サイエンス

月と水は太陽系外の天体が地球に衝突することで生まれたと研究で示される

by Pixabay

地球は水が豊富に存在するという点が太陽系の中でも異例で、この水のおかげで生命は進化してきました。新たな研究では、地球に存在する水の起源が、地球上の生命を支えるもう1つの軸である「月」の起源と関係していることが初めて示されました。いずれも太陽系外からやってきた天体が地球に衝突したことから生まれたとのことです。

Molybdenum isotopic evidence for the late accretion of outer Solar System material to Earth | Nature Astronomy
https://www.nature.com/articles/s41550-019-0779-y

Formation of the moon brought water to Earth
https://phys.org/news/2019-05-formation-moon-brought-earth.html

地球の衛星である月がどのように形成されたかを説明する学説は複数あり、その1つに「月は原始地球と火星ほどの大きさの天体が衝突した結果形成された」とするジャイアント・インパクト説があります。ジャイアント・インパクト説において、地球に衝突した仮想の天体はテイアと呼ばれ、これまで「テイアは太陽系内の天体だ」と考えられていたところ、ヴェストファーレン・ヴィルヘルム大学の研究者らが「テイアは太陽系外からやってきた」ということを新たな論文で示しました。

一方、地球を地球たらしめているもう1つの事実が、「乾いた」太陽系内に存在するにも関わらず、地球には豊富な水が存在するいうことです。これまでの研究で、太陽系は水を含まない「乾いた」物質で構成されていることが示されています。水や炭化水素などを多く含む「炭素質物質」は太陽系外の物質であることから、地球に水をもたらしたのは太陽系外の炭素質物質であるという可能性も主張されてきました。一方で、炭素質物質がいつどのようにして地球にやってきたのかは明らかになっていませんでした。

by Pixabay

今回研究を行ったGerrit Budde氏は「この問いに答えるため、私たちはモリブデンの同位体を使いました」「モリブデンの同位体は炭素質物質とそうでないものを明白に識別できるようにする、物質が太陽系外からきたのか太陽系内のものなのかを判別する『物質のDNA』です」と語っています。

分析の結果、地球に存在するモリブデンのいくつかは太陽系外に由来するということが示されました。また地球に現存するモリブデンはコアの外側に位置するマントルに存在することから、研究者は地球の形成後期にモリブデンが太陽系外からやってきたと結論付けています。地球の形成後期に炭素質物質が太陽系外からやってきたことを示す研究は、これが初めてとのこと。

さらに研究者は、マントルに含まれるモリブデンの多くが44億年前に地球に衝突し、月を作ることになったテイアに由来することも突き止めました。これはつまり、テイアもまた、太陽系外からやってきた天体であることを意味します。この衝突により、地球全体を覆うだけの豊富な水が得られることになったと科学者は説明。「月の形成と、水の起源を初めて結び付けたという点で私たちのアプローチはユニークです。端的にいえば、月がなければ地球に生命は誕生しなかったのかもしれないのです」と研究に携わった一人であるThorsten Kleine氏は述べました。

by Murilo Folgosi

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
月の資源を採掘するのは現実的なことなのか? - GIGAZINE

地球から酸素が月へと送り込まれていると判明 - GIGAZINE

月を地球の植民地にすればテクノロジーが発展し膨大なリソースが得られる - GIGAZINE

研究者は「月面基地」をどのように建設しようと考えているのか? - GIGAZINE

まるで「第二の月」のように地球を回る天体の素性が明らかにされる - GIGAZINE

「裏側から見た月全体と地球」の写真、中国の月探査用小型衛星が初撮影 - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.