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政府によるWikipedia遮断に備えて「ロシア語版Wikipediaの全コンテンツをダウンロードするロシア人」が急増


ウクライナへの軍事侵攻を行っているロシアは、当局がフェイクニュースと判断した情報を発表・拡散した人を処罰する「フェイクニュース法」を制定するなどして国民への情報統制を強めており、ロシア語版Wikipediaのトップ編集者が逮捕される事態にまで発展しています。そんな中、ロシア当局がWikipediaを完全に遮断する事態に備えて、「ロシア語版Wikipediaの全記事をダウンロードしてオフラインで閲覧可能にするロシア人」が急増していることが報じられました。

Russians are racing to download Wikipedia before it gets banned.
https://slate.com/technology/2022/03/russia-wikipedia-download-kiwix.html

Russians downloading Wikipedia en masse as possible ban looms
https://mashable.com/article/wikipedia-russia-downloads

ロシアはウクライナへの軍事侵攻に関連して積極的なプロパガンダを行っていますが、SNS各社がロシアに有利なフェイクニュースを発信するアカウントを削除したり、Twitchがロシアによるプロパガンダを排除したり、ロシア国営メディアのチャンネルをブロックしたりと、各国は協調して対処しています。これに対しロシア当局はFacebookやTwitterへのアクセスをブロックしたり、FacebookとInstagramの運営元であるMetaを「過激派」と認定して国内での活動を制限したりする報復を行っています。

ロシアが西側諸国から孤立するにつれて、ロシアに住む人々が正しい情報を手に入れる手段も減少しつつあります。そんな中で、ロシア語版Wikipediaは中立的な情報入手源として重要なものになっていますが、ロシア当局はWikipediaにおけるウクライナ侵攻に関するコンテンツに不満を示し、ブロックする可能性を示唆しています。

過去にもWikipediaを遮断した前例があるロシアにおいて、Wikipediaが閲覧不可能になるシナリオは現実味を帯びているとのことで、ロシアに住む人々は「ロシア語版Wikipediaの全コンテンツをダウンロードして、オフラインでも閲覧できるようにする」ことを進めているそうです。海外メディア・SLATEのライターであるAnnie Rauwerda氏が取材した「アレクサンドル」と名乗る32歳のロシア人男性は、「念のため」に約29GBにおよぶロシア語版Wikipediaの全コンテンツのダウンロードを実行したとのこと。

アレクランドル氏はWikipediaの常連編集者でも熱心な信奉者でもないものの、ロシア政府から独立した信頼できる情報源としてWikipediaを必要としており、ロシアメディアよりWikipediaの方が信用できると考えていると述べています。なお、妻と2頭の犬と一緒に暮らしているというアレクサンドル氏はウクライナ侵攻に反対しており、崩壊しつつある生活とロシアという国への幻滅から国外移住を検討しているそうです。


ロシアにおいてWikipediaのダウンロードを試みているのはアレクサンドル氏だけではありません。Wikipediaのコンテンツをダウンロードしてオフライン閲覧を可能にするサービス「Kiwix」において、ロシア語版Wikipediaのダウンロード数は2022年3月前半だけで10万5889回に達したとのことで、1月前半から4000%以上も増加し、世界で最もダウンロードが多い言語となっています。

Kiwixを率いるStephane Coillet-Matillon氏によると、ロシアからのダウンロードはKiwixサーバー上の全トラフィックのうち42%を占めているそうで、2021年のわずか2%から大幅に増加しているとのこと。また、実際には自分の身元を隠すためにVPNやTorを経由してダウンロードするロシア人もいると推測されるほか、Wikipediaのコンテンツをダウンロードする方法はKiwix以外も存在するため、実際はもっと多くのロシア人がWikipediaをダウンロードしているだろうとCoillet-Matillon氏は指摘しました。

なお、Kiwixでは過去にもトルコやベネズエラ、中国など政府主導のWikipedia検閲が行われた国々でダウンロード数の急増がみられたそうですが、アフリカの農村部や難民キャンプ、南極大陸などインターネット接続が不安定な地域にWikipediaを提供する上でも役立っています。1日に数時間しかインターネットが使えない南極のアムンゼン・スコット基地では、Raspberry PiがKiwixサーバーとして運用され、南極滞在中の研究者らがアクセスできる貴重な科学的リソースとして使用されているとのことです。

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in ネットサービス, Posted by log1h_ik

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