メスのタコが交尾を求めるオスに貝をぶつけて追っ払ったという報告
貝殻や昆布などの物を噴射してタコが他のタコを追い払う様子が、シドニー大学やアラスカパシフィック大学などの研究チームにより観察されました。
In the Line of Fire: Debris Throwing by Wild Octopuses | bioRxiv
http://dx.doi.org/10.1101/2021.08.18.456805
Female octopuses observed throwing stuff at males harassing them
https://phys.org/news/2021-08-female-octopuses-males.html
研究を主導したピーター・ゴドフリー=スミス氏らは、2015年に「タコが他のタコに物をぶつける」という事例を観測していました。
Fighting octopuses may be using shells as weapons - YouTube
当時はタコが意図的に狙われたのか、偶然なのかは不明だったため、研究チームはオーストラリアの沖合、ジャービス湾で複数のタコを観察しました。
タコは水中で自由に遊泳するために、漏斗と呼ばれる器官を体に備えています。タコは自在に動かすことができる漏斗で水を噴射し、ジェット水流で任意の方向に進むことができるのですが、この漏斗で貝殻や泥、藻類などを噴射することもあります。ゴドフリー=スミス氏らが観察した際、タコは邪魔な物や巣を作る材料を動かす目的のほか、他のタコを追い払おうとして貝殻などを噴射しているのが確認されたとのこと。
観察を行った地域に生息するタコの性別の割合は、オスとメスが約1.7~5対1。しかし、他のタコに物を噴射した回数の割合はオスが11回、メスが90回と、メスの方がはるかに物を噴射する割合が高いことがゴドフリー=スミス氏らの観察により分かりました。
ゴドフリー=スミス氏らによると、観察対象となった一部のメスの個体は貝殻や泥を足に絡め、交尾を迫ってくるオスのタコめがけて噴射していたとのこと。その回数は、多い時には1時間で17回でした。ただしコントロールは正確ではないようで、17回中8回が近くにいた別のタコにヒット。最もアクティブだったオスのタコに当たったのは1回だけでした。
ゴドフリー=スミス氏らは、タコが交尾の阻止や威嚇、接近による反応などで物を噴射する時と、邪魔な物を噴射する時では噴射の方法が異なっていたことから、社会的相互作用を目的として意図的に物を噴射していると推測。噴射回数を目的ごとに分類したところ、社会的相互作用を目的とした噴射が全体の36%、巣の掃除が32%、食事後の残飯の噴射が8%という結果が得られました。
ゴドフリー=スミス氏らは「物を噴射されたタコが噴射し返すという報復行動は観察されませんでした。私たちは、物を噴射することがどの程度の社会的相互作用として働くのかに関心を抱いています」と述べました。
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