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ChatGPTがイタリアでのブロック措置から復活、トレーニングデータの収集・使用法の明確化や個人情報削除フォームの追加などにより


規制当局からの圧力により、イタリアからのアクセスがブロックされていたチャットAIのChatGPTが、規制当局からの要求を満たしたことで再びイタリアで利用可能になったと、AP通信が報じています。

OpenAI: ChatGPT back in Italy after meeting watchdog demands | AP News
https://apnews.com/article/chatgpt-openai-data-privacy-italy-b9ab3d12f2b2cfe493237fd2b9675e21


OpenAI reinstates ChatGPT service in ItalySecurity Affairs
https://securityaffairs.com/145434/security/openai-chatgpt-italy.html

ChatGPT returns to Italy after ban - The Verge
https://www.theverge.com/2023/4/28/23702883/chatgpt-italy-ban-lifted-gpdp-data-protection-age-verification

2023年3月末、イタリアのデータ保護機関であるGaranteが「OpenAIのChatGPTがEU一般データ保護規則(GDPR)に違反している懸念がある」として調査を開始しました。具体的な問題点は「ChatGPTがユーザーデータを違法に処理している懸念がある点」と「未成年者がChatGPTにアクセスすることを防ぐようなシステムが存在しない点」でした。

これに伴い、GaranteはOpenAIに対してChatGPTへのイタリアからのアクセスをブロックするよう命令を出しており、現地時間の4月1日からOpenAIはイタリアのIPアドレスからのChatGPTへのアクセスをブロックせざるを得なくなりました。

OpenAIがイタリアからのChatGPTへのアクセスをブロック - GIGAZINE


イタリアにならう形で、ドイツなどのEU諸国のデータ規制当局も、「自国民のChatGPTへのアクセスをブロックするための措置」を講じることを検討中であると報じられました。

ChatGPTへのアクセスをブロックしたイタリアに続きドイツなどEU諸国でもブロックを検討中 - GIGAZINE


OpenAIは初め、問題に対処するための時間として20日間の猶予を与えられました。その後、Garanteは「OpenAIが4月30日までに未成年ユーザーの個人情報を保護するためのルールを施行することに同意した場合、イタリアからのアクセスブロックを解除する」と発表

そして、現地時間の4月29日にAP通信が「ChatGPTがイタリアでアクセスブロックから戻ってきた」と報じ、ChatGPTがイタリアで再び利用可能になったことが明らかになりました。海外メディアのThe Vergeが事実を確認したところ、OpenAIからは「我々はイタリアでのアクセスブロックを解除できることに興奮しており、彼らのプライバシーを保護することに専念し続けます」という回答が得られたそうです。


OpenAIはAP通信に対して「(Garanteにより提起された)問題に対処または明確化した」と述べており、具体的には「ChatGPTのトレーニングデータの収集・使用方法をウェブサイト上に明記すること」「データがトレーニングに利用されることを反対するユーザーのためのデータ削除申請フォームの提供」「イタリアユーザーの年齢を確認するためのツールの追加」の3点が実施されたと報じられています。

ひとつ目の「ChatGPTのトレーニングデータの収集・使用方法をウェブサイト上に明記すること」は、以下のOpenAIとChatGPTがどのように個人情報を収集・使用しているかを概説したヘルプセンターの記事により実現されています。なお、このヘルプページの記事にはGDPRで義務付けられている「データ保護責任者への連絡に関する情報」も含まされているそうです。

How ChatGPT and Our Language Models Are Developed | OpenAI Help Center
https://help.openai.com/en/articles/7842364-how-chatgpt-and-our-language-models-are-developed


「データがトレーニングに利用されることを反対するユーザーのためのデータ削除申請フォームの提供」には、OpenAIが新しく設置した「個人情報削除リクエストフォーム」で対処しています。なお、この個人情報削除リクエストフォームはEUのGDPRに準拠するために設けられたものですが、EU以外の国と地域のユーザーでも利用できるようです。

