サイエンス

頭蓋骨と脳の間に未知の「直通トンネル」が存在することが明らかに

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生き物の神経中枢であり、心臓と並んで最重要器官ともいえるのがで、頭蓋骨は脳を保護するために発達したといわれています。ハーバード大学医学部のマティアス・ナーレンドルフ教授率いる研究チームは頭蓋骨の骨髄と脳を直接つなぐ小さなトンネルを発見し、脳卒中など脳で障害が発生した時に免疫細胞が送り込まれる経路となっていると明らかにしました。

Direct vascular channels connect skull bone marrow and the brain surface enabling myeloid cell migration | Nature Neuroscience
https://www.nature.com/articles/s41593-018-0213-2


Tiny Tunnels Previously Unknown to Scientists Found Between the Skull and Brain
https://gizmodo.com/tiny-tunnels-previously-unknown-to-scientists-found-bet-1828660825


骨髄は私たちの骨の中にある海綿質の組織で、血球系細胞に分化する「造血幹細胞」を抱える造血器官です。骨髄で作られる血球系細胞のうち、白血球は免疫を担当する細胞です。例えば脳に異常があった場合、免疫細胞は血流に乗って脳に移動すると考えられるわけですが、脳を修復する免疫細胞が全身の骨髄で産生されるのか、それとも特定の部位の骨で産生されるのかははっきりとわかっていませんでした。

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ナーレンドルフ教授率いる研究チームは、体内の免疫細胞を視覚的に追跡できるようにしたマウスを用いて、脳卒中が起きた時に脳へやってくる免疫細胞がどの骨髄からやってきたのかを調べました。その結果、マウスに脳卒中を起こした後、頭蓋骨から白血球の一種である好中球が大量に送られていることが判明しました。頭蓋骨以外にも、脛骨(けいこつ)などの大きな骨から好中球は送られていましたが、割合は頭蓋骨由来の方がずっと多かったとのこと。一方で、心臓発作を起こしたマウスの場合は、頭蓋骨由来の好中球と脛骨由来の好中球が同じ程度の割合だったこともわかりました。つまり、頭蓋骨はただ物理的に脳を保護するだけではなく、脳に障害が発生した時に積極的に免疫細胞を送り込む装置としても働いているわけです。

さらに研究チームは、頭蓋骨骨髄で造成された好中球が脳へ向かうプロセスを調べるために、高解像度のスキャナーと顕微鏡を使用してマウスの頭蓋骨の観察を行いました。すると、マウスの頭蓋骨にある経路を通って好中球が移動する様子が確認できたとのこと。この経路は脳を包んで保護する「髄膜」と呼ばれる膜と頭蓋骨骨髄を直接結びつけるものでした。

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このことから、研究チームは「損傷した脳が迅速な対応を可能とするため、脳から頭蓋骨の骨髄へ何らかの伝達を行っている」と考えました。具体的に何をどうやって伝達しているのかは不明ですが、塩基性タンパク質分子の一種である「SDF-1」をやりとりしているのではないかと研究チームはにらんでいます。

マウスで発見されたトンネルと同様のものはヒトの頭蓋骨からも発見されました。ただし、ナーレンドルフ教授によると、ヒトの頭蓋骨は厚すぎるため、マウスと同タイプの顕微鏡による観察をヒトに行うことはできないとのこと。研究チームは今回のトンネルの発見から、脳の炎症に対して体がどのように働きかけるのかを研究していくとコメントしています。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk