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Appleはプライバシーを理由に他社広告を制限して自社の広告ビジネスを拡大しているという指摘


AppleはiOSのアプリストアである「App Store」で広告の表示場所を拡大することを発表しました。Appleは広告表示場所の拡大について「あらゆる規模の開発者に成長の機会を提供できます」とコメントしていますが、モバイル業界のアナリストであるEric Seufert氏は、「2021年にプライバシー強化を目的とするApp Tracking Transparency(ATT)を展開して他のプラットフォームから奪った資源を、自社の広告ビジネスとして活用している」と指摘しています。

APPLE ROBBED THE MOB'S BANK: How Apple's App Tracking Transparency (ATT) policy blew up the digital advertising ecosystem, bolstering its ads business while positioning itself as a champion of consumer privacy. A masterclass in corporate strategy. (1/X)https://t.co/xaWBXqFxgn

— Eric Seufert (@eric_seufert)


Apple robbed the mob's bank, part 3 | Mobile Dev Memo by Eric Seufert
https://mobiledevmemo.com/apple-robbed-the-mobs-bank-part-3/

Appleが2021年春から実装したATTは、アプリの広告がユーザーを追跡する際にユーザーの許可を必要とするよう定める規定で、ATTによりユーザーは自分の情報が事前の同意なしに使われるのを防げるようになりました。一方で、広告業界は大きな打撃を受け、Seufert氏はこれを「Appleは消費者にプライバシー管理を与えるという崇高な大義でカモフラージュして、Facebookなどの他の広告プラットフォームの最も貴重な資源を略奪して逃走しました」と指摘しました。

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Seufert氏はATTの発表当初、AppleがATTの導入に伴って自社の広告ネットワークを拡大する優先度は低いと推測していたとのこと。しかし、ATTによるモバイル広告業界へのに大きな影響が報告されたことから、ATTが制限したプライバシー規定には巨大な商業的機会が含まれているとSeufert氏は考えるようになりました。そのような中、AppleはApp Storeに新しく広告の表示場所を拡大することを2022年7月末に発表しました。Seufert氏はこれを「ATTに続く、強盗に似た商業的作戦」と表現し、Appleが他の広告主を排除して得た機会を利用して、広告ビジネスを大きく拡大しようとしているとSeufert氏は結論付けています。

ATTはユーザーのプライバシーを守るための機能ですが、Seufert氏によると、ATTはファーストパーティのデータとサードパーティーのデータを区別しているため、Apple独自の広告ネットワークで行うターゲティングは許容されているとのこと。Appleの広告ネットワークは、ATTの制限の下でアプリのインストールデータおよびアプリ内の購入データを利用し、ユーザーをターゲティングして広告を表示します。Seufert氏は「ATTはAppleだけがアクセスできる不公平なものです。ATTは実際には消費者の選択を促進せず、消費者から広範な広告を奪い、広告主や広告の発行者から商業的機会を奪っています」と述べています。

14/ And because of the way ATT demarcates between 1st and 3rd party data, Apple's own collection of data from iTunes Connect is considered compliant--meaning the targeting it does with its own ad network is permissible. https://t.co/QGsa0NP1OZ

— Eric Seufert (@eric_seufert)


Seufert氏は「Appleの広告ネットワークはプライバシー規定であるATTを活用することで、明らかな競争上の優位性を生み出している」と繰り返し指摘しています。また、イギリスの公正取引委員会が「ATTの実装は競争に害を及ぼす可能性が高い」と評価していたり、「Appleのプライバシー規定は、自社を不当に有利にしていて反競争的である」としてドイツの連邦カルテル庁による調査が開始されたりと、Appleの広告ビジネスを問題視する動きが見られています。

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Appleの広告ビジネスを問題視する動きがある一方で、AppleはApp Storeに新しく広告の表示位置を追加したほか、広告プラットフォームに関して200近くの求人を掲載していたり、看板やテレビCMでプライバシーへの取り組みをアピールしていたりと、Appleが広告ビジネスを大幅に拡大しているのは明らかとSeufert氏は強調しています。

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in モバイル,   セキュリティ, Posted by log1e_dh

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