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小型ロボットを農業に導入して農業の効率化を達成する試みが進行中

by Victor Camilo

農業はどちらかというとアナログな産業分野であるように思われがちですが、ロボットを用いた野菜工場が日本で作られるなど、ロボットなどの導入も進んでいます。そんな中、イギリスのスタートアップは「小型ロボットを農業に導入してより効率的な農業を実現する」ことを目標に、開発・研究を行っています。

‘We'll have space bots with lasers, killing plants’: the rise of the robot farmer | Environment | The Guardian
https://www.theguardian.com/environment/2018/oct/20/space-robots-lasers-rise-robot-farmer

イギリス南部のハンプシャーには、Small Robot Companyという農業用小型ロボットを開発するスタートアップと農家が共同で所有する農場があります。その農場では、「レイチェル」と名付けられた宇宙探査ロボットのような外見をした小型ロボットが走り回っています。

オレンジ色の外見をしたレイチェルは後部にスマートフォンが設置されており、4つのUSBポートやGPS受信機、自身の進む方向をレーザーで制御するシステムが搭載されているとのことで、総製作費は2000ポンド(約29万円)。畑を走り回るレイチェルは3秒ごとに周囲の植物や土壌の写真を撮影し、畑にする土地全体がどのような状況になっているのかを把握するマップを作成します。


ジェイミー・バトラー氏は農場の所有者であり、小麦を栽培しています。小麦は天候に左右されやすい不安定な作物であるため、農家としての収入は安定的ではない模様。そのため、バトラー氏は牛の飼育や土地の一部をフライフィッシングの釣りスポットとして貸し出すといったサイドビジネスがなければ、家族を養っていけないと考えています。バトラー氏によると、レイチェルのような小型ロボットを農業の現場に導入することは農業の形を変え、将来の食料生産を大きく改善するかもしれないとのこと。「レイチェルは革命的です」とバトラー氏は語っています。

レイチェルを製作したSmall Robot Companyは、土地のマッピングだけでなく種植えや作物の世話、除草や収穫といった農作物の栽培過程の全てをロボットが処理できるようになると述べています。今のところレイチェルは農業の最初の段階しか行うことができませんが、今後数年でそれ以外の作業も行うことが可能になる見込みです。


Small Robot Companyの共同創設者であるベン・スコット=ロビンソン氏は農業分野に新たに参入してきた人物であり、実際に農家の人々と関わることで新たな発見があったとのこと。「農業に携わる人々は、新たなテクノロジーの導入に対し及び腰になると思っていました。確かにその傾向があるものの、バトラー氏のように新たな技術を取り入れる必要性を理解している人がいます」と、スコット=ロビンソン氏は語りました。

小規模な農業に従事する人々がSmall Robot Companyの小型ロボットを導入した農法を行えば、コンパクトな規模の農業がより効率的に行えるようになるとスコット=ロビンソン氏らは考えています。農業のコンパクト化によって農作物あたりの農薬使用量を減らすことが可能で、農業に必要なコストを60%削減し、農業による収入を40%も増加させることができるとのこと。食材にこだわるレストランなどでは、店舗で使用する分だけの農作物を収穫するために、レイチェルのような小型ロボットを利用した小規模農業が可能になります。

by Brian Evans

また、環境の面でも小型ロボットを使用した小規模農業にはメリットがあるとのこと。大規模な農業には農薬の流出や洪水を悪化させる土壌浸食など、環境に与える悪影響が付きものです。また、植物の受粉に大きな役割を果たすミツバチが農薬の影響で減少するなど、将来の農業に対しての不安材料も出ています。「農家の人々は毎日農場で働く中で、ミツバチの減少や受粉率の低下といった現象を身を持って感じています。多くの農業従事者は、次世代にも農業を続けて欲しいという願いを持っているのです」と、スコット=ロビンソン氏は語っています。

すでに乳牛を飼育する現場には多くのロボットが導入されており、鶏に餌をやるシステムや鶏舎を動かして定期的に運動させるシステムも自動化されています。作物栽培の現場でも、レタスやイチゴの収穫にアメリカではロボットが導入されていたり、フランスではブドウの枝切りや除草などにロボットが使われていたりするなど、世界各地で食料生産の現場にロボット化の波が押し寄せています。