OpenAI Personal Data Removal Request
https://share.hsforms.com/1UPy6xqxZSEqTrGDh4ywo_g4sk30


そして「イタリアユーザーの年齢を確認するためのツールの追加」は、イタリアのユーザーがChatGPTにアクセスした際に表示されるウェルカムバックページに「18歳以上であることを確認するためのボタン、あるいは13歳以上であり両親からChatGPTの利用に関する同意を得ていることを確認するためのボタン」を追加することで対処しています。

ChatGPT is back in Italy pic.twitter.com/PGvq8sZ0fD

— Antonio (@Antonio12I)


なお、GaranteもChatGPTがイタリアで再び利用可能になったことをアナウンスするプレスリリースを公開しており、ここにはより詳細なアップデート内容が記されています。

ChatGPT: OpenAI riapre la piattaforma in Italia garantendo più... - Garante Privacy
https://www.garanteprivacy.it/web/guest/home/docweb/-/docweb-display/docweb/9881490


OpenAIによるアップデートの詳細は以下の通り。

・ウェブサイト上でヨーロッパおよびその他の地域のユーザーおよび非ユーザーに向けて情報通知の草案を作成・公開し、トレーニングアルゴリズムのどの取り決めの下でどの個人情報が処理されるかを説明し、誰もがそのような処理をオプトアウトできるようにする。
・ユーザー向けのプライバシーポリシーを拡張し、サービスに登録する前にサインアップページからもアクセスできるようにする。
・非ユーザーを含むヨーロッパのすべての個人に、オンラインで簡単にアクセスできるフォームを介してアルゴリズムのトレーニングのためにデータを処理することをオプトアウトする権利を付与する。
・新しいプライバシーポリシーへのリンクとトレーニングアルゴリズムのための個人情報処理に関する情報通知を含む、イタリアでのサービス再開を通知するウェルカムバックページの導入。
・データ主体が不正確であると考えられる情報の消去を申請できるようなメカニズムを導入。ただし、現時点では不正確さを修正することは技術的に不可能。
・契約に基づきサービスを提供するために特定の個人情報を処理し続けるものの、ユーザーのオプトアウトの権利を損なうことなく、正当な利益という法的根拠に基づき、トレーニングアルゴリズムのためにユーザーの個人情報を処理することを、ユーザー向けの情報通知で明らかにする。
・ヨーロッパのすべてのユーザーが個人情報の処理をオプトアウトし、トレーニングアルゴリズムに使用されるデータからチャットとチャット履歴を除外できるようにするフォームを実装。
・イタリアの登録ユーザー向けに予約されているウェルカム バック ページに、サービスにアクセスする前に 18 歳以上であることを確認するためのボタン、または 13 歳以上であり、両親から同意を得ていることを確認するためのボタンを追加しました。またはその目的の保護者。
・サービスのサインアップページに生年月日を指定し、13歳未満のユーザーによるアクセスをブロックし、13歳から18歳までのユーザーの親または保護者による同意を要求します。


GaranteはAP通信に対して、「OpenAIが実施した措置を歓迎します」という声明を出しています。しかし、同時にOpenAIに対して「さらなる年齢確認に関する変更」や「データ収集をオプトアウトする権利についてユーザーに知らせるGaranteの広報キャンペーンに従うこと」などを求めているそうです。なお、The VergeもGaranteにコメントを求めていますが、記事作成時点では返答は得られていません。

なお、The Vergeは「これまでのところ、今回の変更がイタリアでのChatGPTの運用方法を劇的に変えたようには見えません。しかし、OpenAIがさらなる課題に直面することはほぼ確実です」と記し、スペインやフランス、カナダなどの規制当局でも大規模言語モデルが利用するトレーニングデータの収集方法や、その他慣行について調査が始まっていることを指摘しています。

また、ヨーロッパではAIを規制するための法案成立に向けた動きが加速しており、これによりOpenAIのようなAI企業が重要な情報の開示を迫られるなどの、新しい規制に直面する可能性もThe Vergeは指摘しています。

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in ネットサービス, Posted by logu_ii

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