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企業が値上げをごまかすために使う3つの戦法

by Brett Jordan

ポテトチップスの袋を開けて「なんだか前より少なくなったな」と感じたことがある人は多いはず。iPhone半導体などインフレが価格の上昇に直結する製品もありますが、食品など価格競争が厳しい分野では企業はおいそれと値上げをすることができません。そんな企業が消費者からインフレの影響を隠すために使う手段をマーケティングの専門家が3つに分けて解説しました。

Three ways companies change their products to hide inflation
https://theconversation.com/three-ways-companies-change-their-products-to-hide-inflation-189924


イギリスにあるレディング大学ヘンリー・ビジネス・スクールでマーケティングを教えているエイドリアン・パルマー教授によると、イギリスでは2022年7月の消費者物価上昇率が10.1%に達し、1970年代以降で初めて2桁の増加率を記録するなど、過去最高に近い水準でインフレが進んでいるとのこと。これを受けて、パルマー教授は近年の経済環境を1970年代と比較しようとしましたが、ここ半世紀の間に人々の消費や貯蓄といった行動が大きく変化したため、単純比較ができないことに気がつきました。

特に大きく違うのは、インターネットの登場やサプライチェーンのグローバル化、国が独占していたサービスの規制緩和や民営化です。こうした変化により、人々は複数の供給元からモノやサービスを購入できるようになったため、多くの企業が競争の激化にさらされるようになりました。


そこでパルマー教授は、競争の激化やコストの増加に直面した企業が行う対応を次の3つにまとめました。

◆1:バリュー商品化
パルマー教授によると、消費者の可処分所得が減少すると小売業者が販売する自社ブランドの食料品の売上が増加する傾向にあるとのこと。イギリスの小売店やスーパーマーケットは近年のインフレに対応するため、「ベーシック」や「必需品」をうたい文句に低価格帯の商品を宣伝しており、1970年代にも同じ現象が見られました。


小売店にとって、低価格帯の商品は利益幅が少ないため、安い商品を売れば売るほど利益率の高い商品の売り上げが減少するというジレンマが発生します。その反面、メーカーブランドの食料品より自社ブランドの食料品の方が利益が大きく、また低価格の商品はお手頃な買い物だというアピールにはうってつけなので、スーパーマーケットは自社ブランドの商品を駆使して安さを前面に押し出すようになります。

例えば、イギリスでは最近のインフレによりドイツのディスカウントスーパーであるAldiLidlが台頭しており、特にAldiは2022年9月に食料品市場でのシェア率でイギリスの大手スーパーマーケット・Morrisonsを抜いて同国で第4位スーパーマーケットチェーンに躍り出ました

◆2:シュリンクフレーション
シュリンクフレーションとは、価格が据え置きのまま中身が減っていく現象のことです。日本では「ステルス値上げ」とも呼ばれ近年よく話題にのぼりますが、コストが減り次第すぐに元通りにすることができるので、コスト圧迫に悩むイギリスのメーカーにとっても一般的な戦略として重宝されているとのこと。メーカーは中身を減らす際はひっそりと実施しますが、元に戻す時には増量中の新商品として大々的にアピールします。

1970年代からの変化として、バーコードの普及が挙げられます。ラベルを使用した商品の管理方法では、ラベルを貼り替えるたびに消費者が価格を意識することになりますが、バーコードにより価格の変動が見えにくくなったことで、近年の消費者は価格に関する情報にアクセスしにくくなっていることが報告されているとのこと。


その反面、オンラインショッピングやインターネット検索の普及により重さや大きさごとの単価を手軽に比較できるようになったため、消費者は再びシュリンクフレーションを簡単に見抜くことができるようになりました。

◆3:セルフサービス化
セルフサービス化の典型的な例は、組み立て式の家具です。インフレによる圧力は、企業が完成品の家具を売る代わりに消費者が製造プロセスの一部を自分で行うという形で表面化しました。この点についてパルマー教授は、「企業がモノを作り消費者がそれを消費するというのは、あまりに単純です。私たちが消費する製品の多くは、メーカーと消費者が共に努力した結晶なのです」とコメントしています。

こうした「共同化」の傾向は、1970年代に比べて経済への影響が大きい分野、例えば銀行業務でも顕著です。消費者が人に頼らなくなった結果、多くの銀行は窓口を減らしてネットバンキングへと移行するようになりました。


パルマー教授によると、消費者行動の長期的な変化は、複数の要因の結果であることが多いとのこと。今回のインフレの行方も、気候変動やパンデミックなどの影響次第だと考えられており、特にイギリスでは欧州連合離脱、いわゆるブレグジットも大きく関係してきます。

その一方で消費に重きを置かない文化も定着してきており、インフレだけでなく気候変動に悪影響を与える消費行動を「恥」とする価値観、ロックダウン中の巣ごもりによる行動の変化といった要因が、今まで傍流だったミニマリズム的な考え方を主流化させるかもしれないと、パルマー教授は指摘しました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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