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小売店が客の「衝動買い」を誘発するために使う心理学的テクニックとは?


「今日は必要なものしか買わないぞ」と心に決めて買い物に行っても、帰る頃にはなぜか当初の予定にはなかった食べ物・衣服・ガジェットを買っていたという経験がある人も多いはず。これは自分の意志が弱いせいだけではなく、店舗側が顧客に「想定外の買い物」をさせるために心理学的なテクニックを使用しているせいでもあるとのことで、その巧妙さについてイギリスのアングリア・ラスキン大学で消費者心理学を研究するCathrine Jansson-Boyd氏が解説しています。

How shops use psychology to influence your buying decisions
https://theconversation.com/how-shops-use-psychology-to-influence-your-buying-decisions-180355

2013年の研究によると、実に食料品売上の50%が「衝動買い」によるものだそうで、買い物客の87%が衝動買いを行っているとのこと。「自分は必要なものしか買わない」と思って入店したのに衝動買いしてしまうのは、注意力や自制心の欠如といった内的要因だけでなく、小売店が仕掛ける心理学的テクニックの影響もあります。Jansson-Boyd氏が挙げるテクニックは以下の通り。

◆レイアウトの変更
小売店は時々売り場のレイアウトを変更することがあり、「前は台所用品のコーナーだった場所に文房具が並んでいる」「トマトケチャップの売り場がいつの間にか変わっていた」という経験がある人もいるはず。こうなると顧客は欲しいものを求めて店内をさまようことになり、当初の予定よりさまざまな商品を目にするため、結果として衝動買いする機会が増えるというわけです。

◆割引や「3個買うと1個無料」などのお得な提案
通常価格より割引していることをアピールするポップや「3個買うと1個無料」といった魅力的なオファーは、一時的な喜びを消費者にもたらします。こうした喜びの感情は合理的な判断を下すのを難しくするため、「本当にこれが必要なのか?」といった考慮事項を無視して、「お得だから」という感情に負けて衝動買いしやすくなるとのこと。


◆抱き合わせ販売
ゲーム機によくゲームソフトがついているのは、心理学的テクニックを応用した「抱き合わせ販売」であり、2~3個の商品をまとめて買うと定価より安くなる場合、人はつい買ってしまいたくなります。この手法はオンラインショッピングサイトでもよく使われ、何か商品を買おうとした際に「まとめて買うとお得」という広告を目にした人も多いかもしれません。

◆レジ横の商品コーナー
店内の主な陳列棚とは別に、レジの横に少しだけお菓子や飲料が並んでいるレイアウトに見覚えがある人は多いはず。これも小売店側が消費者の衝動買いを促すためのテクニックだそうで、2018年の研究では、レジ横の商品コーナーがない店舗はある店舗と比較して、個包装のお菓子の売上が76%も下がる可能性があると示唆されています。


もちろん、買い物すること自体にはいくつかのメリットがあります。不幸や不安を感じている時、人は「すべての物事が自分でコントロールできない」という感覚を味わいますが、自分が好きなものを買うことで個人的なコントロールの感覚を取り戻して悲しみを軽減することができます。また、オンラインショッピングは脳内のドーパミン放出を促し、店頭で購入する時とは異なり商品到着を待っている時に興奮することがわかっているとのこと。

しかし、一時の快感が忘れられず不必要な買い物を繰り返すようになると、もはや買い物自体が目的化してやめられなくなってしまう「買い物依存症」を発症する危険もあります。さらに衝動買いは消費者の羞恥心と罪悪感を高めて精神的幸福に悪影響を与えることが示されているほか、不安やストレス、うつ病につながる可能性もあるとJansson-Boyd氏は述べています。

消費者にデメリットをもたらす衝動買いを食い止めるには、小売店自身がレイアウトや宣伝方法を変えることが有効です。小売店が自らのデメリットになることをするのは考えにくいかもしれませんが、イギリスでは肥満を減らすことを目的として「中~大規模な小売店において不健康な食品の購入を促す宣伝手法を制限する」という取り組みが2022年10月からスタートします。このように、衝動買いの危険性が周知されて問題意識が高まれば、小売店の販売戦略に規制を設けることもできるかもしれないとのことです。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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