Googleが「iOS向けブラウザアプリで強制されているWebKit採用」に反するBlinkベースのiOS版Chromeを開発中
Appleはサードパーティー製のウェブブラウザアプリに対して、レンダリングエンジンにAppleのWebKitを採用することを強制しています。そのため、iOS版のChromeなどのサードパーティー製ブラウザアプリもWebKitを採用しているのですが、GoogleはPC版やAndroid版のChromeが採用しているレンダリングエンジンのBlinkをiOS版Chromeにも搭載するべく開発を進めていることが明らかになりました。
Google experiments with non-WebKit Blink-based iOS browser • The Register
https://www.theregister.com/2023/02/03/googles_chromium_ios/
1411704 - Create a content_shell iOS port - chromium
https://bugs.chromium.org/p/chromium/issues/detail?id=1411704
Google Working on Browser for iOS That Would Break Apple's App Store Rules - MacRumors
https://www.macrumors.com/2023/02/04/google-working-on-browser-that-would-break-rules/
AppleはiOSアプリとして提供されているサードパーティー製ブラウザに対して、レンダリングエンジンにWebKitを採用することを強制しており、App Store Reviewガイドラインにも「Webを閲覧するAppでは、適切なWebkitフレームワークとWebKit Javascriptを使用する必要があります。」と明記されています。Googleが開発するウェブブラウザのChromeは、PC版やAndroid版ではレンダリングエンジンにGoogle開発のBlinkを採用しているのですが、iOS版ではAppleのルールに従ってWebKitを採用しています。
しかし、Googleは「content_shell iOS port」というプロジェクトの中で、iOS版ChromeでレンダリングエンジンにBlinkを採用する実験を行っていることが明らかになりました。ただし、このプロジェクトはあくまで実験的な試みで、Googleの広報担当者は「これはiOSでのパフォーマンスの特定の側面を理解することを目的としたオープンソースプロジェクトの一環として開発されている実験的なプロトタイプです。ユーザーが利用することはなく、Googleは引き続きAppleのポリシーを順守します」と海外メディアのThe Registerにコメントしています。
Appleがサードパーティー製のブラウザアプリに対してWebKitの採用を強制している件については、長年、競合他社や開発コミュニティから批判の声が上がっていました。しかし、近年はAppleのWebKit強制を各国の規制当局が問題視しており、イギリスの競争市場庁やオーストラリアと日本の規制当局などが監視の目を強めています。加えて、2024年に発効されるEUのデジタル市場法により、Appleはサードパーティー製のアプリストアを許可することになると見込まれており、これに伴いWebKit強制ルールも変更されることになると予想されています。
「AppleのiOSでのWebKit強制はウェブブラウザの将来性を奪うものだ」という主張 - GIGAZINE
by iphonedigital
そのため、Googleが実験と称して行っているBlinkベースのiOS版Chromeアプリ開発も、WebKit強制ルールが撤廃される場合を想定したものである可能性が高いとThe Registerは指摘しています。また、The Registerがブラウザ開発の専門家に問い合わせたところ、「content_shell iOS port」で開発されているのは「最小限のブラウザアプリ」ではあるものの、「別のブラウザアプリのビルドを開始しているように見える」ものだそうです。
ただし、Appleはオランダの競争規制当局である消費者市場局(ACM)の命令に従って同国のマッチングアプリで外部リンク支払いとアプリ内支払いの両方を許可したり、韓国のアプリストアの独占状態を解消するための法律に従い同国でのみサードパーティーによる支払い方法を導入したりと、国ごとの規制に個別対応する姿勢を見せてきました。
つまり、WebKit強制ルールも国や地域ごとに強制されたり強制されなかったりする可能性があるとThe Registerは指摘。そうなれば、Chromeのようなサードパーティー製ブラウザアプリが独自のレンダリングエンジンを採用したバージョンとWebKitを採用したバージョンを地域ごとに分けて配信するようになり、ブラウザメーカーにとって大きな負担になるとThe Registerは危惧しています。
・関連記事
「AppleのiOSでのWebKit強制はウェブブラウザの将来性を奪うものだ」という主張 - GIGAZINE
Appleによる「ブラウザ開発者へのWebKit強制」はセキュリティリスクを悪化させているという指摘 - GIGAZINE
Safari 16で追加されたWebKit機能まとめ - GIGAZINE
「Safari 16 Beta」のWebkit機能が更新、macOS向けのウェブプッシュ機能などが追加 - GIGAZINE
・関連コンテンツ