サイエンス

バイアグラはもう不要?音波を使った画期的なED治療法が登場


勃起不全(ぼっきふぜん:ED)に悩む男性やそのパートナーにとって、1999年に発売されたバイアグラは救世主的存在とも言えます。しかし、バイアグラを服用しても30%前後の男性ではEDの改善が見られないほか、心臓病の治療にニトログリセリンなどを服用している男性はバイアグラを使用できません。健康な男性でも副作用として血圧の急激かつ大幅な低下や、心臓への酸素供給に支障をきたす狭心などがあらわれたり、突発性難聴になるケースもあるそうです。

そこで新たなアプローチとして、尿路結石の治療法として開発された体外衝撃波結石破砕術(ESWL:Extracorporeal shock wave lithotripsy)を応用した方法が注目を集めています。一時的に血管を拡張させて生殖器部への血流量を増やすバイアグラとは異なり、衝撃波(音波の一種)により新たな血管の形成を促進するため、EDを根本的に改善できる可能性があるようです。

詳細は以下から。Forget Viagra! Sound waves can send your sex life into orbit | Mail Online

イスラエルで臨床試験中のこの新たな治療法は、20年前に尿路結石の治療法として開発されたESWLを応用したものです。近年の複数の研究により、ESWLに用いられる衝撃波が血管新生の促進に有効であることが明らかになっています。衝撃波により血管内皮細胞増殖因子(VEGF)という糖タンパクの放出を誘発でき、このVEGFが「新しい血管よ育て」という指令を出すそうです。

必然的に、衝撃波は心臓病の新たな治療法を模索する心臓専門医の間でも注目を集めています。アメリカや日本では、心臓に衝撃波を当てることにより健康な新しい血管を形成させることができるか研究が行われていて、これがバイパス手術に耐える体力のない患者のライフラインとなると期待されるとのことです。


多くの専門家が、EDと心臓病には強い関連性があると確信しています。ベッドでのパフォーマンスの低下は多くの場合、心臓付近の血管の閉塞(へいそく)により全身の血流量が低下していることを示唆するそうです。

イスラエルのハイファにあるRambam Medical Centreの医師らは、衝撃波により血管新生を促進させるというメカニズムをEDの治療にも応用できると考えました。実用化に至れば、性行為の30分前に薬を飲まなければいけないというわずらわしさから解放されるという意味でも画期的な治療法となるかもしれません。

第一段階の治験は小規模ながら、治療中の痛みや副作用を訴えた被験者は1人もおらず、75%の被験者がバイアグラに頼らず勃起できるようになるなど、かなり肯定的な結果が出ています。

治験には、平均年齢56歳・平均3年間にわたり軽症~中程度のEDに悩む20名の男性が参加しました。20名は全員がEDの薬物治療を受ける患者の中からのボランティアです。これらの男性に3週間にわたり、手持ちのコンパクトな装置で発生させた弱い衝撃波を生殖器周辺の5個所へ繰り返し当てるという治療を行い、治療期間の前後で国際勃起機能スコア(リンク先のスケールは25点満点ですが、治験で用いられたのは30点満点のバージョンとのことです)の点数を比較しました。このスケールは点数が低いほど重症を示し、治療前に平均12~20点(中等~軽症のED)だった被験者で、3週間の治療期間の後に5~10点のスコアの上昇が見られました。専門家によると、5点以上のスコアの上昇はED治療においては著しい改善と言えるそうです。

過去10年間で、バイアグラやシアリスLevitraなどの薬品はED治療を画期的に変化させました。しかし、30%前後の患者ではこれらの薬品を服用しても症状の改善が見られないそうです。これらの男性にとっては、勃起を得るためには陰茎に直接薬品を注射する、またはポンプにより手動で陰茎を充血させるという方法しかありませんでした。

今回の治験の主任医師のYoram Vardi博士は「薬は治癒にはなりません。服用を中止するとまた機能しなくなってしまうのですから」と語っています。「衝撃波を用いた生物学的なアプローチなら、患者が薬を服用しなくても機能する状態にまで改善することができます」

国際性機能学会会長のJohn Dean博士は、今回の治験の結果は非常に興味深く、続く大規模な研究を行う価値があると発言しています。しかし、同様に衝撃波による治療でPeyronie's disease(勃起時に陰茎が曲がり痛みを伴う性機能障害)を改善しようという以前行われた試みは失敗していると警告もしています。「これらの発見は興味深く、もちろん更なる研究を行う価値があります。しかし、男性がかかりつけの医師のもとでこの治療法を受けられるようになるのは、まだまだ先のことでしょう」

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
バイアグラでスポーツもパフォーマンス向上 - GIGAZINE

「12時間耐久セックス」のためにバイアグラを大量服用した男性、心臓発作で死亡 - GIGAZINE

マンモスの眠る永久凍土で発見された前史時代のバイアグラ - GIGAZINE

夜の営みが「6倍長持ち」するスプレー、2年以内にも発売される見通し - GIGAZINE

ついに女性用バイアグラ登場か?抗うつ剤として開発された薬に女性のリビドーを高める効果が - GIGAZINE

使用するのをためらってしまうバイアグラ「うちわ」 - GIGAZINE

in サイエンス,   Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.