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対話AI「ChatGPT」は教育現場で活躍するため禁止するのではなく使い方を教えるべきという指摘


OpenAIが発表した対話型AI「ChatGPT」は、人間からの質問に対して非常に自然に受け答えできるためさまざまに活用できる一方で、見栄えは良いが成立していない文章を作ることもあることからQ&Aサイトで使用を禁止されたり、科学論文を書くための使用を国際会議が禁止したりといった規制の動きも見られています。ニューヨーク市教育局も学校のPCおよびネットワークからChatGPTへのアクセスを「教育にふさわしくない」としてブロックしましたが、ニューヨークタイムズは「ChatGPTは教育ツールとして非常に役立つため、全面的に禁止するのではなく、正しく使えるよう指導するべき」と指摘しています。

Don’t Ban ChatGPT in Schools. Teach With It. - The New York Times
https://www.nytimes.com/2023/01/12/technology/chatgpt-schools-teachers.html

I wrote about the movement to ban ChatGPT in schools, and why it seems like a missed opportunity. https://t.co/bW9WvAmzAw

— Kevin Roose (@kevinroose)


2022年11月下旬にリリースされたChatGPTは、テスト版の公開から1週間もたたないうちにユーザーが100万人を突破するなどすぐに注目が集まり、精度の高い会話AIと広い用途により、さまざまな活用法が編み出されています。学生にとってもChatGPTは有用なツールと言われており、テクノロジー系メディアのAnalytics Insightは、「宿題の解説をしてくれる」「外国語の学習に役立つ」「クイズを出してもらって試験の練習を行える」などの利点を挙げています。

学生が「ChatGPT」などのツールを使うことで得られる恩恵10選 - GIGAZINE


一方で、ニューヨーク市教育局は、ニューヨーク市の生徒や教師に対して一方的にChatGPTへのアクセスをブロックする措置を採りました。ニューヨーク市はこの措置について「生徒の学習への悪影響と、コンテンツの安全性・正確性に対する懸念を理由としたものです。ChatGPTは質問に対して迅速かつ簡潔な回答を提供できるかもしれませんが、学業や生涯の成功に不可欠な批判的思考や問題解決のスキルを構築することはできません」と説明しています。また、ニューヨークタイムズによると、一部の教育現場では「ChatGPTが宿題を完全に殺してしまった」として授業計画に損害が起きる可能性を懸念しているそうです。

生徒と教師によるChatGPTの利用をニューヨーク市が禁止 - GIGAZINE


ニューヨークタイムズでテクノロジー系のコラムを書くケビン・ルース氏は、数週間にわたって数十人の教育者とChatGPTについて話し合った結果、「ChatGPTを教育現場から完全に禁止することは間違った動きです」と結論付けたとのこと。また同時に、「学校はChatGPTを教材として慎重に採用する必要があると私は信じています」と述べています。

ChatGPTを禁止するべきではないと話すルース氏の根拠は、まず、その禁止がうまく機能しない点にあります。ニューヨーク市のブロックはあくまで学校のPCおよびネットワークからのアクセスを遮断するもので、学生が個人のスマートフォンや自宅のPCからアクセスすることは制限できません。また、AIによって生成された書き込みを検出できるGPTZeroなどのツールに期待を寄せている教育者もいるものの、その検出は正確であるとは言えず、比較的簡単にだますことができます。

ChatGPTで生成された文章を見分ける手段はほかにも、ChatGPTの「出力した文章に透かしを入れる」という機能の活用も考えられています。しかし、これはあくまでChatGPTに限られた機能で、ChatGPTより便利さは劣るものの透かしのない対話型AIアプリケーションを選択するようになるだけだとルース氏は指摘しています。

ChatGPTで生成された文章がすぐわかるように透かしを入れる試み - GIGAZINE


ChatGPTを禁止するべきではない2つ目の理由として、ルース氏はChatGPTが教育ツールとして非常に効果的なものになる点を主張しています。オレゴン州のある英語教師は、ChatGPTを使用して有名なエッセイの概要を作成し、その概要を生徒たちに手書きで書いてみるよう指示することで、エッセイの内容に対する学生の理解を深めると同時に、学生がAIとのやり取りで何をどのように得られるかという体験も教育していたそうです。そのほか、通常は教師の手間が大きすぎるため行いづらい「各生徒に個別の授業計画・課題を作成」を実施できたり、学生のレベルに合わせた語句や表現で難しいワードを説明したり(「中学2年生が理解できる言葉でドップラー効果を説明して」と命令)といった活用法をChatGPTは得意としています。

また、討論の練習としてAIとやり取りすることも有用な可能性があります。さらに、ChatGPTの欠陥である「質問への回答が間違っていることがある」という点についても、しっかり批判的思考を持つように指導を行うことで、むしろインターネットリテラシーと同様の能力が身につくと考える教育者もいます。

ChatGPTを規制したり不正を看破したりする動きの代わりに、ルース氏は「学校はChatGPTを電卓と同じように扱う必要があります」と提案しています。電卓は瞬時に計算を行えるため研究や学習の補助に役立ちますが、一部を除いて試験での使用は禁止されています。同じように、ChatGPTを「誰もが1つは所持しているツール」として認識し、どのような学習に活用するのが良いか指導する必要があるほか、不正に課題を処理されないように宿題の代わりにミニテストを行うなどの授業計画の変更で対応すべきとルース氏は語っています。すべての学生にコンピュータサイエンスを学ぶ機会を提供することを目的とする非営利団体のCode.orgは、「学校でコンピュータサイエンスとAIを教えることは非常に重要だと考えています。学生は、プログラミングと人工知能が日常生活の一部となっている世界をどのように歩いていくのか、学ぶ必要があります」とルース氏の考えを支持しています。

We believe teaching computer science and AI in schools is critically important. Students need to learn how to navigate a world where programming and artificial intelligence are part of our everyday lives. https://t.co/RseVCi9Jcn

— Code.org (@codeorg)


ルース氏は、これまでの仕組みを完全に破壊するChatGPTのようなツールに反射的な拒絶をすることは自然であると述べつつ、「ChatGPTは、生徒の創造性を解き放ち、パーソナライズされた個別指導を提供し、生徒が大人としてAIシステムと一緒に働くためのより良い準備を整えることができるものです」と語っています。そして、有用だが間違った使い方もあるChatGPTなどのAIシステムについて、学生たちを正しく導くために、教師以上に優れた人物はいないとルース氏は結論付けています。

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in ソフトウェア,   ネットサービス, Posted by log1e_dh

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