デザイン

ユーザーをだますデザイン「ダークパターン」により有料サービスの無料トライアルが機能していないという指摘


インターネット上で何かを購入したりアカウントを作成したりする際に、ユーザーが意図していないことを実行させるようなデザインを「ダークパターン」と呼びます。このダークパターンにより、有料サービスによくある「無料トライアル」が機能していないという報告が挙がっています。

Tim Gadanidis - Caught by MuseScore's dark patterns
https://gadanidis.ca/posts/2021-11-09-musescore.html


ダークパターンを採用していることが指摘されているのは、無料でも使えるオンライン楽譜共有プラットフォームのMuseScoreです。MuseScoreではパブリックドメインの楽曲の楽譜や、MuseScoreユーザーが作成したオリジナル楽曲の楽譜だけでなく、著作権で保護された楽曲のアレンジ楽譜などをダウンロードすることが可能。パブリックドメインの楽譜は無料アカウントでダウンロードできますが、著作権で保護された作品関連の楽譜をダウンロードするには、有料のサブスクリプションサービスに登録する必要があります。

以下がMusescoreのトップページで、画面下部には有料サービスのひとつであるMuseScore PRO+への加入を促す表示があり、右上には有料サービスの無料トライアルへの参加が可能になるボタンが配置されています。

Musescore.com | The world's largest free sheet music catalog and community
https://musescore.com/


そんなMuseScoreに潜むダークパターンを発見したのは、トロント大学で社会言語学や計算言語学などについて研究しているというティム・ガダニディス氏。同氏はジョゼフ・コズマの「枯葉」をパートナーと演奏するために、同楽曲のピアノおよびヴァイオリン用編曲の楽譜をダウンロードしようとして、MuseScore PROに登録したそうです。

MuseScore PROは年会費7189円、MuseScore PRO+は年会費1万289円が必要になるという有料サービスで、無料トライアルを使えば7日間は無料でこれらのサービスを利用することができます。無料トライアル期間が終了したのち、自動で年会費の支払いに同意したものとみなされ、2日以内に料金が自動で請求される模様。


ガダニディス氏が欲しかったのは上記の楽譜だけだったため、同氏はMuseScore PROに登録して無料トライアル期間中に楽譜をダウンロードし、その後、解約する予定だったそうです。しかし、無料トライアルに参加するのは簡単なものの、そこから抜け出すのは「困難だった」と記しています。実際、MuseScoreではアカウントを作成して無料トライアルをスタートしてから、少なくとも1時間は解約が不可能になっています。

これはMuseScoreのヘルプセンターにある「ウェブ版MuseScoreでサブスクリプションをキャンセルする」というページにも記されています。このページ上の説明には、「アカウントの設定中はサブスクリプションをキャンセルできないことに注意してください。アカウントの準備ができるまで約1時間待つ必要があります」と明記されています。

Cancel MuseScore website subscription – Musescore Help Center
https://help.musescore.com/hc/en-us/articles/209540009


アカウント作成から1時間はサブスクリプションを解約できない件について、ガダニディス氏は「これは明らかにでたらめです。なぜなら、サブスクリプションの編集を除き、楽譜のダウンロードやプロフィールの編集など、アカウントに関するすべての機能をすぐに使い始めることができるためです。サブスクリプションの編集が行えない本当の理由は明白です。MuseScoreはユーザーが無料トライアルを開始し、1つまたは2つの楽譜をダウンロードした後、無料トライアルが終了して自動で年会費が請求されるまでサブスクリプションの存在を忘れることを望んでいます」と言及。実際、ガダニディス氏は解約を忘れてしまいMuseScoreに年会費を支払う羽目になったそうです。

また、MuseScoreはサブスクリプションの解約画面でもダークパターンを採用しているとガダニディス氏は指摘しています。以下が解約画面で、画面上には「現在の有料期間中は、特典が有効なままです」と表示されており、「特典を継続します」(左)と「特典を希望しません」(右)のいずれかのボタンを押す必要があります。この画面について、ガダニディス氏は「『特典を希望しません』のボタンを押すと、すぐに有料サービスにアクセスできなくなってしまうかのように思えますが、実際にはそうではありません」と言及。これはコンファームシェミングとして知られるダークパターンの一種であるとガダニディス氏は指摘しています。


さらに、MuseScoreの利用規約には「年間サブスクリプションの場合、サブスクリプション期間の最初の14日間にサブスクリプションをキャンセルすると、MuseScoreから払い戻しを受けることができます」という記述がありますが、実際にはオンライン上からサブスクリプションの解約は不可能だそうです。インターネット上から可能なのはサブスクリプションの自動更新の停止のみで、解約はできなくなっている模様。実際にサブスクリプションを解約するにはサポートに直接連絡する必要があるそうです。

また、サポートに連絡してサブスクリプションの解約を申し出ても、MuseScoreは利用規約について通知せず、実際に受け取れるはずの金額をはるかに下回る年会費の35%の返金を提案してくるという報告もあります。

そこで、ガダニディス氏はMuseScoreのサポートに「利用規約に従い、サブスクリプションをキャンセルして返金に応じてください」と連絡した模様。しかし、それでもMuseScoreのサポートは「サブスクリプションの無料延長」あるいは「35%の返金」というオファーを提示してきたそうです。そして、ここでも「サブスクリプションの無料延長」を見やすい緑色のボタンとして表示し、「35%の返金」をグレーアウトしたボタンで表示するというコンファームシェミングを採用しています。


この2つのボタンの下にテキスト形式で最も多くの払い戻しが受けられるオプションが提示されていますが、これを受けるには再びMuseScoreのサポートと連絡を取り合う必要があります。なお、ガダニディス氏はこの再三にわたるやり取りを経て無事年会費の払い戻しを受けることに成功しています。

なお、ガダニディス氏がMuseScoreのダークパターンを指摘したのは2021年のことですが、アカウント作成から1時間はサブスクリプションをキャンセルできない点などは記事作成時点でもそのままです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
消費者を「ダークパターン」でだましてプライム会員に登録させたとしてFTCがAmazonを提訴 - GIGAZINE

ユーザーを誘導する「ダークパターン」で得られた同意を認めないという新法が登場 - GIGAZINE

あなたをだますウェブサイトのデザイン「ダークパターン」を見分けるために理解しておくべきこと - GIGAZINE

ユーザーを意図的にだます「ダークパターン」はショッピングサイトで予想より広く使用されているとの指摘 - GIGAZINE

なぜウェブデザイナーは暗黒面に落ちて人をだます「ダークパターン」を使うようになるのか? - GIGAZINE

ユーザーをだますのが目的のデザイン「ダークパターン」いろいろ - GIGAZINE

in ネットサービス,   デザイン, Posted by logu_ii

You can read the machine translated English article here.