ハードウェア

LEDとミストを自動制御して水使用量95%カットを実現する都会の植物工場「AeroFarms」


水耕栽培を利用して植物を工場で育てる「植物工場」は、都会でも新鮮な野菜を安全かつコンスタントに収穫できるため盛んに研究されています。そんな中、ミスト(霧)を根に吹き付けることで、水耕栽培のように大量の水を使うことなく植物を育てることのできる植物工場「AeroFarms」の新しい植物栽培方法が、21世紀に深刻化する水不足をも解決できる手法として注目を集めています。

AeroFarms - An environmental champion, AeroFarms is leading the way to address our global food crisis by growing flavorful, healthy leafy greens in a sustainable and socially responsible way.
http://aerofarms.com/

水使用量を95%もカットできるAeroFarmsの植物工場がどのような仕組みなのかは以下のムービーを見ればよく分かります。

This Farm of the Future Uses No Soil and 95% Less Water - YouTube


アメリカ・ニューヨーク州のニュージャージのとある街。


一見、工場のような建物の中では……


巨大な植物プランターが縦方向に積み上げられています。


LEDのライトに照らされる野菜。


これがAeroFarmsの植物工場。


垂直方向にプランターを積み上げることから「Vertical Farming(垂直栽培)」とも呼ばれるスタイルです。


AeroFarmsのデイビッド・ローゼンバーグCEOは「私たちの使命は、大規模な農園を都市の中に作ることです。それも世界中の町にです」と語ります。


都会に作れる植物工場では、新鮮で味が良く、栄養価の高い野菜を栽培することができるとのこと。


積み重ねられた植物プランターの高さは30フィート(約9メートル)


各プランターにはファンが付いています。


太陽光の代わりに光合成をうながすのはLED。


AeroFarmsの植物工場の大きな特徴は、栽培する植物にミストを散布して水分を与えるところ。土を使わない点は一般的な水耕栽培と同じですが、根を水に浸すわけではないため使う水が極少量で良いという利点があります。


プラスチックをリサイクルしできた布を水で濡らして……


この上に育てる植物の種をまきます。根は布の下に伸びますが、根が生える空間に養分を含んだミストを散布する仕組みです。


ローゼンバーグCEOによると太陽光なしでも高い栄養価と味を保って野菜を育てることが可能。


植物の生長に必要のない黄色の光をカットして、赤色を中心とした複数の波長の光を組み合わせることで、電力エネルギーを下げつつ収穫量を上げられます。


なお、光の調整は全自動。室内なのでもちろん天候に左右される心配はありません。


自動化されたライティングシステムによって、収穫までの時間は一般的な農場で育てるときの半分まで短くできるとのこと。しかも、形や品質が一定の野菜をコンスタントに収穫できるというわけです。


人口が増えることで地球規模で発生している飢餓の問題は、農作物の収穫率を向上させることで解決できます。


水質汚染の原因の70%は農場での排水というデータがあるとのこと。また、飲める水の70%が農業用水として使われており、農業は水の危機を引き起こす原因となっています。


過去40年のうちに農作物を育てられる土壌の3分の1が消失したというデータもあり、世界規模で農業用地の確保が困難になっているという問題もあります。


最初に「Vertical Farming(垂直農園)」の概念を提唱したコロンビア大学のディクソン・デスポミエ教授は、垂直農園によって農地不足や水不足、食糧不足の問題を解決できると考えました。


都会の真ん中で農作物を収穫できる垂直農園では、農地不足を補うだけでなく、新鮮な野菜を消費地で作れるというメリットがあります。


収穫した農作物を消費地に届ける時間やコストが必要ない上に、輸送にかかるエネルギーや温室効果ガスの排出も不要になるため、環境にも良いというわけです。


AeroFarmsは、今まで以上に巨大な植物工場の建設を計画中。


サッカーグラウンドの大きさの敷地に、こんな感じで垂直にプランターをぎっしりと設置する予定です。


外観はこんな感じ。都会にもなじむスタイリッシュな建物になるようです。


AeroFarmsの垂直農園システムでは、一般的な農場に比べて水の量を95%も抑制でき、なおかつ収穫量を75%も高められるとしています。農地不足・水不足・食糧危機・環境問題を一気に解決する可能性を秘めた、垂直農園システムが世界中に普及・定着するのか要注目です。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
日本から世界初のロボットが農業を行う「自動野菜工場」が誕生へ - GIGAZINE

ベジタス「野菜工場」亀岡プラントで野菜の安定供給の次世代スタイルを見た - GIGAZINE

ミニ植物工場を店舗内に備えた「サブウェイ野菜ラボグランフロント大阪店」 - GIGAZINE

1日1500円で稼働する超ミニサイズ「野菜工場」、約40日で野菜が完成 - GIGAZINE

種まきから水やりまですべて全自動でできるオープンソースなDIY農作物育成マシン「FarmBot」 - GIGAZINE

森をとてつもないスピードで成長させるオープンソースプロジェクト「Afforestt」 - GIGAZINE

in ハードウェア,   生き物,   動画, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.