子どもの体内に数百万個もの「母親の細胞」が存在し続ける仕組みの一端が明らかに

妊娠中に母親と胎児の間で細胞が双方向に移動し、その一部が出産後も体内に残って長期の共存状態を作る現象は「マイクロキメリズム」と呼ばれますが、母親の細胞がなぜ子どもの免疫にやられず残っていられるのかは謎とされています。その謎の一端が免疫学誌「Immunity」に掲載された研究で示されました。
Tolerance to non-inherited maternal antigen is sustained by LysM+ CD11c+ maternal microchimeric cells: Immunity
https://www.cell.com/immunity/fulltext/S1074-7613(25)00368-1
Millions of Your Mother's Cells Persist Inside You, And Now We Know How : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/millions-of-your-mothers-cells-persist-inside-you-and-now-we-know-how

この謎の解明に取り組んだのはアメリカ・シンシナティ小児病院医療センターに所属するヤンヤン・ペン氏らの研究チーム。研究チームは「子どもが受け継いでいない母親由来の抗原」に対する免疫寛容が母親由来の細胞によって維持されている可能性に注目しました。
研究チームは「母親由来の細胞は免疫細胞に限らず神経系・肝臓・皮膚などさまざまな組織と細胞タイプで見つかってきた」と述べています。研究チームが問題だとしたのは、母親由来の細胞が見つかっただけでは体にとって良いのか悪いのか、原因なのか結果なのかが分からない点です。マイクロキメリズムが自己免疫・がん・心血管疾患・認知症を含む神経疾患などと関連づけて語られることがある一方で、母親由来の細胞の割合が「細胞10万〜100万個に1個未満」ととても少なく、見つかる母親由来の細胞の種類も多くバラつくため、決定的な因果関係を示すことが難しいと研究チームは述べています。
科学系メディアのScience Alertは「割合は小さくても、体全体で見れば数は大きくなりうる」とし、母親由来の細胞が何百万個規模になる可能性に触れています。また、免疫は基本的に「自分ではないもの」を排除する仕組みであるため、母親由来の細胞が長く残り続ける点が疑問になるとのこと。
そこで、研究チームは「母親由来の細胞を細胞の種類を指定して減らす」ための実験の枠組みをマウスで作りました。母親由来の細胞のうち狙った細胞タイプだけがジフテリア毒素で除去されるように設計し、母親由来の細胞を段階的に減らして免疫の状態がどう変わるかを調べたと研究チームは述べています。

研究チームが調べたのは、母親由来の抗原(免疫が見分ける目印)に対して子どもの免疫が攻撃しにくくなるという現象です。研究チームはこの抗原を「母親にはあるが子どもが遺伝的には受け継いでいない抗原」として定義しています。言い換えると、子どもにとっては「自分にない抗原」のはずなのに、強く排除しない方向へ免疫が傾く現象を検証した形。この現象が起きているかどうかを見る指標として、研究チームは免疫反応にブレーキをかける「制御性T細胞の増加」と、「娘が成長して妊娠したときに胎児の喪失が起きにくくなる傾向」をこの免疫の状態と結び付いた特徴として扱っています。
マウスでの実験の結果、母親由来の細胞をまとめて除去すると免疫の「攻撃しにくい状態」が崩れたこと、制御性T細胞が増加しなくなったこと、次世代の妊娠で見られる「胎児の喪失が起きにくい傾向」も失われることが分かったと研究チームは報告しています。研究チームはこの結果を「母親由来の細胞が免疫の状態を支えている証拠」として位置付けています。
次に研究チームは「母親由来のどの細胞がその役割を担っているのか」を段階的に絞り込みました。その結果、母親由来の細胞のうち「白血球に由来する免疫細胞を除去すると免疫の状態が崩れる」一方で、「皮膚などの表面を作る細胞(上皮系)や血管の内側を作る細胞(血管内皮系)を除去しても免疫の状態が保たれる」ことが分かりました。結果として「免疫の状態を支える中心は白血球系にある」ことを示した形です。
研究チームは白血球系の中身をさらに細かく分類して実験を続けました。その結果、母親由来のリンパ球を除去しても免疫の状態は崩れませんでしたが、母親由来の骨髄系の免疫細胞や母親由来の樹状細胞を除去した場合は免疫の状態が崩れ、妊娠時の「胎児の喪失が起きにくい傾向」も失われることが判明しました。
結論として、子どもの免疫が母親由来の抗原を攻撃しにくい状態は「母親由来の白血球系細胞のうち骨髄系の特徴と樹状細胞の特徴を合わせ持つごく一部の細胞によって維持される」と研究チームは述べています。
また、研究チームは免疫の状態を支える細胞を条件付きで除去して免疫の状態が崩れても、体内に残る母親由来の細胞の総量は大きく減らなかったとし「免疫の状態を保つ役割はごく一部の母親由来の細胞が担う一方で、残りの母親由来の細胞は別の仕組みで残り続けている可能性がある」とまとめています。
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