数兆匹もの群れとなって地上を覆い尽くす周期ゼミ「ブルードX」の羽化が始まる
17年あるいは13年周期で大量発生する「周期ゼミ」が、2021年に羽化のタイミングを迎えます。数十億匹から数兆匹が発生すると予測されるこの周期ゼミについて、FAQをアメリカ合衆国国立公園局が公開しています。
Brood X Periodical Cicadas FAQ (U.S. National Park Service)
https://www.nps.gov/articles/000/cicadas-brood-x.htm
周期ゼミはカメムシ目に属する昆虫で、全部で7種存在しており、主にアメリカ中西部と東海岸に生息しています。周期ゼミの群れは発生する年ごとに「Brood(ブルード)」と呼ばれており、それぞれのブルードにはローマ数字がつけられています。2021年に発生するのは「Brood X(ブルードX)」と呼ばれる集団で、周期ゼミの中でも最大の集団。なお、ブルードXはペンシルベニア州とバージニア州北部、インディアナ州、テネシー州東部という3つのエリアに生息している周期ゼミです。
周期ゼミの体は赤みがかったオレンジ色が特徴。緑色のセミは毎年出現する通常の種であるため、簡単に見分けがつきます。
セミの目撃情報をまとめるCicadas.infoによると、各ブルードの生息地域および発生年は以下のマップの通り。
大量発生する時期は天候に依存するため明確には不明とアメリカ合衆国国立公園局は説明していますが、「地温が華氏64度(摂氏17.8度)になったタイミング」が羽化のタイミングとなるそうです。すでに一部でブルードXの羽化が始まっていると報じられていますが、「5月の第1週から第2週にかけて羽化し、6月末までに生涯を終えることになるのでは」とアメリカ合衆国国立公園局は記しています。なお、通常のセミは毎年6月から8月にかけて羽化するので、ブルードXの羽化はかなり早いといえます。
周期ゼミが17年や13年といった長い周期で大量発生する理由について、アメリカ合衆国国立公園局は「セミを食べる捕食者は数多く存在しますが、それらが十分に食べられる以上の周期ゼミが大量発生します。つまり、周期ゼミは生存戦略として大量発生し、種を残してきたというわけです」と説明しています。なお、周期ゼミを食べる生き物としては、鳥、アライグマ、オポッサム、キツネ、トガリネズミ、カエル、ヒキガエル、カメ、サカナ、マッソスポラ菌などが挙げられています。
なお、マッソスポラ菌は感染したセミの腹部を崩壊させながらも、生きたセミと交尾し菌の感染を広めていくという「ゾンビセミ」を増殖させる菌です。
宿主の体を崩壊させながらゾンビセミを増殖させるホラー映画のような菌「マッソスポラ菌」 - GIGAZINE
ブルードXの幼虫は地中で17年間の時を過ごしたのち、成虫となると地中に出て羽化します。地中に出たブルードXは約1カ月地上で生活し、交尾後に死にます。メスのブルードXは木に約500個の卵を産み、卵は約6週間でふ化。ふ化した幼虫は地中にもぐり、17年後に羽化のため再び地上にすがたを現します。
周期ゼミはオスが先に地上に出てきて、羽の付け根近くにある鼓膜から振動を発することで鳴き、メスを引き付けようとします。対するメスは、羽でカチッという音を立て、交尾する意欲があることを示します。なお、周期ゼミは種ごとに異なる歌をうたい、昆虫界で最も大きな音を出すそうです。昆虫学者は周期ゼミが大きな音を出す理由を「捕食者の耳を傷つけて身を守るため」と考えています。
周期ゼミには13年周期で羽化するものもいますが、17年周期のものと比べると個体数ははるかに少ないそうです。また、21年周期のセミもいるそうです。なお、周期ゼミは17年周期ゼミが12種、13年周期ゼミが3種確認されています。
周期ゼミの大量発生による環境への影響について、アメリカ合衆国国立公園局は「メスが若い木の枝に卵を産むため、若い木に害をおよぼす可能性があります。そのため、2021年の春は若い木を植えるのに適したタイミングではありません。2021年に若い木を植えるなら、秋が適した時期でしょう。春に植樹する場合は網などで保護するのがよいでしょう」と説明しています。
一方で、周期ゼミの大量発生は生き物にとってもごちそうそのものであり、研究によると周期ゼミが出現する年には一部の鳥の間でより大きなサイズの個体が確認されているとのこと。また、周期ゼミの大量の死体は土壌にとっての栄養にもなります。
なお、周期ゼミはアメリカの在来種であり、噛んだり刺したりする危険はなく、ペットに対しても毒性を有していません。ただし、貝アレルギーの場合、セミを食べるとセミアレルギーになるケースがあるとのことです。
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