Small Robot Companyのオフィスはハンプシャー南部のポーツマスにあり、2つの長いデスクにはケーブルや回路基板の他、3Dプリンターで製造された部品などが散らばっています。スコット=ロビンソン氏は2016年まで英国陸地測量部に勤務して、ドローンとAIを組み合わせたマッピングサービスの開発を行っていたそうです。ある日、ラジオの番組で耳にした農業にロボットを導入するという話題に触発されたスコット=ロビンソン氏は、小麦の栽培に焦点を当てた小型ロボット開発のスタートアップを立ち上げました。

by Neil Howard

「小麦は世界で最も多く栽培されている作物の一つです。環境による悪影響を受けやすい作物でもありますが、栽培システムを改善できれば世界の食料生産に大きく寄与できます」とスコット=ロビンソン氏は語っており、小麦で培ったノウハウを大麦やトウモロコシといった他の作物に応用することも容易だとしています。

Small Robot Companyは記事作成時点で8人の従業員しかいない、小規模な企業です。開発する小型ロボットは中小規模の農家にとって大きな利益をもたらすものであり、理論的には大規模農業を行う農家との競争格差を減らすものになります。スタートアップが大企業に売却されるとその方針が変わってしまうこともありますが、スコット=ロビンソン氏は「私の最終的な目標はスタートアップの売却ではありません」と述べ、その可能性を否定しました。

by Lucas Gillispie

ハーパー・アダムズ大学でロボット農業について研究しているサイモン・ブラックモア教授は、実に30年以上にわたって農業の自動化について研究してきたとのこと。ブラックモア氏は、農業の世界には20世紀から続く「規模が大きければ大きいほどよく、大量の農薬を使って大量の農作物を収穫する工業的な農業が効果的だ」という考えについて、非常に無駄が多いと主張します。

「農業用トラクターのメーカーが農業用小型ロボットの開発を行わないのは、企業の中に『金属を売っている』という考えがあるためです。次のマシンは以前のよりも大型にしようという意志が強く、それに逆行する小型ロボットの開発・販売に焦点が向きません」とブラックモア氏は述べ、農業用小型ロボットの開発は過去の事例にとらわれることのない、小規模なスタートアップから生まれると予測しているとのこと。

多くの人々は、農業用ロボットは大規模な農家にメリットをもたらすものであり、小規模な農家を駆逐する可能性があると考えているとのこと。しかし、ブラックモア氏によれば事実はその思い込みとは全く逆であり、「小型ロボットは小規模な農家がより効率的な農業を行えるようにする」と語っています。ブラックモア氏は800種類もの雑草を識別し、レーザーで除草を行うという「除草ロボット」の開発に注力しており、除草ロボットの導入によって農薬による除草が過去のものになると考えています。「除草ロボットは今日からでも農場に投入可能です」とブラックモア氏は語り、2019年の春にはイギリスの農場で使用され始めると語りました。

by Michael W. May

ブラックモア氏が開発する除草ロボットに関与している企業が、「Earth Rover」というスタートアップです。Earth Roverという名前は火星着陸後に火星表面を走行するマーズ・ローバー(Mars Rover)から取ったもので、ブロッコリーやレタス、ニンジンなどの栽培にマーズ・ローバーのアイデアを取り入れようとしています。

Earth RoverのCOOを務めるポール・ハーター氏は、「宇宙探査ロボットはシンプルで頑強、そして壊れにくいものです」と語り、農地を走り回る農業用小型ロボットには宇宙開発に使われるノウハウが転用できると考えたそうです。宇宙探査ロボットに着想を得たEarth Roverの農業用ロボットは2019年から農場に導入され始め、2021年にはブロッコリーの収穫を自動で行う予定になっているとのこと。

「除草と収穫はブロッコリー栽培における主要な労働コストです」とハーター氏は述べ、農業用小型ロボットを利用することで農家の労働力不足を解消できるとしています。今後も農業用小型ロボットが農場に導入されることで、将来の食料生産に占めるロボットの割合が飛躍的に高まるかもしれません。

by NASA Johnson

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in メモ,   ハードウェア, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article An attempt to introduce small robots int….