サイエンス

「現状の理論では説明できない」と専門家が興奮する宇宙に浮かぶ正体不明の「ORC」とは?


宇宙にはまだ多くの謎が残されていますが、その1つが、特殊な電波望遠鏡でしか観測できない、夜空に浮かぶ「幽霊のような奇妙なサークル」である「ORC」です。ORCがどのように発見され、何がどう奇妙なのかについて、西シドニー大学理学部教授であり宇宙の進化地図(EMU)プロジェクトの立ち上げ人であるレイ・ノリス氏が説明しています。

[2006.14805] Unexpected Circular Radio Objects at High Galactic Latitude
https://arxiv.org/abs/2006.14805


'WTF?': newly discovered ghostly circles in the sky can't be explained by current theories, and astronomers are excited
https://theconversation.com/wtf-newly-discovered-ghostly-circles-in-the-sky-cant-be-explained-by-current-theories-and-astronomers-are-excited-142812

2019年、天文学者のアンナ・カピンスカ氏は電波天文データを閲覧しているときに、既存のデータに合致しない奇妙な物体があることに気づきました。カピンスカ氏によって「WTF」(何だこれ)とラベル付けされた物体は、電波放射からなるサークルで、煙のようにぼんやりした状態で宇宙に浮かんでいたとのこと。数日後、カピンスカ氏の同僚であるエミル・レンツ氏も同様の物質を発見しました。


その後、カピンスカ氏とレンツ氏はオーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)のASKAP望遠鏡を使用して宇宙の電波源を調査するEMUプロジェクトの一環として調査を続けました。EMUは既存の望遠鏡では捉えられなかった宇宙をASKAP望遠鏡で大規模に調査する、ノリス氏によって2009年に提案されたプロジェクトです。EMUの創設当初から「研究者の予測しないものが見つかるだろう」と考えられていましたが、「こんなにもすぐに、我々の予想を超えた『予測できないもの』が見つかるとは思っていませんでした」とノリス氏は述べています。

EMUの調査によって、その後、同様の物体はいくつか発見されました。カピンスカ氏が「WTF」と読んだ一連の物体は、EMUによって「Odd Radio Circles(奇妙な電波サークル/ORC)」と名付けられたとのこと。


ORCはソフトウェアエラーによって生成された人工的なイメージではないかとも疑われましたが、他の電波望遠鏡を使って調査を進めることで、「現実に存在する物体である」ということがはっきりしたそうです。光学望遠鏡でORCのある位置を撮影しても何も写っていないことから、「ORCはおそらく電波の雲によって形成されている」とみられています。しかしORCが存在する場所は「地球から数光年先から数百万光年先」とまだはっきりしておらず、一体それが何であるのかも2020年の時点では全くわかっていないとノリス氏は述べました。

ORCについて具体的なことは全く判明していない一方で、いくつかの可能性は排除されています。まず、ORCが存在する場所は銀河から離れているため、超新星爆発の残骸である可能性は除かれるとのこと。また、星形成のバーストを受けて銀河でまれに電波放射の輪が見られることがありますが、星形成の基礎となる銀河がないため、これも否定されています。恒星や銀河の発する光が重力の影響で明るく見えるアインシュタインリングの可能性も指摘されましたが、アインシュタインリングとしては対称性を持ちすぎているとしてノリス氏は否定しました。

オーストラリア天文学会で発表される予定の論文で、ノリス氏はORCのさまざまな正体について検討し、いずれの可能性も否定することで、ORCが「未知の何か」であると結論付けています。その上で、ORCが高速電波バーストのような「存在する可能性はあるが、まだ観測されてないもの」と関係する可能性を調査すべきだとしています。

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by Penn State

また別の可能性として、ORCがワームホール喉(throat)と呼ばれるものだという指摘もあります

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これまでに発見されたORCから、宇宙には約1000個のORCがあると推定されています。ORCは見つけることが非常に難しいとのことですが、宇宙の理解を大きく変える可能性があるとして、研究者らによって調査が継続される予定です。

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in サイエンス, Posted by logq_fa

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