サイエンス

市販の風邪薬や抗アレルギー薬に使われる抗鼻炎成分について「経口摂取では効果なし」とアメリカ食品医薬品局の諮問委員会が判断


市販されている風邪薬や抗アレルギー薬には、血管を収縮させる働きを持つフェニレフリンという成分が鼻炎を和らげるために含まれていることがあります。ところが、このフェニレフリンは「経口投与された場合は効果がない」と、アメリカ食品医薬品局(FDA)の諮問委員会が結論付けました。

FDA panel says common over-the-counter decongestant phenylephrine doesn’t work
https://www.nbcnews.com/health/health-news/fda-panel-says-common-counter-decongestant-phneylephrine-doesnt-work-rcna104424


US FDA panel says popular decongestant used in cold medicines ineffective | ロイター
https://jp.reuters.com/article/usa-health-fda-cough-syrup/us-fda-panel-says-popular-decongestant-used-in-cold-medicines-ineffective-idINL4N3AO3NG

Decongestant ingredient in popular products does not work, FDA concludes | US news | The Guardian
https://www.theguardian.com/us-news/2023/sep/12/decongestant-ingredient-does-not-work-fda-phenylephrine

FDA Committee Votes Unaminously Against Efficacy of Nasal Decongestant Oral Phenylephrine
https://www.hcplive.com/view/fda-committee-votes-unaminously-against-efficacy-of-nasal-decongestant-oral-phenylephrine

フェニレフリンは血管収縮作用を持つアドレナリン作動薬であり、麻酔時の血圧を上昇させるために用いられるほか、患部の腫れや出血を抑える目的でも使用されています。また、鼻炎が起きている鼻の中は、粘膜の血管が拡張して腫れている状態になっているため、この腫れを軽減して鼻炎を和らげる効果もあります。

そんなフェニレフリンは直接鼻に差す点鼻薬のほか、ベナドリルアドビルタイレノールといったさまざまな経口摂取の市販薬に含まれています。ところが、外部専門家からなるFDAの諮問委員会は過去20年間に行われた5つの研究をレビューした結果、フェニレフリンは腸内で破壊されるため、錠剤・カプセル・液体いずれの形式でも経口摂取した場合の抗鼻炎効果は偽薬と同程度だと結論付けました。

また、諮問委員会はかつてFDAが市販薬におけるフェニレフリンの使用を認めた際の調査結果を再評価し、結果に一貫性がなく、研究デザインにも不備があり、データの整合性にも問題があることを発見しました。フェニレフリンのレビューを主導したFDAのピーター・スターク博士は、「結論として、当初の研究は方法論的に不健全であり、今日の基準には合致していないと考えます。対照的に新しいデータは信頼できるもので、経口摂取のフェニレフリンが鼻の充血解消薬として有効だという証拠にはならないと考えます」とコメントしています。


2007年にフェニレフリンの有効性について疑問を呈し、FDAにフェニレフリンを市販薬から取り除くように促したフロリダ大学のレスリー・ヘンデレス名誉教授は、「要するに、質の高い研究がフェニレフリンの真実を物語っているということです」と述べました。なお、諮問委員会は点鼻薬として使用された場合のフェニレフリンの有効性については否定しておらず、依然として直接鼻に作用した場合は効果があるとみられています。

今回はあくまで諮問委員会が結論を下しただけであり、FDAは今後、市販薬におけるフェニレフリン使用の承認を取り消すかどうか判断することになります。もしFDAがフェニレフリンを承認リストから削除した場合、アメリカにおけるフェニレフリン入り市販薬の販売が規制される可能性があるとのこと。

諮問委員会の議長でありオハイオ州立大学の薬学准教授であるマリア・コイル氏は、「患者を助けるために、もっと良い市販薬の選択肢があるのは明らかだと思います。そして研究は、この薬が効果的であると裏付けていません」と述べました。


市販薬メーカーの業界団体・Consumer Healthcare Products Association(消費者ヘルスケア製品協会)は、今回のFDA諮問委員会の会議の直前に声明を公開。市販薬からフェニレフリンを排除することで消費者の市販薬へのアクセスが阻害されると、患者が治療を遅らせたり見送ったりする可能性があり、「著しく否定的な意図しない結果」をもたらしかねないと警告しています。

また、消費者ヘルスケア製品協会は「フェニレフリン入り市販薬を服用した消費者の83%が、薬が鼻や副鼻腔のうっ血を和らげた」と回答した調査結果を引用し、市販薬のフェニレフリンが公衆衛生において重要な役割を果たしてきたと主張。「経口摂取のフェニレフリンは何十年もの間、アメリカの家庭で有益な鼻の充血除去剤として信頼されており、FDAは繰り返しこの成分が安全かつ効果的だと結論付けてきました。この判断は複数の二重盲検プラセボ対照試験によって確立され、過去2回にわたり諮問委員会から支持され、関連する臨床研究のメタアナリシスでも検証されています」と述べ、諮問委員会の結論に反対しました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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