結婚した人は「認知症リスク」が大幅に高いという衝撃の調査結果が報告される

結婚が長生きや心臓病リスクの低さと関連していることなどから、一般的に結婚は健康にいい影響を与えるものだと考えられています。ところが、婚姻関係と認知症リスクについて最長18年間追跡した新しい調査により、未婚の人は夫婦生活を続けた人より認知症リスクが低いことがわかりました。
Marital status and risk of dementia over 18 years: Surprising findings from the National Alzheimer's Coordinating Center - Karakose - 2025 - Alzheimer's & Dementia - Wiley Online Library
https://alz-journals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/alz.70072
Surprising Findings From New Research About Dementia and Marriage | MedPage Today
https://www.medpagetoday.com/neurology/dementia/114820
Being married linked to increased risk of dementia – new study
https://theconversation.com/being-married-linked-to-increased-risk-of-dementia-new-study-253875
フロリダ州立大学医学部のセリン・カラコセ氏らの研究チームは、2025年3月20日付の査読付き医学誌・Alzheimer's&Dementiaに掲載された論文の研究で、アメリカにある42の認知症専門クリニックから集めた既婚者と未婚者合計2万4107人のデータを分析しました。
参加者の性別の内訳は女性1万4369人と男性9738人で、年齢は50~104歳、平均年齢は71歳でした。このうち、18.44年間の調査期間中に4853人の参加者がアルツハイマー病やレビー小体型認知症といった認知症と診断されました。
この研究の特徴は、参加者を単に結婚しているかどうかではなく、「既婚(1万5409人)」「未婚(1339人)」「離婚(3360人)」「死別(3939人)」の4つに分類したことです。なお、サンプル数が少なかったため、結婚しているものの別居中の261人は「離婚」に、内縁関係にあるパートナーと同居していた423人は「既婚」に合算されました。
主な調査データを表にすると以下のようになります。
認知症を発症しなかった | 認知症を発症した | 合計 | |
---|---|---|---|
19,254 (79.9%) | 4,853 (20.1%) | 24,107 | |
性別 | |||
女性 | 11,862 (61.6%) | 2,507 (51.7%) | 14,369 (59.6%) |
男性 | 7,392 (38.4%) | 2,346 (48.3%) | 9,738 (40.4%) |
世帯構成 | |||
ひとり暮らし | 5,675 (29.5%) | 1,168 (24.1%) | 6,843 (28.4%) |
同居者あり | 13,544 (70.5%) | 3,681 (75.9%) | 17,225 (71.6%) |
婚姻状況 | |||
既婚 | 12,020 (62.4%) | 3,389 (69.8%) | 15,409 (63.9%) |
死別 | 3,075 (16.0%) | 864 (17.8%) | 3,939 (16.3%) |
離婚 | 2,927 (15.2%) | 433 (8.9%) | 3,360 (13.9%) |
未婚 | 1,232 (6.4%) | 167 (3.4%) | 1,339 (5.8%) |
そして、研究チームが3つのタイプの独身者と既婚者の認知症リスクを分析して比較した結果、「既婚」の参加者と比べて「死別」した人は認知症リスクが27%、「離婚」した人は34%、「未婚」の人は40%低いことがわかりました。この傾向は男女ともに同様だったほか、研究期間中に婚姻関係が変化した人を対象とした補足分析では、途中で配偶者を亡くした人は、結婚生活を続けた人より認知症リスクが低いことがわかりました。
また、学歴や遺伝といった要素や、うつ病など認知症リスクと関連する因子の影響を考慮したところ、既婚者と死別した人との間の統計的な差はなくなりましたが、依然として未婚者は24%、離婚者は17%認知症リスクが低いという結果だったとのことです。
このことから、研究チームは「独身者、特に離婚経験者や未婚者は、結婚を継続している人よりも認知症を発症するリスクが低い」と結論付けました。
カラコセ氏は「この研究結果は、結婚により認知機能の低下や認知症が予防されるという一般的な考えに疑問を投げかけるものです。予想に反して、結婚した高齢者は未婚、離婚、死別した高齢者に比べて認知症のリスクが高いことが、私たちの研究でわかりました」と話しています。

なぜ、このような予想外の結果が出たのかはわかっていません。研究チームは論文の中で「確認バイアス」と呼ばれる効果の影響を指摘しました。確認バイアスとは、既婚者の認知機能が低下すると、すぐにパートナーが気づいて医師の診察を受けるよう勧めるので、その分だけ認知症と診断されやすいというものです。
しかし、この研究の参加者は全員が毎年医師の診察を受けており、独身であっても専門家に初期の認知症の兆候を発見してもらえた可能性が高いので、この研究結果の説明としては弱くなります。
過去の研究によると、結婚の健康上のメリットは質の高い婚姻生活のみからしか得られないとのこと。言い方を変えると、結婚生活に不満を抱えた人は独身の人より死亡リスクが高くなるという実質的なエビデンスがあり、これが認知症リスクにも同様の影響をもたらしていると考えられます。
また、サンプルの約80%が白人でアメリカの人種構成とずれがあることや、経済的ストレスや社会的つながりといった要因は考慮されていないことなどがこの研究の制限事項として挙げられているため、これが研究結果に影響している可能性もあります。
こうした点を踏まえた上で、カラコセ氏は「この発見は、婚姻状況と認知症リスクの関連性に対する理解を変える可能性があります。これまでの研究では、結婚のメリットが強調されてきました。しかし、既婚者は社会的ネットワークが狭く、自立度が低く、介護などのストレスの多い状況を経験する可能性があり、それが認知症リスクの一因となる可能性があります」と述べて、パートナーへの依存や配偶者の世話の負担などが認知症リスクを高めるおそれがあるとの見解を示しました。
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