The Semiconductor Heist Of The Century | Arm China Has Gone Completely Rogue, Operating As An Independent Company With Inhouse IP/R&D - by Dylan Patel - SemiAnalysis
https://semianalysis.substack.com/p/the-semiconductor-heist-of-the-century
2018年6月にソフトバンクは、ArmのIP事業を中国で行うことを目的として、中国子会社であるArm Technologyの持ち株の51%を中国投資コンソーシアムに売却し、「安谋科技(Arm China)」として合弁企業化しました。Arm Chinaは中国国内でArmのIPをライセンス管理する独占権を持つこととなりました。
子会社(アーム)における中国事業の合弁事業化に関するお知らせ | ソフトバンクグループ株式会社
https://group.softbank/news/press/20180605
しかしその後、Arm Chinaのアレン・ウーCEOがArm Chinaの顧客に対してライセンス料の割引を持ちかけ、それと引き換えに自分の会社への投資を誘致していたことが発覚。2020年にArmと株主はウーCEOを追放することに合意し、Arm Chinaの取締役会は利益相反を理由に、賛成7:反対1でウーCEOの解任を可決しました。
しかし、社印をウーCEOが保持していたため、解雇を法的に実行することができなかったとのこと。中国は日本と同じく印鑑に法的な効力を持たせる実印社会で、会社で行われるさまざまな手続きは社印がなければ実行に移すことができません。つまり、取締役会がウーCEOの解任を決議したにもかかわらず、ウーCEOは解任を拒否しながら、会社を実質的に支配したままとなっているわけです。
ウーCEOは取締役会でArm側についた上級幹部を追い出し、Arm Chinaの名義でArm Chinaの取締役会を提訴しました。Armの影響が排除されてしまったことで、Arm Chinaは完全にArmの手から離れ、暴走することとなりました。
もちろんArm側も黙ったままではおらず、新規IPのライセンス委託を停止するという報復を行いました。たとえばArmのCPUであるCortex A77やAWS独自設計のGraviton、Neoverseシリーズなどの主要な技術はArm Chinaには送られていません。また、2021年5月に発表された新アーキテクチャのArmv9も、Arm Chinaに提供されていません。その上でArmは「Arm Chinaが中国の半導体産業に悪影響を与える」と中国政府に訴えようとしています。
新規ライセンスの停止によって、Arm Chinaの暴走も収まるかと思われました。しかし、Arm ChinaはArmからの独立を正式に宣言するイベントを開催し、「Arm Chinaこそ中国最大の半導体IPサプライヤーである」とアピールしました。さらに、Arm Chinaは独自に開発した「XPUライン」と呼ばれる新しいIPを発表。今後はスマートフォンなどのモバイル機器やIoT機器向けに独自のNPUやVPUをリリースすると宣言しました。
結果として、Arm ChinaはArmからの独立をうたいながら、Armの一部IPを奪い、世界第2位の規模を持つ中国市場をかすめとった形になります。パテル氏は「Arm Chinaは中国の合弁企業が暴走した最も有名な例です。中国では何十年にもわたってIPが奪われコピーされてきましたが、今回のArm Chinaの一件はこれまでで最も大胆な試みかもしれません」とコメントしています。
さらにパテル氏は「このArm Chinaの暴走がNVIDIAの買収にどのような影響を及ぼすのかは不明ですが、ソフトバンクの近視眼的な利益追求がこのような大規模な問題を引き起こしたことは明らかです」と述べ、ソフトバンクのやり方を批判しました。