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まだ著作権が存在しない映画やドラマも対象にした海賊版サイトのブロッキングを命じる「超動的差し止め命令」が裁判所によって下される


2023年8月9日にインドのデリー高等裁判所が、6つの映画会社が海賊版サイトのブロッキングを要請した件について、判決を下した時点では著作権が存在しない「将来製作される映画やドラマ」も保護対象とした「超動的差し止め命令」を下したと報じられています。著作権が存在しない作品についても対象とした差し止め命令が下されるのは史上初のことだそうです。

IN THE HIGH COURT OF DELHI AT NEW DELHI Date of decision: 9th August, 2023
(PDFファイル)https://torrentfreak.com/images/universallcitystudiosllcandorsvdtmoviesbabyandors-487890.pdf


Analysing “Dynamic+” Injunctions: Delhi High Court’s Latest Judicial Invention – Spicyip
https://spicyip.com/2023/09/analysing-dynamic-injunctions-delhi-high-courts-latest-judicial-invention.html

Hollywood's Latest Pirate Site Blocking Injunction Covers 'Future Content' * TorrentFreak
https://torrentfreak.com/hollywoods-latest-pirate-site-blocking-injunction-covers-future-content-230907/

これまで海賊版サイトへのブロッキングは、裁判所の差し止め命令で指定されたドメインに対して行われてきました。しかし、指定されたドメインをブロッキングしても海賊版サイトはドメインを変えて再び活動を再開してしまうため、イタチごっこになってしまっていました。そこで、近年は「ブロッキング対象に新しいドメインやプロキシを随時追加可能」という動的差し止め命令(Dynamic Injunction)が裁判所から出されるケースもあります。

映画大国として知られるインドでは、映画を違法に公開する海賊版サイトが多く存在します。海賊版サイトの情報に詳しいニュースサイト・Torrentfreakによれば、2022年に映画「ヴィクラムとヴェーダ」を違法に公開していたとされる海賊版サイトが、インドのインターネットサービスプロバイダー(ISP)40社によって1万3445件もブロッキングされたとのこと。さらにインドでは、ISPだけではなくNamecheapやGoDaddyなどのドメインレジストラもブロッキングに従うような命令が下されています


今回の訴訟はユニバーサル・シティ・スタジオ、ワーナー・ブラザーズ、コロンビア・ピクチャーズ、Netflix Studios、パラマウント・ピクチャーズ、ディズニーによって起こされたもので、ISPとドメインレジストラに対して16の海賊版サイトをブロッキングするように要請するものでした。デリー高等裁判所は映画会社の主張を認め、該当するドメインのブロッキングを命じる超動的差し止め命令(Dynamic+ Injunction)を下しました。

一般的な差し止め命令は「具体的な作品の著作権を違反した場合」に効力を発揮しますが、今回デリー高等裁判所が出した差し止め命令は「将来の作品の著作権を違反した場合でも効力を持つ」という点が画期的だとTorrentfreakは報じています。


例えば、命令を下した時点で著作権が発生していない作品の公開を差し止める場合、これまではその都度裁判所に差し止め命令を要請する必要がありました。ブロッキングされた海賊版サイトがドメインを変えて復活し、命令が下された以降に製作された新しい映画やドラマのみを違法に公開していた場合、映画会社は新たに差し止め命令を裁判所に要請しなければなりません。

しかし、今回下した超動的差し止め命令将来的に製作されるコンテンツも保護対象となっています。デリー高等裁判所は「将来の作品に対する著作権は作品が作成された瞬間に発生するものであり、映画やドラマが将来製作されるたびに差し止め命令を裁判所に要請することはおそらく不可能でしょう」と述べました。


この超動的差し止め命令がどれだけ影響を与えるのかは、記事作成時点では明らかではありませんが、対象となった海賊版サイトがドメインを巧妙に変え、命令が下された後に著作権が発生した新作の映画やドラマだけを違法に公開したとしても、自動的に命令の対象となります。

ただし、法学者のReva Satish Makhija氏は「被告によって侵害される可能性から原告の権利を守ろうというデリー高等裁判所の試みは善意によるものですが、当事者の利益の均衡を図る上での有効性という観点からはさらなる検討が必要です」と述べ、超動的差し止め命令についてもっと議論を重ねるべきだと主張しました。

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in ネットサービス, Posted by log1i_yk

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