ハードウェア

ロシアのチップメーカーがArmアーキテクチャへのアクセスをイギリス政府によって禁止される


イギリス政府が2022年5月4日に、新たにロシアの63団体に対する経済制裁措置のリストを発表しました。その中で、ロシアの半導体企業であるBaikal ElectronicsMCSTが、Armアーキテクチャへのアクセスを禁じられました。

Notice_Russia_040522_1.pdf
chrome-extension://mhjfbmdgcfjbbpaeojofohoefgiehjai/index.html

UK sanctions Russian microprocessor makers, banning them from ARM
https://www.bleepingcomputer.com/news/technology/uk-sanctions-russian-microprocessor-makers-banning-them-from-arm/

イギリス政府は「この経済制裁の規定は、ロシアに対して、ウクライナの政情を不安定にする行為や、ウクライナの領土・主権・独立を弱めたり脅したりする行為をやめるように促すことを目的としています」と述べています。


Baikal ElectronicsとMCSTが記事作成時点でロシア国内で提供している製品のうち、主要なプロセッサが以下。要求の厳しいアプリケーションでテストしたロシアの企業や組織は「これらのチップが業界標準の製品に太刀打ちできない」と報告しており、中には受け入れがたいという意見も見られるそうです。

Baikal BE-M1000Cortex A57×8コア+Mali-T628(GPU)、クロック1.5GHz、35W、TSMC 28nmプロセス
Baikal BE-S1000Cortex A75×48コア、クロック2.0GHz、70W、TSMC 16nmプロセス
MCST Elbrus-8C:CPU8コア、クロック1.3GHz、TDP70W、TSMC 28nmプロセス
MCST Elbrus-16S:CPU16コア、クロック16GHz、TSMC 16nmプロセス

Baikal ElectoronicsやMCSTが開発するプロセッサはSamsungやTSMCのような国外のファウンドリで生産されていますが、SamsungとTSMCは経済制裁によってロシア企業との取引を停止しています。プロセッサの多くはTSMCの製造プロセスを基に設計されているため、ロシア国内での生産も非常に難しいといえます。

by ArtemBaikal

そして、上記の主要なプロセッサの中には、イギリス企業のArmが設計・ライセンス管理しているArmアーキテクチャを採用しているものも多くあるため、経済制裁によってArmアーキテクチャへのアクセスを禁止されると新しいプロセッサの設計も厳しくなります。

ロシアのチップ生産は完全に時代遅れで、記事作成時点で90nmノードのプロセスでの生産がやっとだとのこと。これはNVIDIAが2006年頃に出していたGeForce 7000シリーズとほぼ同じ技術だとのこと。

ロシア政府はこの問題を解決するべく、2022年4月に半導体開発業界に3兆1900億ルーブル(約6兆円)の投資を承認していますが、実際に投資が行われて現地生産が強化されるまでは何年もかかってしまいます。IT系ニュースサイトのBleeping Computerは、最も楽観的に見てもロシア国内のファウンドリが28nmノードのチップを生産できるようになるのは2030年頃になると予想しています。

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in ハードウェア, Posted by log1i_yk

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