サイエンス

「ダークマター星」を見つけたかもしれないと天文学者が報告


ダークマターは宇宙の質量の80%を占めているともいわれている謎の物質で、その正体を含めて全てが謎に包まれています。以前に観測されていながらも、ブラックホールだろうと片付けられていた天体が、実はダークマターの候補でできた星ではないかと提唱する論文が発表されました。

[2304.09140] A Sun-like star orbiting a boson star
https://arxiv.org/abs/2304.09140

Strange star system may hold first evidence of an ultra-rare 'dark matter star | Live Science
https://www.livescience.com/space/black-holes/strange-star-system-may-hold-first-evidence-of-an-ultra-rare-dark-matter-star


This Star Might be Orbiting a Strange "Boson Star" - Universe Today
https://www.universetoday.com/161290/this-star-might-be-orbiting-a-strange-boson-star/

問題の星は、欧州宇宙機関(ESA)のガイア衛星が観測した特異な星系にあります。この星系にある恒星は、重さが太陽より少し軽い0.93太陽質量で、構成する物質も太陽とほとんど同じという、典型的なG型矮星(わいせい)です。

しかし、その星には質量が約10倍もある謎の伴星がありました。恒星と伴星の間の距離はちょうど太陽と火星と同じくらいの1.4天文単位で、188日ごとに公転しています。ほとんどの天文学者は、謎の伴星がまったく放射線を発しない暗黒の星である点から、その天体の正体はブラックホールであると考えており、この星系はブラックホールの周りを恒星が周回する単純なケースだろうというのが大方の見方でした。

しかし、この説には不可解な点があります。それは、ブラックホールは巨大な星が死んでできるものであるため、問題の星系ができるには、太陽のような星とそれよりさらに巨大な星が同時に誕生する必要があるという点です。理論的に絶対あり得ないというわけではありませんが、そうした天体同士が何百万年にもわたってお互いの目と鼻の先で軌道を維持しつづけるというシナリオを実現させるには、並外れた微調整が必要なので、他の可能性を考慮する必要があると主張されています。


今回、2023年4月18日にプレプリントサーバー・arXivで発表された論文の中で、研究者らは「謎の天体は、実はダークマターの塊かもしれない」との理論に挑戦しました。

ダークマターとは、銀河の質量の大部分を占める目に見えない物質で、正体はまだ分かっていません。多くの理論モデルでは、ダークマターは銀河中に均等に分布しているとされていますが、ダークマターが集まって塊になるとするモデルもあります。

そうした説のひとつが、「ダークマターは新しい種類のボソンではないか」という仮説です。ボソンとは自然界の力を担う粒子で、例えば光子は電磁気力を担うボソンです。素粒子物理学の標準モデルで知られているボソンは限られていますが、原理的にはもっと多くの種類のボソンが宇宙に存在することも有り得るとされています。


もしボソン・ダークマターがあるとすると、それは集まって大きな塊を形成し、ひとつの星系ほどのサイズになることもあれば一般的な天体サイズになることもあります。そのような天体は放射線を全く放出しないので、観測者からはブラックホールのように見えます。また、目に見えないので観測するにはブラックホールと同様に他の天体との相互作用を手がかりにするしかありません。

研究者らによると、ボソン・ダークマターの存在を仮定し、問題の星系にあるブラックホールらしき天体をボソン星に置き換えれば、観測データの全てを説明できるとのこと。

実際のところ、今回の発表によりボソン星が発見された可能性は決して高くありませんが、研究者らは追加の観測の必要性を強く主張しています。なぜなら、謎の天体の正体がボソン星でなかったとしても、恒星が極めてコンパクトかつ高密度な物体の周りを回っているのは事実なので、さらなる調査によりアインシュタインの一般相対性理論についての理解をさらに深めることができるからです。また、もしボソン星ならそのようなエキゾチックな天体の完璧なモデルケースになるため、ダークマターの正体解明につながることも期待できます。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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