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Cloudflareがロシアからの撤退を拒否する、「サービスを停止してもロシア政府が喜ぶだけ」とCEO


ロシアがウクライナに軍事侵攻したことに対する国際社会の非難が強まる中、AppleMicrosoftNetflixマクドナルド・スターバックスなど、数多くの企業がロシアでの事業停止を発表しています。ところが、多様なインターネット関連サービスを提供するCloudflareのマシュー・プリンスCEOは、3月7日に更新した公式ブログの中で「ロシアでサービスを停止してもロシア政府に祝われるだけだろう」と述べ、ロシアから撤退せずにサービスを提供し続けると主張しました。

Steps we've taken around Cloudflare's services in Ukraine, Belarus, and Russia
https://blog.cloudflare.com/steps-taken-around-cloudflares-services-in-ukraine-belarus-and-russia/

Cloudflare refuses to pull out of Russia, says Putin would celebrate shutoff | Ars Technica
https://arstechnica.com/tech-policy/2022/03/cloudflare-wont-cut-off-russia-says-it-needs-more-internet-access-not-less/

プリンスCEOによると、ウクライナのインターネットに対する攻撃はロシアの侵攻前から始まっていたそうで、Cloudflareはウクライナの従業員や顧客、ネットワークを安全に保つことに努めてきたとのこと。これについてプリンスCEOは「Cloudflareはロシアのウクライナ侵攻を恐怖と共に監視してきました」と表現しています。

以下のグラフはウクライナ国内のHTTPリクエスト量を表したもの。2月24日にロシアが侵攻を開始した後はリクエスト量が減少しているものの、依然としてウクライナのほとんどでインターネットが利用可能だそうです。


また、ウクライナに対するロシアのサイバー攻撃に対抗するため、Cloudflareは人権・ジャーナリズム・民主主義などに関連する組織にサイバーセキュリティ保護を提供するガリレオプロジェクトの下、ウクライナの団体や組織を支援していると述べています。ガリレオプロジェクトが支援するウクライナや近隣地域の組織は60以上に上り、そのうち約25%はロシアの侵攻に伴って新たに追加された組織です。これらの組織の多くはウクライナから逃れた難民を支援するための活動を行っています。

Cloudflareは顧客のデータを保護するため、ウクライナ・ロシア・ベラルーシのデータセンターから顧客の暗号化キーマテリアルを移動し、暗号化のセッションを紛争のリスクがある場所から離れたデータセンターで実行できるようにしています。また、これらの国のデータセンターでインターネット接続や電力が遮断された場合、内部データを保護するためにすべてのマシンが起動しなくなる仕組みも実装しているそうです。データセンターのマシンを起動するには、サイトに保存されていない固有のキーを入力する必要があるとプリンスCEOは述べました。


プリンスCEOはロシアに対する各国政府や企業による制裁についても言及し、ロシアを世界的なインターネットから遮断することを求める動きもあったと指摘。実際にウクライナのミハイロ・フェドロフ副首相は、Domain Name System(DNS)のルートサーバーシステム運用などを行う非営利団体のICANNに対し、「.ru」「.рф」といったロシアの国別コードトップレベルドメインの取り消しを求めたほか、ヨーロッパ・中東・中央アジアを管轄する地域インターネットレジストリのRIPE NCCにはロシア国内におけるIPv4IPv6の使用停止を要求しました

ドメイン取り消しやIPアドレスの使用停止は、実質的に「ロシアをインターネットから切り離す」ことを意味しており、これらの措置によるダメージを負うのはロシア政府ではなくロシア国民だと指摘する声も上がっています。実際に、ウクライナの要求に対し、ICANNは「我々の使命は懲罰的な行動をとったり制裁を課したり、インターネットの一部に対するアクセスを制限したりすることではありません」と述べて拒否しています。

「ロシアをインターネットから切り離せ」というウクライナの要求をICANNが拒否 - GIGAZINE


プリンスCEOは、「私たちはロシア国内のCloudflareサービスをすべて終了することを何度か要求されました」と述べ、Cloudflareは政府や市民社会の専門家と議論したとのこと。その結果、Cloudflareは「ロシアにはより多くのインターネットアクセスが必要である」という結論に達し、今回の「ロシア国内でのサービス提供を続ける」という報告に至ったと語っています。

以下のグラフは、ロシア国内のネットワークから送信された、ヨーロッパの主要ニュースメディアに対するDNSクエリの量を示したもの。3月に入ってからDNSクエリが急増しており、多くのロシア国民が政府のプロパガンダを含む国内のニュースメディアではなく、海外のニュースメディアから正確な情報を知りたいと考えていることがうかがえます。


ロシア政府は過去にも何度か特定のCloudflareサービスを終了すると脅しており、無差別にロシア国内のCloudflareサービスを終了することはロシア国民にダメージを与えるものではあっても、ロシア政府にダメージを与えるものではないというのがプリンスCEOの見解です。「(Cloudflareサービスの遮断は)国外の情報へのアクセスを制限し、政府を批判するために私たちを盾にしてきた人々がより一層脆弱になるのです」「実際、ロシア政府はロシアにおけるCloudflareサービスの停止を祝うだろうと考えています」とプリンスCEOは述べ、Cloudflareサービスをロシア全体でシャットダウンするのは間違いだと主張しています。

なお、Cloudflareはここ数週間でロシアやベラルーシの政府機関・当局者・金融機関などに科された制裁を順守し、ロシアの金融機関やプロパガンダ関連組織、ロシアが一方的に独立を承認したドネツク人民共和国ルガンスク人民共和国の政府機関といった顧客との契約を終了しているとのことです。

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in ネットサービス, Posted by log1h_ik

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