天の川銀河の中心で正体不明の電波が観測される
広大な宇宙には多くの謎が残されており、望遠鏡や探査機による観測・分析が進んでいます。そんな中、オーストラリア国立望遠鏡機構が管理する電波望遠鏡「オーストラリア・スクエアキロメートルアレイ・パスファインダー (ASKAP)」が天の川銀河の中心付近で正体不明の電波を観測しました。
[2109.00652] Discovery of ASKAP J173608.2-321635 as a Highly-Polarized Transient Point Source with the Australian SKA Pathfinder
https://arxiv.org/abs/2109.00652
Strange, repeating radio signal near the center of the Milky Way has scientists stumped | Live Science
https://www.livescience.com/strange-radio-source-milky-way-center
ASKAPが2019年4月~2020年8月にかけて実施した天の川銀河の中心付近の観測で、特定の位置から「数週間にわたって発せられる強い電波」が計13回にわたって観測されました。観測チームはこの電波を「ASKAP J173608.2−321635」と名付け、その正体を検証しました。
これまでの宇宙観測によって、定期的に強い電波やX線を発つ「パルサー」と呼ばれる天体が発見されています。しかし、「ASKAP J173608.2−321635」は不規則な間隔で電波を発していることや、X線を発していないことから、パルサーには当てはまりません。
他に、電波を発する天体としては強い磁場を持つ「マグネター」と呼ばれる天体も存在しています。しかし、マグネターは電波を放出する際に非常に強力なX線を放つことから、「ASKAP J173608.2−321635」はマグネターにも当てはまりません。
観測チームは上記のことから、「ASKAP J173608.2−321635」が銀河の中で不規則な電波を発する「galactic center radio transient(GCRT)」の1つではないかと考えています。観測チームによると、GCRTは記事作成時点までに3個しか発見されておらず、そのすべてが「ASKAP J173608.2−321635」よりも電波を発する時間が短いことが知られているとのこと。このため、観測チームは「『ASKAP J173608.2−321635』がGCRTに関する新たな知見をもたらす可能性があります」と述べて新たな発見に期待を寄せています。
なお、今回「ASKAP J173608.2−321635」を発見したASKAPでは、過去に専門家に「現状の理論では説明できない」と言わしめた謎の物体が見つかっています。
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