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ウクライナがロシアをインターネットから締め出すために「.ru」ドメインの取り消しやIPアドレスの使用停止を要求


ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を食い止めるため、各国は協調してロシアへの各種制裁を試みており、国際銀行間通信協会(SWIFT)からの排除IntelやAMDによる半導体販売の停止Apple製品販売やアプリ配信の停止といった措置が相次いで講じられています。そんな中、ウクライナはロシアをインターネットから排除するため、ロシアの国別コードトップレベルドメインである「.ru」ドメインの取り消しや、IPv4およびIPv6の使用停止を要求しました。

Ukraine Pushes to Unplug Russia from the Internet - Rolling Stone
https://www.rollingstone.com/politics/politics-news/ukraine-icann-russia-internet-runet-disconnection-1314278/

Ukraine asks for Russia to be kicked off the internet | ZDNet
https://www.zdnet.com/article/ukraine-asks-for-russia-to-be-kicked-off-the-internet/

Security experts say Ukraine's request to shut down Russian domains could hurt civilians
https://www.cyberscoop.com/icann-ukraine-request-russia-domains-takedown/

ウクライナ侵攻におけるロシアのプロパガンダ拡散を防ぐため、FacebookなどのSNS各社がロシアのメディアに対する厳格なファクトチェックを行ったりNetflixがロシア国営放送の配信を拒否したり、YouTubeがロシア系ニュースメディアを排除したりといった試みを行っています。

YouTubeがロシア系ニュースメディア2社の排除を発表、IT各社も続々と排除 - GIGAZINE


さらにウクライナは、ドメイン名やIPアドレスの割当、Domain Name System(DNS)のルートサーバーシステム運用などを行う非営利団体のICANNに対し、ロシアの国別コードトップレベルドメインである「.ru」や「.рф」、ソ連に割り当てられた「.su」の取り消しを求めたことが報じられました。

ウクライナのICANN代表であるAndrii Nabok氏は、ICANNに送ったメールで「ロシアの残虐な戦争犯罪が可能になったのは、主にロシアのプロパガンダ機関が偽情報やヘイトスピーチを継続的に広め、暴力を助長し、ウクライナとの戦争に関する真実を隠ぺいするウェブサイトを利用したためです」と主張しており、「.ru」「.рф」「.su」といったドメインの取り消しに加え、同ドメインのSSL証明書を失効させ、ロシアのDNSルートサーバーをシャットダウンすることを要求しています。このメールは、ウクライナのデジタルトランスフォーメーション相も務めるミハイロ・フェドロフ副首相によって署名されています。

また、Nabok氏はIPv4やIPv6の配分や登録を管理する地域インターネットレジストリのうち、ヨーロッパ・中東・中央アジアを管轄するRIPE NCCに対して、すべてのロシア人がIPv4やIPv6を使用する権利を撤回し、DNSルートサーバーをブロックするよう求める要求も行ったとのこと。Nabok氏はメールの中で、「これらの措置はすべて、ユーザーが別のドメインから信頼できる情報を集め、プロパガンダや情報漏えいを防ぐために役立ちます」「このような措置を真剣に検討し、できるだけ早く実行してくださるようお願いします。私たちの国の人命を救うために、力を貸してください」と訴えています。

多くの国の指導者や政治家はウクライナとの連帯を表明して、ロシアへの制裁に協力していますが、今回のドメイン取り消しやIPアドレスの使用停止といった措置については、専門家から否定的な声が上がっています。DNSをはじめとする重要なインターネットインフラストラクチャーの運用サポートやセキュリティに関する国際団体・Packet Clearing House(PCH)のディレクターを務めるBill Woodcock氏は、「重要なインフラストラクチャーのオペレーターとして、私の(ウクライナに対する)同情とは関係なく、私は『やめろ』と言いたいです」と述べています。

Not yet posted to the ICANN correspondence page, but this is a heck of an ask on the part of #Ukraine. As a critical infrastructure operator, my inclination is to say "heck no" regardless of my sympathies.https://t.co/O1rtpjKEES

— Bill Woodcock (@woodyatpch)


DNSは単にウェブサイトの閲覧だけでなく、Slackや電子メールなどインターネット上で実行されるあらゆるものと関連しており、IPアドレスの使用停止やDNSサーバーのブロックは壊滅的な影響をもたらします。Woodcock氏は、これらの影響が軍や政治家よりも民間人に大きなダメージを与え、銀行の資格情報やパスワードなどを盗み取る中間者攻撃に対して脆弱になってしまうと指摘。

Taken together, these three actions would have the effect of making Russian civilian Internet users much more vulnerable to man-in-the-middle attacks, such as are used to compromise banking credentials and web site passwords.

— Bill Woodcock (@woodyatpch)


また、民間人がインターネットを使えなくなってしまえば、国際的なニュースや視点を得ることができなくなり、ロシア政府のプロパガンダしか届かなくなってしまうと主張し、厭戦(えんせん)気分を高めて政府の支持を減らすという目的にも合致しないと述べています。

In the short-term, this is a bad plan because it would cut the Russian man-on-the-street off from international news and perspectives, leaving them with only what the Russian government chooses to tell them. That's not a great way to decrease Russian public support for the war.

— Bill Woodcock (@woodyatpch)


これらのWoodcock氏のツイートに対しては、ICANNの元会長であるPaul Twomey氏も「私はこの分析に完全に同意します。プロトコル層をロシアで運営し続けることは、ウェブサイトがロシアの視聴者に多様な見解を伝えることを保証する最良の方法です」と述べています。

I completely agree with this analysis. Keeping the protocol layer operating in Russia is the best way to ensure that sites carrying diverse views to Russian audiences are effective.

— Paul Twomey (@PaulDTwomey)


Woodcock氏は海外メディアのRolling Stoneに対し、「この紛争に対するロシア国内の支持を減らす最善の方法は、ロシア国内の人々がこの紛争について自由にコミュニケーションできるようにすることです。ICANNには、他国の主権的な通信を管理する役割を担ってほしくはありません」と述べました。


ICANNのヨーロッパ委員会で主席管理者を務めるErich Schweighofer氏はメールの中で、ウクライナを支持しつつもドメイン取り消しなどの措置には応じられないと主張。「ロシアをインターネットから排除することは、民主的な変化のために市民社会を支援する役には立ちません。ICANNは中立的なプラットフォームであり、紛争に対して特定のポジションを取りませんが、それぞれの国が特定の国からのトラフィックをブロックするなどの行動を取ることを認めています」と述べています。

また、RIPE NCCは3月1日に発表した声明の中で、ロシアを名指しで挙げることはなかったものの、紛争に応じてIPアドレスの使用停止やDNSルートサーバーのブロックといった対策をとらない方針を明示しています。RIPE NCCは、「RIPE NCCは政治的な争いや国際的な紛争、戦争などに対して中立的な立場を維持することが極めて重要です。これにより、インターネットサービスを提供するすべての責任者が平等に扱われることが保証されています」と主張しました。

[ripe-list] RIPE NCC Executive Board Resolution on Provision of Critical Services ripe-list — RIPE Network Coordination Centre
https://www.ripe.net/ripe/mail/archives/ripe-list/2022-March/002462.html

・つづき
「ロシアをインターネットから切り離せ」というウクライナの要求をICANNが拒否 - GIGAZINE

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in ネットサービス, Posted by log1h_ik

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