で必要になる全ての電力をまかなえるのか?という問題も存在します。

アイルランド国立大学コーク校でグローバルエネルギー工学について研究するSiddharth Joshi氏ら研究チームは、この問題に取り組むべく、世界中の建物の屋上面積と日照について評価を行いました。


研究チームは、地球上のほぼ全ての地表にあたる1億3000万キロ平方メートルの土地と、3億軒の建物のデータを統合するプログラムを構築。陸上に存在する合計20万平方キロメートル分の屋根で生成できるエネルギーがどれくらいあるかを調べました。なお、20万平方キロメートルという数字はイギリスの面積とほぼ同じとのこと。

その後、研究チームは屋根ごとの電力生成ポテンシャルを、その所在地から計算しました。一般的に、ヨーロッパやカナダなど高緯度の場所に位置する屋根は、夏と冬の日照時間の差が大きく、季節によって発電量が40%も変動する可能性があります。一方で赤道近くの場所に位置する屋根は安定した日照を受けられるため、季節によって電力量の変化がほとんど生じません。このため季節によって電力生成ポテンシャルが変動する場所では電力を貯蔵する方法が必要になり、電気代が増加します。


調査の結果、まず、「1年間に全世界が必要とする電力」を供給するためにソーラーパネルを設置する必要がある屋根は、全体の50%であることがわかりました。また、インドや中国は日当たりの良さに加え、ソーラーパネルの製造コストが非常に安いことから、最もコストパフォーマンスよく太陽光発電が行えるとのこと。コストパフォーマンスが悪いのは日本・イギリス・アメリカの3国で、ヨーロッパ諸国はその中間に位置します。

エネルギー消費が激しい都市部でソーラーパネルによる太陽光発電を利用すると、化石燃料による発電が減り、大気汚染に歯止めをかけることができます。また遠隔地では安定した電力網がないことも多く、太陽光発電が重要な電力源となり得ます。一方で、太陽光は昼間しか得られないため、太陽光が得られない時間帯に電力を使うには、電力を貯蔵するシステムが必要であり、これらは依然として高価です。それでも、太陽光発電は都市部・遠隔地の両方にメリットを提供するため、屋上へのソーラーパネル設置は電力供給の重要な方法となります。今回の研究は、屋根にソーラーパネルを設置するにあたっての詳細な地図を提供するものとなると研究者は述べました。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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