ついに完全自律型トラクターが市場へ、無人トラクターが勝手に畑を耕してくれる様子はこんな感じ
宅配ドローンの開発やレジの自動化などロボットやAIの導入が各所で行われ、人間の仕事が奪われるのではないかという懸念が上がっています。一方で、農業においてはすでに人不足・後継者不足が深刻化しており、地域を養うために十分な食料を確保できなくなる可能性があります。そこで、農業機器メーカーのディア・アンド・カンパニーは、労働力不足を補うために完全自律型トラクターの「Autonomous 8R Tractor」を開発。デジタル見本市のCES 2022で発表しました。
At CES 2022, John Deere tractors break new ground with full autonomy - CNET
https://www.cnet.com/tech/mobile/at-ces-2022-john-deere-tractors-break-new-ground-with-full-autonomy/
John Deere takes a step into the future with first fully autonomous tractor
https://electrek.co/2022/01/04/john-deere-takes-a-step-into-the-future-with-first-fully-autonomous-tractor/
Autonomous 8R Tractorがどのようなものかは以下のムービーを見るとわかります。」
Autonomous 8R Tractor | John Deere Precision Ag - YouTube
農業にAutonomous 8R Tractorを導入したのは、アメリカ・ミネソタ州で農業を営む家系の4代目であるダグ・ニムズさん。
ニムズさんはとうもろこしと大豆を2000エーカー(約800万平方メートル)もの土地で育てています。
「私が農業を始めたとき、テクノロジーは存在せず、全て手動で行っていました」とニムズさんは語ります。
「初めてスマートフォンをスワイプして無人のトラクターを操作したとき、非常にわくわくしました」とニムズさん。
農地で走り、土を耕すトラクターの運転席は、確かに無人です。
農地の端までたどり着くと、トラクターは自動的にターン。「まるで私が行っているかのように耕起を行います」とニムズさんは述べました。
Autonomous 8R Tractorではスマートフォンでアプリを通してトラクターをモニタリングし、燃料の残量や、土地のどの範囲が耕起されたのか、残りはどのくらいかを確認できます。
実際のアプリ画面はこんな感じ。
これが運転席の様子。Autonomous 8R Tractorはゼロから新しく作ったのではなく、すでに市場で人気を得ている8R410トラクターに機能追加する形で作り出されました。前方と後方の両方に合計で12台のステレオカメラが設置されているほか、NVIDIAのGPUを搭載しており、スマートフォンからライブストリーミングで映像を見ることができます。
不足の事態が起こるとトラクターは停止し、アプリでアラートを鳴らします。トラクターに設置されたカメラから除去すべきものがあるのかどうかなどを確認可能で、アプリで全ての情報を得られるそうです。農業を行う場合、人材がトラクターに縛られてしまいますが、無人でトラクターを走らせることができれば農家は「トラクターの運転」以外のビジネスに取り掛かることが可能。これは農家にとっての大きなメリットと言えます。
また、夜間や悪天候の時でも農作業を進められるというのもメリット。
「自律走行型のトラクターを導入することで、これまでは時間がなくてできなかったことができています」「農業は伝統的な仕事ですが、挑戦して新しいものを受け入れることも可能です」とニムズさんは述べ、自律走行型トラクターによって生活が大きく変化したことを示しました。
ディア・アンド・カンパニーの最高技術責任者であるJahmy Hindman氏によると、時間通りに動き、質の高い仕事を完遂する完全自律型トラクターの開発には20年の月日を要したとのこと。また、現時点でAutonomous 8R TractorはLiDARなどを搭載していませんが、今後はLiDARやレーダー、超音波といった技術を使用してより困難な作業を行えるようにするべく、2021年8月にディア・アンド・カンパニーはテクノロジースタートアップのBear Flag Roboticsを買収しています。
なお、Autonomous 8R Tractorはレンタル式で農家に提供される予定ですが、記事作成時点で価格は未定となっています。
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