日本全国1万件以上の発電所の分布マップや電力需給実績グラフなど電力情報満載の「エレクトリカル・ジャパン」
2022年3月には東京電力および東北電力管内で需給ひっ迫警報が発表され、2022年6月には夏の電力需給が厳しくなるとして日本政府が全国で節電を要請しました。これらの状況から日本の電力需給システムがピンチに陥っていることがうかがえますが、そもそも日本ではどんな種類の発電所がどこで稼働しているのか気になるところです。国立情報学研究所の北本朝展教授が作成した発電所マップ「エレクトリカル・ジャパン」では電力に関する膨大なデータが分かりやすく可視化されているとのことなので、実際にアクセスして発電所の分布状況や電力需給状況について調べてみました。
エレクトリカル・ジャパン - 発電所マップと夜景マップから考える日本の電力問題 | 東日本大震災アーカイブ - 国立情報学研究所
http://agora.ex.nii.ac.jp/earthquake/201103-eastjapan/energy/electrical-japan/
◆目次
・1:日本全国に設置された1万7000件以上の発電所の分布を可視化
・2:発電所を電力会社や発電方式別にチェック
・3:日本の発電所設置の歴史をアニメーションでチェック
・4:各電力会社の電力需給実績グラフをチェック
◆1:日本全国に設置された1万7000件以上の発電所の分布を可視化
エレクトリカル・ジャパンにアクセスすると、以下のような画面が表示されます。「ここをクリックするとマップを表示します」と記された部分をクリックすると……
こんな感じに発電所が位置する場所に丸い印が付けられた地図が表示されます。
地図を拡大するとこんな感じ。地図上の明るくなっている部分は夜間に光を発している地域で、丸印は色ごとに「赤:火力」「ピンク:火力(バイオマス)」「黄色:原子力」「青:水力」「水色:揚水」「オレンジ:地熱」「緑:風力」「紫:太陽光」「白:複合型」を示し、丸印の大きさは発電所の規模を表しています。本州中央の山間部には水力発電所が大量に分布しており、夜間に光を放つ地域(人口の多い地域)には多くの太陽光発電所が分布していることが分かります。
東京周辺を拡大してみました。沿岸部には大規模な火力発電所が複数設置されており、人口の多い場所には太陽光発電所が大量に設置されています。
東北地方の沿岸部には風力発電所が多め。山間部には水力発電所や地熱発電所がポツポツと設置されています。
丸印をクリックすると、発電所の名称や事業所を確認できます。三宅島や八丈島には東京電力が管理する火力発電所が設置されていました。
◆2:発電所を電力会社や発電方式別にチェック
エレクトリカル・ジャパンでは、電力会社や発電方式で絞り込みながら発電所の分布を確認できます。絞り込みを行うには以下のリンク先にアクセスします。
電力会社・発電方式絞り込み検索 | エレクトリカル・ジャパン - 発電所マップと夜景マップから考える日本の電力問題
http://agora.ex.nii.ac.jp/earthquake/201103-eastjapan/energy/electrical-japan/filter.html.ja
絞り込み検索ページでは、画面右側のチェックボックスをオン・オフすることで地図上に表示する発電所の管理会社や発電方式を切り替えられます。例えば、東京電力が管理する発電所のみを表示するとこんな感じ。
福島県に設置された「福島第一原子力発電所」や、新潟県に設置された「柏崎刈羽原子力発電所」、長野県に設置された「安曇発電所」など、首都圏1都7県以外の場所にも東京電力が管理する発電所は多く存在しています。
次に、関西電力が管理する発電所を表示してみました。関西電力も富山県の「黒部川第四発電所」や長野県の「木曽発電所」など、関西圏を離れた場所に発電所を複数設置しています。
火力発電所と原子力発電所のみを表示してみるとこんな感じ。どちらも沿岸部に集中しています。
太陽光発電所は人が多く済む地域ならどこでも見つかる状況です。
◆3:日本の発電所設置の歴史をアニメーションでチェック
以下のリンク先では、1893年以降に日本に設置された発電所の位置や種類をアニメーションで確認できます。なお、日本では1893年以前から火力発電所が稼働していましたが、アニメーションでは現在稼働している発電所しか表示されません。
日本の発電所の歴史 地図アニメーション | エレクトリカル・ジャパン - 発電所マップと夜景マップから考える日本の電力問題
http://agora.ex.nii.ac.jp/earthquake/201103-eastjapan/energy/electrical-japan/history/
