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Vtuberとは違って中の人が本当にいない「デジタルヒューマン」産業がスキャンダルのないインフルエンサーを目指して中国で急成長中


アニメーションと音響技術と機械学習を組み合わせ、歌ったり配信で交流したりもできる「デジタルヒューマン」が中国で急速に普及しており、スキャンダルのない仮想インフルエンサーとしての活躍が期待されています。すでに中国のテクノロジー企業が積極的に開発を進めているだけでなく、政府もバーチャルコンテンツの普及に多額の予算を計上しています。

Companies can ‘hire’ a virtual person for about $14k a year in China
https://www.cnbc.com/2023/01/02/companies-can-hire-a-virtual-person-for-about-14k-a-year-in-china.html

中国で最も有名なデジタルヒューマンが、バーチャルシンガーの洛天依(ルォ・テンイ)です。洛天依は日本の初音ミクと同じようにボーカル音源ソフトウェアのキャラクターで、エンジンには初音ミクと同じVOCALOID 3を使っています。洛天依の開発は2012年にスタート。記事作成時点で300万人近いファンを持ち、2022年の北京で開催された冬季五輪の文化祭開会式でもパフォーマンスを披露しました。動画ストリーミングサービスのBilibiliは、洛天依の開発チームを買収しています。

Olympic Winter Games Beijing 2022 - [Luo Tianyi] "Time to Shine" 【洛天依】- 北京冬奥会文化节开幕式 - YouTube


Baiduのデジタルヒューマン・ロボット事業を率いるイ・シヤン氏によると、デジタルヒューマンの購入者には金融サービス企業や地元の観光局、国営メディアなどが含まれるそうです。3次元のデジタルヒューマンの維持コストは年間約10万元(約190万円)、2次元は約2万元(約38万円)かかるとのことで、技術の向上に伴ってコストは1年で約80%低下しているそうです。イ氏はデジタルヒューマン業界が2025年までに毎年50%ずつ成長すると予想しています。


デジタルヒューマン事業に力を入れているのはBaiduだけではありません。北京市は2022年8月に、2025年までに市のデジタルヒューマン産業を500億元以上の規模に育てる計画を発表しています。また、市当局は民間企業に対して、営業収益がそれぞれ50億元(約950億円)以上の「有力な仮想人物ビジネス」を育成するよう求めました。

また、中国政府は放送やクリエイティブな分野でバーチャルコンテンツを積極的に組み込む計画を発表しました。また、2021年に発表された5カ年計画では、仮想現実や拡張現実を含め、経済のさらなるデジタル化を推し進める方針が盛り込まれています。

市場調査企業であるKantarの調査によれば、少なくとも36%の消費者が過去1年間にデジタルヒューマンのパフォーマンスを見たことがあると答えたとのこと。また、21%はデジタルヒューマンがイベントの司会を務めたりニュースを放送したりしているのを見たことがあると答えたそうです。さらに、広告主の45%が、2023年以降にデジタルヒューマンのパフォーマンスを後援したりブランドのイベントにデジタルヒューマンを招待する可能性があると回答しています。


Kantarのチーフプロダクトオフィサー兼中国市場責任者のシリウス・ワン氏は「中国のブランドは、最近多くの有名人が脱税や個人のスキャンダルでネガティブな報道をされたため、代替となるデジタルヒューマンを探しています」と語っています。

なお、「中の人」が存在するVTuberについては過酷な労働環境が問題視されており、中国政府が将来的に3Dの人型アバターの使用を管理する可能性も示唆されています。

Vtuber等の仮想的なアバターを用いた「デジタルヒューマン」を中国が規制へ - GIGAZINE

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in ソフトウェア,   動画, Posted by log1i_yk

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