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日本でも人気の配信プラットフォーム「Twitch」の栄枯盛衰の歴史


ライブ配信プラットフォームにはYouTubeやKickなどさまざまなものがありますが、ゲーム配信者を中心に強い支持を集めているのがTwitchです。2023年のTwitch配信者トップ10に日本人ストリーマーのSHAKAさんがランクインしていることからもわかるように、日本でも多くの視聴者を集めるようになったTwitchですが、その栄枯盛衰の歴史を海外メディアのFast Companyがまとめています。

How Twitch lost its way
https://www.fastcompany.com/91010966/how-twitch-lost-its-way

元々Twitchは、2007年にJustin.TVというライブ配信プラットフォームとしてスタートしました。Justin.TVでは特にゲームコンテンツが人気だったため、チームはゲーム配信プラットフォームの「TwitchTV」としてサービスを分離させます。その後、2014年になってJustin.TVは社名を「Twitch Interactive」に変更し、ゲームビジネスを前面に押し出すようになりました。


この年、Twitchではチャットを使用して視聴者全体でポケットモンスターをプレイするという配信が人気を博し、Twitchも一緒に知名度を高め、数百万人のユーザーを獲得することに成功しています。

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その後、Twitchは9億ドル(約1330億円)以上の金額でAmazonに買収されます。当時、Twitchはユニークユーザー数が5500万人ほどで、総視聴時間は「数十億分」とアピールされていました。Amazonに買収されてから数年間で、Twitchおよびeスポーツ業界は10億ドル(約1500億円)規模の産業へと成長します。

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Twitchの歴史はJustin.TV時代から同プラットフォームでストリーマーとして活躍してきたNinjaさんのキャリアと共にたどることができるとFast Companyは指摘。

TwitchがAmazonに買収されてから、NinjaさんはPUBG: Battlegroundsやフォートナイトといったバトルロイヤルゲームの配信で注目を集めるようになり、2018年には「ゲーム実況で月に5000万円以上を稼ぐ」ことが大きな話題となりました。同氏はApex Legendsの宣伝で1億円以上を稼いだことでも話題を呼んでいます。

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Ninjaさんは2019年にはアメリカで最も人気の高いテレビコマーシャル枠であるスーパーボウルのコマーシャルにカメオ出演するほど人気となりました。また、2019年にはTIMEの「世界で最も影響力のある100人」にも選出されています。

その後、Ninjaさんは配信プラットフォームをTwitchから競合サービスのMixerに変更するという契約をMicrosoftと結び、2000万ドル(約30億円)相当の契約金を受け取ります。この頃から、Twitch上ではコンテンツ以上に配信を行うストリーマーへの注目が高まっていったそうです。なお、Mixerは2020年6月にサービス終了を発表しており、NinjaさんもTwitchに出戻りする羽目となりました。

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2020年に入り、新型コロナウイルスのパンデミックが発生し、世界中の人々がロックダウンの影響で外を出歩けなくなりました。ビデオ通話サービスのZoomやFaceTimeの需要が高まる中で、Twitchもさらに注目を集めるようになります。

2021年に公開されたレポートによると、新型コロナウイルスのパンデミックによりTwitchの総視聴時間は2020年から2021年にかけて45%も増加しました。しかし、増加したのは総視聴時間だけではありません。

2020年10月にはHasanAbiさんやDrLupoさんがTwitch上で人気を集めるようになり、アメリカの政治家であるアレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員とコラボレーションしてAmong Usをプレイ。この配信の総視聴者数は50万人を超えたそうです。

Fall GuysやフォートナイトなどのTwitch上で人気のゲームは文化的にも大きな役割を担うようになっていたため、2020年当時は「新型コロナウイルスのパンデミックの間に、Twitchが世界を一気に征服してしまうかのように思えた」とFast Companyは記しています。


しかし、Justin.TV時代からのユーザーであり、左翼活動家でもあるというジョーダン・ウール氏は、当時を振り返りながら「Twitchは多くの可能性を示しました。しかし、AmazonとTwitchは、このプラットフォームに重大な欠陥がいくつかあり、そのせいで多くのクリエイターにとってかなり厳しい制限が設けられていることを認識していなかったように思います」と言及。急成長していたTwitchには明らかに問題があったと指摘しています。

