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裁判で初めて「ChatGPT」を使用した判決が行われて物議を醸す


南アメリカに位置するコロンビアの裁判所で、裁判官が判決文を作成する際に「ChatGPT」を使用したことを明かし、コロンビアの法曹界に議論を巻き起こしました。

Sentencia la tomé yo, ChatGPT respaldó argumentación: juez de Cartagena usó inteligencia artificial - BluRadio
https://www.bluradio.com/judicial/sentencia-la-tome-yo-chatgpt-respaldo-argumentacion-juez-de-cartagena-uso-inteligencia-artificial-pr30

A Judge Just Used ChatGPT to Make a Court Decision
https://www.vice.com/en/article/k7bdmv/judge-used-chatgpt-to-make-court-decision

Colombian judge says he used ChatGPT in ruling | ChatGPT | The Guardian
https://www.theguardian.com/technology/2023/feb/03/colombia-judge-chatgpt-ruling

Colombian judge uses ChatGPT in ruling on child's medical rights case - CBS News
https://www.cbsnews.com/news/colombian-judge-uses-chatgpt-in-ruling-on-childs-medical-rights-case/

今回、ChatGPTで判決文を作成したのは、コロンビア北部の都市・カルタヘナの裁判所を管轄する裁判官のJuan Manuel Padilla Garcia氏です。Padilla氏は、2023年1月30日付の(PDFファイル)判決文で「司法手続きにICTを取り入れることを目的とした2022年法律第2213号に鑑み、人工知能の活用を念頭に、採択された判決の論点を拡張することを決定しました。そこで、今回の判決で提起された法的問題の一部をhttps://chat.openai.com/に入力しました」と述べて、ChatGPTを使うことを明記しました。


ChatGPTが使用された今回の裁判は、自閉症の子どもの治療費や医療機関までの交通費の支払いを、両親の収入が限られていることを理由に健康保険会社が拒否できるかどうかをめぐって争われたものです。

Padilla氏がスペイン語で「自閉症の未成年者は、治療費の支払いを免除されますか?」と質問したところ、ChatGPTは「はい、その通りです。コロンビアの法律によると、自閉症と診断された未成年者は、セラピーにかかるモデレーション料金(医療サービスの受益者が支払う料金)が免除されます」と回答しました。


この裁判でPadilla氏は、「子どもの両親に費用を支払う余裕がないため、子どもの医療費や交通費は全て医療保険で賄われるべきである」として、自閉症の子どもの家族側に有利な判決を下しました。

Padilla氏は、コロンビアのラジオ局であるBlu Radioの番組で、ChatGPTはあくまで文書の起草を容易にすることで司法制度の待ち時間を改善するために用いられたものであって、裁判官をAIに置き換えることを目的としたものではないと説明。「アプリケーションに質問したからといって、私たち裁判官が自分で考える存在であることをやめるわけではありません」と述べて、ChatGPTはPadilla氏の決定に影響せず単に文章を作成するのに使われただけだと強調しました。

Padilla氏によると、人工知能が国の裁判の文書で使われたのはこれが初めてだとのこと。正式な裁判の書類の文面が人工知能によって作成された事は、専門家の間で物議を醸しました。

コロンビアにあるロザリオ大学の教授で、人工知能規制の専門家であるJuan David Gutierrez教授がChatGPTに同じ質問をしたところ、判決とは異なる回答が返ってきたとのこと。こうした点からGutierrez教授は「ChatGPTのような文章生成AIを書き物に関する仕事に使えないというわけではありませんが、問題の判決の裁判官が意図したような用途にChatGPTを使うのは、明らかに責任や倫理が書けています。裁判官のデジタルリテラシーのトレーニングが急務です」とツイートしました。

Para ilustrar el punto, pregunté a #ChatGPT por un listado de sentencias de la Corte Constitucional sobre el derecho fundamental a la salud que involucre a un menor de edad diagnosticado con autismo. En siguientes interacciones pregunté por ejemplos puntuales. No obtuve ni uno. pic.twitter.com/UMxHIBo1Hr

— Juan David Gutiérrez (@JuanDGut)


一方、肯定的な意見もあります。コロンビア最高裁判所の裁判官であるOctavio Tejeiro氏は、「AIの使用はロボットが裁判官に取って代わることを恐れる法曹界にモラルパニックを引き起こしました。しかし、このツールはおそらくすぐに受け入れられて、一般的になるでしょう」との見解を示しました。

Tejeiro氏はまだChatGPTを使ったことはありませんが、将来的には使うことを検討しているとのこと。Tejeiro氏はイギリスのメディア・The Guardianの取材に対して「司法制度はテクノロジーをツールとして最大限に活用すべきですが、常に倫理に従い、最終的な司法の執行者は人間であるということを念頭に置かなければなりません。テクノロジーは、裁判官の判断力を向上させるための道具であって、道具が人間よりも重要視されるようなことがあってはならないのです」と話しました。

なお、ChatGPTは自分が司法制度に使われる事に対して否定的で、The Guardianの質問に対して「裁判官は、法的な事例で判決を下す際にChatGPTを使用するべきではありません。それは、人間の裁判官の知識や経験、判断に代えられるものではないからです」という回答を出力したとのことです。

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in ソフトウェア, Posted by log1l_ks

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