サイエンス

木星と同じサイズで10分の1の重さしかないわたあめのような惑星「スーパーパフ惑星」が見つかる

by Hubble ESA

おとめ座の方角に地球から約212光年離れた位置にある恒星「WASP-107」を公転する太陽系外惑星「WASP-107b」は、木星や土星と同じ巨大ガス惑星です。巨大ガス惑星はガスで形成された「外層(エンベロープ)」と固体コアからなる「中心核」で構成されているのですが、WASP-107bは非常に軽いため、木星と同サイズであるにもかかわらず質量はわずか10分の1程度の「スーパーパフ惑星」であることが明らかになっています。

WASP-107b's Density Is Even Lower: A Case Study for the Physics of Planetary Gas Envelope Accretion and Orbital Migration - IOPscience
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-3881/abcd3c

A ‘Super-Puff’ Planet Like No Other – As Big as Jupiter but 10 Times Lighter
https://scitechdaily.com/a-super-puff-planet-like-no-other-as-big-as-jupiter-but-10-times-lighter/

2021年1月18日、天文学分野の学術誌であるアストロノミカルジャーナル上で、WASP-107bの内部構造に関する新しい分析内容をまとめた論文が発表されました。カナダ、アメリカ、ドイツ、日本の研究者らにより執筆された同論文は、巨大ガス惑星の形成について新しい知見をもたらすものであるとのこと。

論文の筆頭著者はモントリオール大学の太陽系外惑星研究所(iREx)の学生であるCaroline Piaulet氏。同氏はモントリオール大学の天体物理学教授であるBjörn Benneke氏が率いる研究チームの一員であり、2019年にはハビタブルゾーンに存在する太陽系外惑星で初めて水の検出に成功しています。

論文の著者のひとりであるBenneke氏は、「この論文は巨大ガス惑星がどのように形成され、成長することができるかというまさに天体形成の基礎部分に取り組んだものです。これまで考えられてきたよりもはるかに小さな中心核と、大量のガスエンベロープで惑星を形成することができるという具体的な証拠を提示しています」と語りました。


恒星・WASP-107を公転するWASP-107bが初めて検出されたのは2017年のこと。WASP-107とWASP-107bの距離は、地球と太陽の距離の16分の1程度であり、「恒星との距離が非常に近い惑星」であることが判明しています。それでいて、WASP-107bは木星と同程度のサイズを持っており、質量が木星の10分の1と非常に軽いものであると研究チームは結論付けました。つまり、WASP-107bは既知の中でも「最も密度の低い太陽系外惑星」のひとつであるということになります。

WASP-107bのような低密度の物体が惑星を形成する場合、惑星の中心核部分は地球の中心核の質量の4倍程度で済むと研究チームは結論づけました。通常、巨大ガス惑星は濃いガスと塵からなる原始惑星系円盤により形成され、円盤が散逸する前の段階で大量のガスを蓄積するため、少なくとも地球の10倍の質量の中心核が必要とされてきました。巨大な中心核がなければ巨大ガス惑星はガスエンベロープを形成・保持することはできないと考えられてきたため、中心核の質量は非常に大きなものが必要とされてきたわけです。

一方、最新の研究でPiaulet氏ら研究チームはWASP-107bの中心核が従来よりも軽いものであると結論づけています。これにより、WASP-107bの質量の85%以上をガスエンベロープ部分が占めているという計算になるとのこと。なお、WASP-107bと同程度の質量を持つ海王星の場合、ガスエンベロープが質量全体に占める割合は5~15%程度であるため、いかにWASP-107bが低密度の惑星であるかがわかります。

Piaulet氏は「WASP-107bについて多くの疑問がありました。どうしてこのような低密度の惑星が形成されるのか?そして、他の惑星がWASP-107bに近づいた場合、どのようにしてこの巨大なガスエンベロープを維持しているのか?などです。こういった謎を解き明かすために、WASP-107bの徹底的な分析を行うことに決めました」と語り、WASP-107bの分析を行った理由について述べています。


マギル大学の教授でありiRExのメンバーでもあるイブ・リー氏は、WASP-107bのような低密度・軽質量の「スーパーパフ惑星」の専門家です。同氏は「WASP-107bの場合、最も妥当なシナリオは惑星が恒星から遠く離れた位置で形成され、原始惑星系円盤内のガスが十分に冷たいため、ガスの降着が非常に素早く起きた可能性があるというものです。惑星は後に、原始惑星系円盤または星系内の他の惑星と相互作用しながら現在の位置へと移動していったのかもしれません」と語っています。

WASP-107bについてはまだまだ多くの謎が存在します。WASP-107bには非常に少ないメタンが含まれていることが明らかになっていますが、通常この種のガス惑星には多くのメタンが含まれているはずです。そのため、Piaulet氏は「我々は現在、ハッブル宇宙望遠鏡の観測データを今回の論文で発表した『新しい質量データ』をベースに再分析することで、結果がどのように変化するかを確認し、どのようなメカニズムがメタンの含有量に影響を及ぼしているのかを調査します」と語りました。

また、2021年に打ち上げ予定のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を用い、WASP-107bの大気構成についてより正確な分析を行うことが予定されています。

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in サイエンス, Posted by logu_ii

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