1950年時点までに、九州から北海道まで約900件の水力発電所が稼働し始めました。
1960年代には複数の大規模な火力発電所が稼働開始し……
1970年代には原子力発電所も稼働し始めました。
2000年代に入ると、北海道北部で風力発電所が複数稼働し始めます。
2010年代に入ると、毎月大量の太陽光発電所が稼働開始するようになりました。この時期は、1カ月に約100件の発電所が新規稼働しています。
そして2022年6月の状況が以下。太陽光発電所がかなり増えています。
なお、以下のページにはアニメーションを作成する際に用いた情報源や注意点がまとめられています。
日本の発電所の歴史について | エレクトリカル・ジャパン - 発電所マップと夜景マップから考える日本の電力問題
http://agora.ex.nii.ac.jp/earthquake/201103-eastjapan/energy/electrical-japan/start.html
◆4:各電力会社の電力需給実績グラフをチェック
エレクトリカル・ジャパンでは、毎日の電力需給実績まとめたグラフも公開されています。
電力会社・電力需給実績グラフ(原子力・火力・水力・地熱・バイオマス・太陽光・風力・揚水・連系線) | エレクトリカル・ジャパン - 発電所マップと夜景マップから考える日本の電力問題
http://agora.ex.nii.ac.jp/earthquake/201103-eastjapan/energy/electrical-japan/source/
電力需給実績グラフのページにアクセスすると、各電力会社の実績がズラリと表示されます。今回は東京電力をクリックしてみました。
すると、東京電力の火力・バイオマス・原子力・水力・揚水・地熱・風力・太陽光・連系線の需給実績が表示されます。グラフは最も濃い線が上部に記された日付(今回は2022年5月31日)の需給実績を示し、その背景に過去30日分の需給実績が表示されています。グラフを見ると風力発電の発電量が日によって激しく変動することや、太陽光発電が昼間しか電力を生み出さないことがよく分かります。
画面上部のボタンをクリックすると、別の日付の需給実績を確認できます。例えば東京電力管内で需給ひっ迫警報が発表された2022年3月22日の需給実績を確認すると、普段は昼間に発電量が少なくなる火力発電所で昼夜を問わず発電が続けられていたことが分かります。
また、この日は天気の影響で太陽光発電所での発電量がかなり少なかったようです。
画面下部では年ごとの需給実績をアニメーションで確認できます。試しに「2016年」と記された部分をクリックしてみると……
2022年の年始から年末までの需給実績グラフが順番に表示されました。アニメーションを見ると季節ごとの太陽光発電の発電量の変化などがよく分かります。
関西電力の2022年4月30日における需給実績グラフが以下。関西電力管内では原子力発電所が複数基稼働しています。原子力発電所の需給実績グラフは一直線になるのが特徴的です。
エレクトリカル・ジャパンでは他にもメガソーラーの航空写真集や電力に関連する気象情報など数多くの情報を確認できます。また、以下のページではエレクトリカル・ジャパンの作成経緯や作成に用いた情報の詳細がまとめられています。
エレクトリカル・ジャパンとは | エレクトリカル・ジャパン - 発電所マップと夜景マップから考える日本の電力問題
http://agora.ex.nii.ac.jp/earthquake/201103-eastjapan/energy/electrical-japan/policy.html.ja
発電所データベースについて | エレクトリカル・ジャパン - 発電所マップと夜景マップから考える日本の電力問題
http://agora.ex.nii.ac.jp/earthquake/201103-eastjapan/energy/electrical-japan/data.html.ja
・関連記事
日本中に張り巡らされた電力網をまとめた「電力系統マップ」が圧巻 - GIGAZINE
温暖化で海面上昇するとどこが水没するか一発で分かる地図「Flood Maps」レビュー、未来の日本の海岸線はどうなっているのか? - GIGAZINE
徒歩10分で行ける範囲が一発で分かるウェブアプリ「How far can I go?」を使ってみた - GIGAZINE
超簡単操作で使えるホンダの小型軽量発電機「EU26iJ」エンジン始動レビュー - GIGAZINE
小型軽量ポータブル電源「RIVER Plus」の充電スピードや給電能力を徹底検証、PS5&4Kモニターが余裕で動作しUPSとしても利用可能 - GIGAZINE
・関連コンテンツ