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Amazonは運営が難航するリアルの食料品店で店内にドーナツチェーンを入れるなどの改善に取り組んでいる、プライム会員以外への生鮮食料品配達も開始


オンライン通販大手のAmazonはプライム会員向けの生鮮食品宅配サービスである「Amazon Fresh」を展開しているほか、2017年にはアメリカの高級食品スーパーであるホールフーズ・マーケットを買収して実店舗の運営にも乗り出しています。販売不振による店舗の閉鎖やテナントオーナーからの訴訟といった困難に直面する中で、Amazonは実店舗運営の全体的な改善に取り組んでおり、実店舗とプライム会員以外への生鮮食料品宅配サービスを組み合わせる効率的なモデルの構築を進めているとのことです。

Get an exclusive first look inside the redesigned Amazon Fresh grocery stores in Chicago
https://www.aboutamazon.com/news/retail/amazon-fresh-grocery-store-redesign-first-look-chicago


Amazon begins offering grocery delivery for customers who are not Prime members | AP News
https://apnews.com/article/amazon-fresh-prime-delivery-nonprime-b66d4475b321988f99dfce34519187ed

Amazon Grocery Refresh Includes More Whole Foods Integration - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-08-02/amazon-grocery-refresh-includes-more-whole-foods-integration

Amazon's grocery store quest leaves lawsuits, layoffs in its wake - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/technology/2023/08/01/amazon-fresh-grocery-store-lawsuits/

Amazonは2017年にスーパーマーケットチェーンのホールフーズ・マーケットを買収することを発表し、翌2018年にはレジ決済不要の実店舗「Amazon Go」やAmazonカスタマーレビューで高評価の商品のみを取り扱う「Amazon 4-star」を開店するなど、オンライン通販だけでなく実店舗の展開を進めてきました。ところが、2022年にはアメリカおよびイギリスで展開する68の書店・コンセプトストア・玩具店・家庭用品店を閉店することを明らかにするなど、Amazonの実店舗運営は難航していました。

Amazonが書店やコンセプトストアなど68の実店舗を閉鎖すると発表 - GIGAZINE


海外メディアのワシントン・ポストによると、Amazonは2022年以来の不況に対応するためのコスト削減を進めており、レジレス決済を備えて生鮮食料品なども取り扱う実店舗「Amazon Freshストア」の拡大を一時停止したとのこと。こうした中で、Amazon Freshストアを出店する予定だったテナントが空いたままとなり、アメリカ国内で複数のテナントオーナーから訴えられる事態になっています。

フィラデルフィア郊外のウィロウグローブ・ショッピングモールでは、2021年に前のテナントが撤退した後にAmazon Freshストアが入る予定でしたが、2022年3月の時点でもAmazon Freshストアは開店せず、Amazonは家賃を支払わなかったとのこと。モールの所有者であるフィラデルフィア不動産は、たびたびAmazonに家賃の支払いを開始するように要求しましたが、それでも支払いが始まらなかったため、2023年3月に訴訟を起こしました。


他にもシアトル郊外の高級ショッピングモールであるザ・ランディングや、ジャージーシティのハドソン・モールなどでも、テナントオーナーが同様の訴訟を起こしています。オーナーらはAmazonに対して損害賠償の支払いを求めているものの、Amazon側は「リースの執行に必要な条件を満たさなかった」として争っているとのことです。

また、ワシントン・ポストはAmazonの上層部がAmazon Freshストアの従業員を解雇したため、店舗を健全に運営する上で必要な従業員数が確保できていないという現場の声も報じています。匿名で証言したある従業員は、従業員向けのアプリに送信されたトレーニングプログラムを完了しないまま、とにかく働くように指示されたと主張しています。「文字通り、トレーニングを適切に実施できるスタッフがいないのです」と、従業員は語りました。


厳しい状況に直面しているAmazonの実店舗運営ですが、Amazon公式ブログでは8月2日に「一部のAmazon Freshストアの店舗を再設計し、利便性や外観を向上させた」という記事が投稿されました。Amazonはイリノイ州にある2店舗のAmazon Freshストアで品ぞろえやデザインを刷新したほか、作りたてのドーナツやコーヒーを販売するクリスピー・クリーム・ドーナツをテナントとして招き入れたことなどを報告しています。

イギリスのスーパーマーケットチェーン・テスコの元幹部であり、記事作成時点ではAmazonの食料品店部門のヴァイス・プレジデントを務めるトニー・ホゲット氏は、「すべての見た目や印象、デザインは既存のAmazon Freshストアと大きく異なっています。お客様はより明るくて風通しのいい体験に反応するのです」と述べています。こうした動きは、これまでのAmazon Freshストア利用者から寄せられた「Amazon Freshストアには温かみがない」といった印象を覆そうとしているようです。

新たな店舗ではカートに入れた商品の総額を自動で計算・決済するレジレスシステムだけでなく、従来の小売店にもみられるタッチパネル式のレジも導入されています。ホゲット氏は、レジレス決済を好んでいる顧客もいるものの、レジレス決済になじみがない顧客がいると指摘。「私たちは、多くのお客様にとってレジレス決済が新しいものだということを認識しています。私たちにとって重要なのは、誰もが店舗で居心地のよさを感じられるということです」とコメントしました。


また、Amazonは生鮮食料品宅配サービスの「Amazon Fresh」を拡大し、プライム会員以外への配送も開始することも8月2日に発表しました。当初、このサービスはボストン・フェニックス・ダラス・サンフランシスコを含む12の都市で展開され、2023年末までにアメリカ全国へ拡大される予定です。

プライム会員以外ではないユーザーは、Amazon Freshを利用する際の商品総額が50ドル(約7200円)未満の場合は13.95ドル(約2000円)、総額50~100ドル(約7200~1万4000円)未満の場合は10.95ドル(約1700円)、100ドル以上の場合は7.95ドル(約1150円)の配送料を支払う必要があります。この配送料はプライム会員よりも4ドル(約570円)高い価格となっています。

さらにAmazonは、ホールフーズ・マーケットのオンラインストアやAmazon.com、Amazon Freshのカートを1つに統合し、販売ストアがまたがる商品を1回の決済で購入可能にするシステムの構築を計画しているとのこと。この変更は2023~2024年のうちに導入される予定ですが、これにはAmazonの流通ハブにホールフーズ製品を組み込むなどの変更が必要であり、ホゲット氏も「私たちはまだ改善が必要だと認識しています」とコメントしています。

ホゲット氏は、「私たちはアメリカと世界中で大規模な実店舗の食料品ネットワークを成長させることについて非常に慎重であり、どのようにするのがベストなのかはまだ検討中です」と述べました。

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in ネットサービス, Posted by log1h_ik

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