生き物

動物たちはいったいどこからきたのか?


生き物は大まかに分ければバクテリア、植物、動物の3つに分類できます。動物だけでも100万種類程度存在し、植物やバクテリアまで含めれば地球上には500万種類以上の生物が存在するそうですが、「動物たちはいったいどこからきたのか?」という誰もが1度はふと考えたことがありそうな壮大なテーマを、Quanta Magazineが解き明かしています。

Did Bacteria Drive the Origins of Animals? | Simons Foundation
http://www.simonsfoundation.org/quanta/20140729-where-animals-come-from/

地球が誕生したのは45億5000万年前と考えられていますが、それから約5億5000万年後になって地球上に原始生命が誕生したそうです。原始生命の誕生から何十億年もの間、地球上には単細胞生物しか存在しませんでした。

誕生から数十億年が経過したのち、生物はより複雑な形態をとるようになっていきます。細胞は新しい三次元構造を組織し、「移動」「食事」「消化」などの役割ごとに細胞を分けるようになり、複雑な多細胞をもった生物、つまり「動物」が誕生するわけです。これはおよそ5億4000万年前のことで、この時期には「カンブリア爆発」と呼ばれる生物が一気に多様化した不可思議な現象が起きた時期でもあります。この時期に、巻き貝やヒトデ、昆虫や甲殻類まであらゆる動物の原型となる生物が一気に現れているわけですが、「単細胞から多細胞の複雑な生物にどうやって生物は進化してきたのか?」という謎は深まるばかりです。

By NASA Goddard Space Flight Center

動物の出生や増加は当然の出来事だと考える傾向もありますが、何十億年も地球上を独占してきた単細胞生物が突如多細胞生物となり、動物に進化していったというプロセスは気になるところ。多細胞生物は、複数の細胞が一緒に生きるために細胞たちをくっつけておく必要があったり、細胞間でコミュニケーションをとる必要があったり、相互に酸素やエネルギーをやり取りする必要まであります。

そんな「動物の起源」に強い関心を抱いていたのがNicole Kingさん。彼女はカリフォルニアバークレー校の進化生物学者で、ハワード・ヒューズ医療研究所の研究者でもあります。太古の生物について調査すると聞けば、安直に「化石なんかを調べるのかな?」とも思いますが、化石は明確な答えを教えてくれるわけではない、とのこと。

進化生物学者のNicole Kingさん。


そこでKingさんが目をつけたのが、顕微鏡を使わなければ見えないくらいに小さな水生生物である襟鞭毛虫。これは「単細胞生物の中で最も動物に近い」とされている生物で、Kingさんは「もしも動物の起源が知りたいのならば、襟鞭毛虫を見るべきだと私は断言します」と言います。

襟鞭毛虫は楕円形に1本のしっぽのような鞭毛をそなえた生物で、この鞭毛を使って水中を泳いだり食事したりします。鞭毛をあちこちゆらすことで、バクテリアを水の流れに巻き込み、襟部分にくっつけて食事するそうです。

By richardgriscom

Kingさんは襟鞭毛虫の柔軟過ぎるライフスタイルに強い興味を持ったそうです。襟鞭毛虫の一種であるSalpingoeca rosetta(S. rosetta)種は海岸沿いの入り江に暮らす生物で、これらは単体で活動することも可能ですが、複数個体が薄い繊維状のものでつながって多細胞生物のようになることもでき、多いときには50以上の個体がつながることもあるそうです。

始めはなぜS. rosettaが集団化するのか分からなかったそうですが、2006年に学生のミスをきっかけとして集団化のメカニズムが判明します。S. rosettaが集団化するのは、簡単に言えばそれまでに知らない種類のバクテリア(S. rosettaが捕食できる)が出現した際で、KingさんはS. rosettaが集団化して多細胞生物のようになるのは、単細胞生物のままでいるよりも複数でつながる方が生存に適しているからでは、と推測しています。さらに、Kingさんは「すべての生物の共通先祖も、S. rosettaのように6億年前に同じように運命的な出会いをはたし、多細胞化したのでは」と考えているそうです。


Kingさんの研究は、現代の生物学者からは無視されるようなものに光を当てたものであり、これが新しい見知を開いたことで多くの科学者から称賛されています。「彼女は、初期の動物進化に対する見識を得るために戦略的に研究する生物を選び、系統的にそれを研究しました」とカリフォルニア工科大学の生物学者であるDianne Newman氏はKingさんを評価。さらに、「Kingさんの研究は、バクテリアの世界でさえ動物の進化を推測するための重要なキーになり得ることを思い出させてくれる」と言います。

S. rosettaがバクテリアに反応して集団化する現象は、例えば「多細胞化することで得られる恩恵」などを解き明かすための研究にて注目されており、Kingさんと彼女の研究チームもこの題材を研究中とのこと。ただし、バクテリアが現代の襟鞭毛虫を集団化させるからといって、古代の生き物たちもそうであったとは言い切れず、襟鞭毛虫が集団化するメカニズムは古代から備えていたものではなく、現代までの長い進化の過程で得たものである、と考える生物学者も存在します。

Kingさんは、「私はバクテリアが動物の起源に何かしら重大な影響を及ぼしているだろう、と仮定するには十分すぎる事実を得ています。動物が誕生する前の地球上にはたくさんのバクテリアが存在し、これらは現代の動物の先祖である動物や生き物に大きな影響を及ぼしただろう」と語ります。太古の昔に大量に存在していたバクテリアたち、これを摂取して動物の先祖たちがエネルギーを得ていたであろうことは容易に想像できます。動物はこのバクテリアをより効率よく捕食するべき多様な進化をはたしていったであろうと語り、Kingさんは「動物の進化の中心にはバクテリアが存在した」と推測しています。

By cesar harada

動物の進化とバクテリアの関係性で特に注目すべきなのは、「バクテリアが古代の単細胞生物の多細胞化を誘発したかもしれない」という点。珊瑚やホヤ、海綿動物に管棲ゴカイなどは、生まれたばかりの段階では水中に浮かんでいますが、ある研究によればこれらはバクテリアが作り出した化合物を使って岩などにくっつき、生活を変化させるそうです。これは襟鞭毛虫からの進化の名残ではないかと考えられており、もしもバクテリア混合物に対する反応が、もっとも太古から存在する動物たちの間で共通して見られるものならば、これは最初期の動物たちが「バクテリアの豊富な環境に適応するために進化した」と考えるには妥当過ぎる根拠になる、とKingさんは語っています。

また、動物とバクテリアの関係は最初期の動物との間にだけあるわけではありません。例えば、バクテリアはヤリイカの器官の成長にとって必要なものであることがとある研究により判明しており、他にも動物免疫系の成熟に必要な物質であったり、ゼブラフィッシュとハツカネズミの内臓や、哺乳類の脳などを形成するのにも必須であることが分かっています。さらに、バクテリアはシロアリから人間に及ぶまで、さまざまな生き物の消化器系にとって必須のものでもあります。

動物の進化とバクテリアの関係がどのようなものなのか、それとも全く関係のないものなのかは依然として明確にはなっていませんが、Kingさんの研究の通り「襟鞭毛虫の集団化から多細胞生物が誕生した」とすれば、人間の遠い先祖は精子みたいな形をしていた、ということになるのでしょうか。

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in サイエンス,   生き物, Posted by logu_ii