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YouTubeが人気eスポーツリーグの独占生配信を機にTwitchに対抗したeスポーツファンの取り込みを本格化

by Florian Olivo

AmazonのTwitch、MicrosoftのMixer、GoogleのYouTubeといったストリーミング配信サービスのすべてが、ゲーム配信者に巨額の報酬を支払って囲い込みを行い、ユーザー数を伸ばそうとしています。YouTubeは配信されるコンテンツの幅が広いのが特徴ですが、特にゲームに特化したプラットフォームであるTwitchとMixerに対して、eスポーツ分野では後れを取っているというのが事実。しかし、YouTubeはeスポーツ分野でもライバルに対抗すべく、着々と新しい手を打っています。

YouTube is using massive e-sports leagues to take on Twitch in big live-streaming bet - The Verge
https://www.theverge.com/2020/1/27/21082612/youtube-blizzard-activision-esports-leagues-twitch-live-streaming

2020年1月24日、Googleは大手ゲームパブリッシャーのアクティビジョン・ブリザードと複数年にわたる戦略的パートナーシップを締結したと発表しました。契約により、アクティビジョン・ブリザードは独自タイトルのホスティングインフラとしてGoogle Cloudを優先することとなります。

また、アクティビジョン・ブリザードの人気タイトルによるeスポーツリーグである「Call of Duty League」「The Overwatch League」および、ハースストーンのeスポーツリーグについては、YouTube上で独占配信されることも決定。なお、上記3つのeスポーツリーグは、これまでTwitchで生配信されてきたため、競合のTwitchにとっては痛手となることは明らかです。

YouTube Gamingを率いるRyan Wyatt氏は、自身のTwitter上でYouTubeで独占生配信されることとなった3つのeスポーツリーグを歓迎しています。また、Googleとアクティビジョン・ブリザードの契約に関する詳細は不明ですが、Wyatt氏はWIREDによるインタビューの中で、戦略的パートナーシップについての話し合いは「2019年に始まった」と語っています。

Esports lives on @YouTubeGaming.

Welcome to the family, Overwatch League, Call of Duty League, and Hearthstone Esports.

Let’s get this thing going with the inaugural season of the Call of Duty league kicking off today! https://t.co/9PAUaaQSz0https://t.co/p9kSbD9aAi pic.twitter.com/rBVpf0Re3H

— Ryan Wyatt (@Fwiz)


海外メディアのThe Vergeは、YouTubeが独占生配信権をゲットした3つのeスポーツリーグは「小さな大会ではない」と指摘。人気TPSであり続編タイトルも発表された「オーバーウォッチ」のプロリーグであるThe Overwatch Leagueは、2019年のレギュラーシーズンに毎分平均31万3000人が生配信を視聴していたことが調査により明らかになっています。調査によると、視聴者のうち5万5000人がアメリカ在住のユーザーだったそうです。

また、人気FPS・コール オブ デューティシリーズのプロリーグとして新設されたCall of Duty Leagueは、前身であるCall of Duty World League(CWL)も含めるとTwitch上で合計270万時間超も視聴されたというモンスターコンテンツです。CWLの決勝大会は平均6万6000人が同時視聴し、ピーク時には18万2000人が視聴していたというデータがあります。

The Vergeは「これらの数字はとても印象的で、業界最大のストリーマーとプラットフォーム間の戦争を繰り広げているYouTubeに、有利な機会を提供してくれます」と記し、Twitchとeスポーツ分野で競合する上で重要なコンテンツになると指摘。


もちろんYouTubeは個別の配信者とも独占契約を結んでおり、Jack “CouRage” Dunlopを含む多くの人気配信者を他のプラットフォームから引き抜いています。これらの配信者が生配信するたびに何千、何万という数の視聴者がYouTubeを訪問しますが、それだけでなく、生配信のハイライト映像などのVODも同時にYouTube上に投稿されるため、これらのコンテンツを目当てとしたユーザーも多数獲得することができます。

しかし、今回YouTubeが計画しているのは、人気の配信者に頼りユーザーをコツコツ獲得していくという戦略ではなく、巨大なeスポーツリーグを介し、eスポーツ市場を丸ごと取り込もうという大規模な戦略です。これについてThe Vergeは「プロリーグを使って視聴率を増加させようという試みは、新しい概念ではありません。YouTubeの戦略は、既存のTV局などが何十年間も取ってきた『スポーツを用いて視聴率を拡大する』という戦略と同じです。唯一の違いは、eスポーツが急速に成長し続けており、その過程でプラットフォーム上のVOD視聴者の中から、よりカジュアルなeスポーツファンを獲得することをもくろんでいるという点です」と指摘。

StreamElementsのCEOであるDoron Nir氏が、The Vergeに対して「2019年にTwitch上で最も視聴されたチャンネルは、Riot GamesとThe Overwatch Leagueのチャンネルでした。eスポーツ大会は多くの視聴者を引きつけます」と語っているように、Twitchはプラットフォームの強力な武器のひとつを失うということになります。また、YouTubeで生配信を視聴するユーザーの数は、2018年第4四半期時点では2億9300万人だったのに対して、2019年第4四半期には3億3400万人まで増加しており、「YouTubeで生配信を視聴する」という行為がユーザーに浸透してきたと、The Vergeは指摘。

by Anthony Brolin

Nir氏はWIREDのインタビューの中で、「eスポーツリーグの視聴者には、ガンコな生配信派とカジュアルなVOD派の2種類がいます。VODのほとんどは既にYouTube上に投稿されており、生配信を好むのは根っからのeスポーツファンであるため、生配信先をYouTubeに移行したとしても、視聴者数にマイナスの影響はほとんどないものと思われます。また、YouTubeが適切な宣伝を行えば、さらに視聴者数を獲得できる可能性すらあります」と語り、生配信するプラットフォームを変更することはeスポーツリーグにとっては大きな問題にならないと主張しています。

YouTubeは既に毎月20億人以上のログインユーザーを保持しており、毎日500時間超のコンテンツがアップロードされています。インターネット上でのムービー視聴体験において、「ゲーム」は大きな割合を占めており、YouTubeがTwitchらに後れを取っているのもこの分野です。大規模なeスポーツリーグを誘致することに成功したことで、eスポーツ関連コンテンツを好むユーザーにとってYouTubeを視聴することが当たり前になれば、YouTubeはより巨大かつ支配的なプラットフォームに進化することができるようになります。

しかし、The Vergeは「YouTubeにはTwitchと同じようなコミュニティ要素がありません。Twitchではさまざまなゲームコミュニティが存在しており、エモートを中心に、新しい言語を構築し、チャット機能を通してインタラクティブな体験が可能となっています」とも指摘。こういった現状のYouTubeには存在しない機能やコミュニティが、今後のeスポーツファン取り込みにおいてどのように作用するかは不明です。

by Julian Hochgesang

また、記事作成時点ではTwitchとYouTubeには明らかな差が存在しているともThe Vergeは指摘。例えば世界で最もプレイされているゲーム「League of Legends」の、eスポーツリーグである「League of Legends Championship Series」はYouTubeおよびTwitchの両方で生配信されていますが、YouTube側の視聴者数は9万5000人程度であるのに対して、Twitch側は15万人超と圧倒的。それでもYouTubeはアクティビジョン・ブリザードとの独占契約を機に、eスポーツ分野でも本格的にTwitchと競合していく構えであることは明らかです。

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in ネットサービス,   ゲーム, Posted by logu_ii

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