Twitchで長年働いているという匿名の従業員も、「十分に高いレベルのリーダーが、本当に楽しいユーザーエクスペリエンスを実現することの価値を理解しているとは思えません。あるいは、楽しいユーザーエクスペリエンスとは実際には何を意味するのでしょうか?なぜなら、それを達成するために多額の投資が行われたことがないのは明らかだからです」と語り、Twitchが抱える問題点はユーザーエクスペリエンスおよびその改善に投資が行われていないことにあると指摘しました。

さらに、「YouTubeやNetflixなどのビデオオンデマンド(VOD)コンテンツはいつでも一時停止したり再生したりすることが可能です。それに対して、TwitchのVODコンテンツはとても悲惨なものでした。Twitchの経営陣は長らくライブ配信コンテンツにのみ重点を置いてきたため、VODコンテンツには投資すべきではないと主張してきたからです。ライブ配信コンテンツこそがTwitchの専門分野であり、そこから拡大することに経営陣は興味を持っていないのです」と述べ、Twtichの問題点を分析しています。

近年のTwitchは上記の問題を解決するために多くの資金と時間を費やしており、実際に数々の改善が見られるそうです。ただし、「問題はTwitchがYouTubeを模倣するよりも、YouTubeがTwitchを模倣する方がはるかに簡単なことにある」とFast Companyは指摘しており、ライバルであるYouTubeの進化も著しいと指摘しています。


2021年、Twtichで人種差別や性差別などの内容を含む中傷コメントを大量に投稿するボットを使った荒らし行為が増えていることを受け、複数のストリーマーがTwtichでの配信をボイコットする「#ADayOffTwitch」運動を実施し、ユーザーやクリエイターの保護を訴えました。この運動を受け、Twitchは最終的に荒らし行為や虐待行為からクリエイターやユーザーを守るためのコミュニティ管理ツールのアップデートを約束しています。

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Twtichをクライアントに持つサードパーティーのコピーライターによると、2022年末までのさまざまな出来事を受け、TwtichはYouTubeなどのプラットフォームと対抗するのではなくゲーマー向けの従来のユーザー層に回帰するよう方針転換したことが確認できたそうです。

しかし、2023年6月にTwtichは配信中の動画広告・バナー広告・オーディオ広告を禁止するガイドラインを発表しました。これに対してはユーザーから多数の批判が殺到したため、同社はすぐに方針を転換しています。このような会社の方針が二転三転することが近年のTwtichでは珍しくないそうで、これは近年繰り返されてきた「CEOの交代」による弊害であるとFast Companyは指摘しています。

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加えて、「Amazonが望んでいることがTwtichの望んでいること、あるいは必要としているものと必ずも一致するわけではない」という点もTwtichの抱える問題点のひとつであると指摘されています。具体的には、TwtichはAmazonの「厳格な競業禁止条項」にならい、ストリーマーがTwtichを含む複数の配信プラットフォームで同時に配信を行うことを禁止していました。その結果、Ninjaさんの離脱や他人気ストリーマーの離脱につながったため、同社は2023年10月についに複数プラットフォームでの同時配信を解禁しています。Twtichの親会社であるAmazonの方針とストリーマー界隈で求められていることの食い違いが、同プラットフォームの先行きを不安にさせるとFast Companyは指摘しているわけです。

また、Twtichは2023年12月に韓国でのサービスを終了。

Twitchが韓国でのサービス終了を発表、韓国でサービス終了せざるを得ない理由&日本でも活躍する配信者の反応まとめ - GIGAZINE


さらに、2024年に入ってからは従業員の35%に相当する500人を解雇しています。

Twitchが従業員の35%を削減 - GIGAZINE


サービスの終了や人員削減によりTwtichの将来を心配する声もありますが、Twtichが依然として絶大な人気を誇っていることは明らかです。Fast Companyがインタビューした人物のひとりであるウール氏は、Twtichが今後さらに大きく成長するかどうかは不明としながら、「YouTubeのような検索しやすさや、オススメの使いやすさを目指すこと」を今後の簡単に改善できるポイントとして挙げています。

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in ネットサービス,   ゲーム, Posted by logu_ii

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