40年前に製造された中古トラクターの相場が高騰している理由とは？

by Ross Hyperformance Engines

さまざまな農業機械や貨物をけん引できるトラクターは、広大な農地を抱えるアメリカの農家にはなくてはならない車両です。そんなトラクターの中でも1970年代～1980年代に生産された古いモデルが、近年アメリカの中古トラクター市場において高値で取引されています。なぜ40年前という古いトラクターの人気が急激に高くなったのか、海外ニュースメディアのStarTribuneが解説しています。

For tech-weary Midwest farmers, 40-year-old tractors now a hot commodity - StarTribune.com
http://www.startribune.com/for-tech-weary-midwest-farmers-40-year-old-tractors-now-a-hot-commodity/566737082/

1978年から1982年にかけて製造されたディア・アンド・カンパニーのJohn Deere 4440やJohn Deere 4640は、アメリカ中西部の農業オークションで最も人気のあるトラクターです。例えば、稼働時間が少なく状態良好な1980年製John Deere 4440は、2019年4月に開催されたオークションで4万3500ドル(約470万円)の値がつきました。また、稼働時間が極めて少ない1979年製John Deere 4640は、2019年8月にミネソタ州で開かれた農業オークションで6万1000ドル(約670万円)で落札されました。600万円超えという落札価格は、最新型トラクターの購入費が15万ドル(約1600万円)を超えることを考えると、かなり安いといえます。

実際にミネソタ州で行われたJohn Deere 4640のオークションは、以下のムービーで見ることができます。

John Deere 4640 Tractor Sold for Record Price Today on Minnesota Farm Auction - YouTube


中古農機具ディーラーBigIron Auctionsの共同設立者であるマーク・ストック氏は「手入れもメンテナンスも行き届いている古いトラクターは素晴らしい資産です。トラクターは古くても農作業を行うのに十分な馬力を備えており、たとえ6万1000ドルという値段で手に入れたとしても、同等の馬力を持つ最新型トラクターの購入費に比べればお買い得です」と語っています。

また、古いトラクターのもう1つのの大きな魅力は「複雑な修理技術が不要である」ことだとストック氏は指摘し、「農家では、壊れたトラクターはその場で修理したり、近所の自動車整備士に修理を依頼することがほとんどです。しかし、高度な電子制御システムを導入した最新型のトラクターを修理するためには、コンピューターを使ったメーカー修理が必要になってしまいます」と述べました。

ミネソタ州北西部に広がる2000エーカー(約8.1km²)の農地でトウモロコシや小麦、大豆を栽培するクリス・フォーランド氏は、1979年に製造されたトラクターのJohn Deere 4440を2020年になってもなお使い続けています。

しかし、フォーランド氏のJohn Deere 4440は購入費が1万8000ドル(約200万円)で、モーターやトランスミッションが故障しても、最大で1万5000ドル(約160万円)から2万ドル(約220万円)で修理可能。「John Deere 4440はシンプルな構造なので自前で簡単に修理ができ、最新型を購入するよりもはるかに安く運用することができます」とフォーランド氏は語りました。

by farmyou

StarTribuneによると、1980年代に生産されたトラクターと2000年代に生産されたトラクターでは、ソフトウェア制御の有無という差はあるものの、性能やできることにそれほど違いはないとのこと。古いトラクターのディーゼルエンジンは現行のものより二酸化炭素排出量が多いという問題を抱えていますが、フォーランド氏は「農場の大豆から生産したバイオディーゼル燃料を使用することで二酸化炭素排出量を削減でき、エンジンの寿命を延ばすことができます」と述べています。

フォーランド氏は、「40年前の農機具を使っているにもかかわらず、自身の農場におけるトウモロコシの収穫量は2019年のミネソタ州の平均を上回りました」「私たちがトラクターを使う主な理由は、お金を稼ぐためです。収穫コストを削減して収益性を高めるために、私たちは古いトラクターを使うのです」と語りました。