サイエンス

深宇宙から16日周期で届く謎の信号の正体とは?

by European Southern Observatory

地球から約5億光年離れた宇宙のかなたから、16.35日周期で謎の電波が届いていることが、最新の観測データから判明しました。この種の電波が周期的に届くのはこれが最初の事例であることから、天文学者らは10年以上にわたり謎を深めてきた未知の天体現象の謎が解明されることに期待を寄せています。

Periodic activity from a fast radio burst source
(PDFファイル)https://arxiv.org/pdf/2001.10275.pdf

This is the first fast radio burst known to have a steady beat | Science News
https://www.sciencenews.org/article/first-fast-radio-burst-steady-beat

Something in Deep Space Is Sending Signals to Earth in Steady 16-Day Cycles - VICE
https://www.vice.com/en_us/article/wxexwz/something-in-deep-space-is-sending-signals-to-earth-in-steady-16-day-cycles

高速電波バースト(FRB)」とは、数千分の1秒という非常に短い間に、電波が突発的に放射される未知の天体現象です。これまでも、FRBが発生している場所が特定されることはあったものの、その正体については未解明でした。

by claudioventrella

そんな中、トロント大学の天体物理学者ドンジ・リー氏らの観測チームは、カナダ水素強度マッピング実験望遠鏡(CHIME)を使用中に、周期的に発生しているFRBが存在すること発見しました。観測チームが2018年9月~2019年10月のCHIMEの観測データを詳しく解析したところ、そのFRBの発生源は4日間にわたり1時間に1~2回ほど爆発的に電波を発生させた後、12日間の沈黙を経て再び信号を発生させており、合計で16日間の周期性を持っていたとのことです。

また、観測チームはFRBの発生源を突き止めることにも成功。地球から5億光年離れた「SDSS J015800.28 + 654253.0」という渦巻銀河の星形成領域から届いたFRBは、「FRB 180916.J0158 + 65(略称:FRB 180916)」と名付けられました。5億光年というと途方もなく遠く離れた場所であるかのように感じられますが、2007年に最初のFRBが観測されて以来、最も地球に近い場所で見つかったFRBだとのことです。

リー氏らの観測チームは論文の中で、「FRB 180916は、あらゆるFRB発生源の中で周期性が認められた最初の事例です。16.35日周期で繰り返し観測されたFRB 180916は、FRBの正体を知る上で重要な手がかりとなるでしょう」と述べました。

観測チームによると、FRBの正体は「2つの巨大な質量を持つ天体の連星」である可能性があるとのこと。例えば、あるFRBの発生源が、ブラックホールの周囲を16日周期で回転している場合、16日周期で電波が地球に向けて発せられる場合があります。また、超高密度のコアを持つ中性子星が放つ爆発的な電波が、ペアとなるもうひとつの恒星から発せられる恒星風により、16日周期で増幅または減衰させられていることも考えられます。

by pingnews.com

また、リー氏らは「FRBの発生源は回転または歳差運動(回転軸のブレ)により周期的に電波を発生させる、単一の天体である可能性も排除しきれません」と指摘しています。この説で最も有力なのは、マグネターと呼ばれる、極端に強い磁場を持つ中性子星です。マグネターも磁場の変動により膨大な電波を発生させるので、FRBの発生源の候補となります。ただし、マグネターは通常12秒以下に1回転という高速回転をしていると考えられるため、16日間という周期性を説明するのは困難だとのことです。

2007年に最初のFRBを発見したウェストバージニア大学の天文学者ダンカン・ロリマー氏は、「いずれにせよ、今回の発見は非常に重要なものです。周期的なFRBの正体に迫ることで、示唆に富んだ成果を得ることができるでしょう」と述べて、将来の観測に期待感をのぞかせました。リー氏らの観測チームは今後、FRB 180916のさらなる観測を続けるともに、既知のFRBとの比較を行い、FRBの発生源の特定を目指していく考えだとのことです。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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