イーロン・マスクの「Twitterはボットまみれ」という主張の根拠は「マスク自身をボット認定する精度の低いツール」だとTwitter側が指摘

by Eden, Janine and Jim

テスラやSpaceXの創業者であるイーロン・マスク氏がTwitterの買収を中止した件で、Twitterが裁判所に提出した127ページもの文書の中で、マスク氏が行ったスパム分析に使われたツールは、マスク氏のアカウント自体をボットだと診断していたことを指摘しています。

Twitter says Musk’s spam analysis used tool that called his own account a bot | Ars Technica
https://arstechnica.com/tech-policy/2022/08/twitter-says-musks-spam-analysis-used-tool-that-called-his-own-account-a-bot/

2022年4月、Twitterの筆頭株主となったマスク氏はTwitterを買収すると述べ、Twitterもマスク氏による買収に合意したことを発表しました。

Twitterがイーロン・マスクによる5兆6000億円の買収案に合意 - GIGAZINE

by Steve Jurvetson

しかし、マスク氏は「収益化可能なデイリーアクティブユーザー(DAU)のうちでスパムあるいはフェイクなのは5％未満」というTwitterの公開情報に疑問を抱き、この公開情報が正しいことが証明されない限り、合併契約に署名しないと主張。2022年7月には正式に買収から撤退することを発表しました。

イーロン・マスクが「Twitterの買収を取りやめる」と発表 - GIGAZINE

Twitterはこのマスク氏の買収中止は契約違反だと述べ、マスク氏を提訴しました。

Twitterがイーロン・マスクを提訴、買収する約束を果たせと迫る - GIGAZINE

Twitterは裁判所に提出した文書の中で、「「マスク氏は、自分が複数の企業の創業者で億万長者であり、ウォール街の投資家や弁護士から助言を受けた結果、Twitterにだまされて440億ドル(当時のレートで約5兆6000億円)もの合併契約に署名したと主張しています。しかし、この話は信じがたいことであり、事実に反しています。マスク氏はもはや合併合意に魅力を感じなくなって契約から逃れるために作り出した話であり、彼個人が所有する巨万の富は価値が低下しています」と主張しています。

さらにTwitterは「マスク氏の反訴は歪曲、虚偽表示、あからさまな欺瞞に基づくものであり、何も変わりません。マスク氏は合併契約に署名し、合併を完了させる義務があります」と述べています。

by NASA HQ PHOTO

Twitterは、マスク氏が使用したツールはインディアナ大学が開発したBotometerだと指摘。このBotometerはマスク氏のTwitterアカウントを5点中の4点と採点、つまりボットである可能性が非常に高いと判断したと主張しています。Botometerは、マスク氏のアカウントについてはリツイートやメンションのツイートが非常に多く、Twitter APIのバグによって不正確に診断されていると指摘しています。

ニュースサイトのProtocolはBotometerを使ってマスク氏のアカウントをチェックしており、2022年5月上旬時点でBotometerによる採点が5点中4点だったのが、数日後には1.4点、さらに数日後には0.5点にまで落ちていたそうです。つまり、確かにマスク氏のアカウントをボットだと診断していましたが、公開データを蓄積することで人間だと判断できるようになったというわけです。Protocolは、公開データのみを使用してBotometerでボットであるかどうかを特定することは難しいと指摘しています。

Twitterは「Botometerは、偽アカウントあるいはスパムアカウントに関するTwitterの定義を適用しようとはしません。実際、地震の発生や天気の変化を報告するボットなど、Twitterのプラットフォーム操作あるいはスパムポリシーの元で役立つボットアカウントも多くあります。また、マスク氏はアカウントがスパムであると結論づけるために適用すべきスコアを提示していません。すなわち、マスク氏の主張は検証不可能なのです」と主張しました。

また、Twitterは、「スパムアカウントの数に基づいて契約を終了する権利はマスク氏にない」と論じています。合併契約には虚偽のアカウントやスパムアカウントへの言及はなく、マスク氏が合併契約に署名する前にその情報をTwitterに求めなかったことから、Twitterはマスク氏の主張は認められないとし、「合併契約には『2022年1月1日以降のアメリカ連邦取引委員会(SEC)への提出書類に事実に関する重大な虚偽または誤解を招く記述を含まない』という慣習的な表明が含まれているだけで、提出書類の正確具合に基づいて買い手が取引を終了する権利はありません」と述べています。

by Mambembe Arts & Crafts

一方でマスク氏側は「Botometerが過去8年間にわたって改善され続けてきたツールであり、開発者はBotometerについて多くの論文を公開しており、その中には学術文献として1000回以上引用されているものもあります」と述べています。

また、マスク氏側は「TwitterのSEC開示の真実性に関する表明を求めて交渉したが、そこにはTwitterの価値をゆがめ、マスク氏が水増しされた価格で会社の買収同意に至った原因となった不実表示や省略が多数含まれています」「マスク氏に対する個人攻撃と、法廷よりもメディアの徴収に向けられた派手なレトリックに満ちたTwitter側の訴状は、こうした不実表示から気をそらそうとする試みに過ぎません。Twitterの戦略は開示についての真実をそらし、投資家や真実を指摘するマスク氏派からデータを難読化することです」と主張しています。