生き物

「サソリと毒グモはどっちが強いのか?」という疑問に科学者が回答


サソリとクモは、恐竜の時代以前から何億年にもわたり存在している節足動物です。「サソリと毒グモが戦った時、果たしてどちらが戦いに勝つのか」という問題はYouTubeやオンラインフォーラムで何度も議論されており、さらには研究論文のテーマにもなっています。そんな長年にわたる議論について、クイーンズランド大学の研究員であるサマンサ・ニクソン氏が解説しています。

Ever wondered who'd win in a fight between a scorpion and tarantula? A venom scientist explains
https://theconversation.com/ever-wondered-whod-win-in-a-fight-between-a-scorpion-and-tarantula-a-venom-scientist-explains-155138

一口にサソリと毒グモと言っても、サソリはおよそ2500種、毒グモは900種以上存在しています。そこで、ニクソン氏は「サイズ」「速度」「毒」の3つに注目する必要があるとしています。


なお、一般的に毒グモというと「タランチュラ」を想像しますが、現実のタランチュラとは巨大なクモを総称する言葉で、主にオオツチグモ科の群を示します。

◆サイズと武器
「獲物を伏して待つ」という基本戦術は、サソリもクモも同じ。しかし、サソリはキチンというタンパク質が重なり合った、硬い外骨格を着ています。また、サソリには大きなハサミが2本あり、タランチュラをつかむことが可能です。例えば、世界最大のサソリであるHeterometrus swammerdamiは体長最大22cmにまで成長することで知られており、その巨大なはさみでクモを粉砕することもできます。ただし、クモは逃げるために足を切り離し、脱皮を続けながら足の再生を図ることができるため、致命傷を負わせるまでではないでしょう、とニクソン氏。

by Nireekshit

もちろん毒グモも、サイズではサソリに負けていません。南米の熱帯雨林に生息するルブロンオオツチグモは足を広げるとおよそ30cmに至ります。また、ハサミはもっていませんが、キチンでできた硬く鋭い牙を持ち、相手に深い刺し傷を負わせることができます。また、毒を持つ毒グモは全身に毒性のある剛毛が生えているものもおり、相手の皮膚や目を攻撃できます。ただし、サソリは全身をキチンの殻に覆われているので、この毒毛はあまり効果がありません。

◆速度
2017年に発表された論文によれば、オブトサソリの1種は身を守るために毎秒約1.3mで尻尾を振ることができることがわかっています。また、2015年の研究によれば、テキサスブラウンタランチュラは気温によって変動するものの、毎秒1.2mほどの速さで移動できるとのこと。サソリとタランチュラのどちらも、俊敏性では同程度といえます。

by Mothore

◆毒
サソリは尾の針から、クモは牙から毒を注入します。サソリの毒もクモの毒も、主に神経系を標的とする毒です。また、両者とも、何億年もの進化の中で毒の成分が複雑化し、高い即効性と毒性を持つのが特徴。毒は獲物を捕まえるためだけでなく、自分の身を脅かすネズミや鳥などから身を守るためにも使われます。

人間を脅かしているのはクモよりもサソリで、2008年の報告によれば、サソリに刺される人は年間120万人を超え、そのうち3000人以上が亡くなってしまうとのこと。

一般的な経験則として、サソリのはさみが小さければ小さいほど、毒は強くなるといわれています。たとえば中東からヨーロッパに生息しているオブトサソリは非常に細いハサミをもっていますが、その毒は非常に強力。刺されてしまうと心筋障害・肺水腫・心原性ショックを起こし、命に関わるといわれています。

by מינוזיג

一方で、クモ毒は人間にとって危険だといわれていますが、実際にクモにかまれて亡くなったという記録はほとんどありません。例えば、インドに生息しているインディアンオーナメンタルタランチュラは比較的強い毒を持ちますが、かまれると強い痛みが数週間続き、筋肉のけいれんを引き起こすものの、致命的というほどではないとのこと。ただし、動きが非常に素早く攻撃的なので、特に注意すべきクモの1種とされています。

ただし、敵のサイズが大きくなればなるほど必要になる毒の強さと量は増えます。そのため、サソリとクモも最大級は同程度のサイズですが、毒は明らかにサソリの方が強いので、サソリの方がやや有利といえます。実際に西オーストラリアに生息するIsometroides vescusというサソリは、一部のクモを狩っているという記録があります。

しかし、クモのサイズが大きくなると、逆にクモがサソリの捕食者となっている例も報告されています。一部の研究によると、ユカタン半島に住んでいるTliltocatl vagansというクモとCentruroides種と呼ばれるサソリを実験室で一緒に飼育した時、必ずTliltocatl vagansが勝利していたとのこと。また、Tliltocatl vagansが生息する地域では、サソリの生息数が非常に少ないそうです。

by Bernard DUPONT

また、あるサソリの毒が昆虫や哺乳類には効果があったのに対し、一部のクモには全く効果がなかったことが報告されており、クモがサソリの毒から身を守るために進化してきた可能性が示唆されています。なぜクモにサソリの毒が効かないのか、その原理は未解明ですが、クモのリンパ液にサソリ毒を解毒する成分が含まれているのではないかと考えられています。

ニクソン氏は「全体として、サイズ・速度・毒性を考慮すると、クモとサソリのどちらが有利かという答えは変化しますが、私はクモの勝利に賭けます」とコメントしました。

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in 生き物, Posted by log1i_yk

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