生き物

ハエに卵を植え付ける寄生バチのオスが「ハエから生まれてくる子どもの性別」を事前察知できるという研究結果


ハチ目の中には、植物や他の昆虫に卵を植え付けるという生態を有する寄生バチが存在します。ハエの体内に卵を植え付けるという寄生バチNasonia vitripennisが、「卵を植え付けられたハエから生まれてくるのがオスなのかメスなのかを事前察知できる」という研究結果が新たに発表されました。

Male parasitic wasp can sniff out female mates ready to burst from their hosts | Live Science
https://www.livescience.com/male-jewel-wasps-sniff-females-inside-host.html

The males of the parasitoid wasp, Nasonia vitripennis, can identify which fly hosts contain females | bioRxiv
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.04.06.438549v2.full

Nasonia vitripennisは北米全域に分布する寄生バチの一種で、「ハエの幼虫(ウジ)に麻痺毒と卵を注入する」という恐怖の繁殖方式で広く知られています。植え付けられた卵はウジの体内でふ化し、体内を食い荒らしながら成長。約2週間かけて成体となった後、中から抜け出してハエを食べ尽くして繁殖相手を探しに飛び立ちます。


Nasonia vitripennisのオスはメスよりも早く成体となることから、繁殖のために「オスがメスを探す」ことで知られています。インド科学教育研究所のGarima Prazapati氏らは新たに、オスのNasonia vitripennisが交尾相手を探し出すために「匂い」を使っているという研究結果を発表しました。

Nasonia vitripennisは単為生殖も可能で、未受精卵からはオスのみが、受精卵からはメスのみが生まれることから、研究者は「オスが出てくる宿主(交尾していないメスが卵を植え付けたウジ)」を判別できます。Prazapati氏らは「オスが出てくる宿主ばかりを集めたシャーレ」「メスが出てくる可能性がある宿主ばかりを集めたシャーレ」の2種類を用意し、宿主から出てきたばかりのオスのNasonia vitripennis26匹を投入。これら26匹がどちらのシャーレに寄りつくのかを調べました。

その結果、出てきたばかりのオスは「メスが出てくる可能性のあるシャーレ」に4倍近く長い時間を割いたことが判明。何らかの形で宿主から出てくる個体の性別を事前察知していることが示唆されました。


Prazapati氏らの調査によると、Nasonia vitripennisのメスが中にいる場合は宿主自体の「Nasonia vitripennisのメスに多く含まれる特殊な炭化水素」の含有量が高いと判明。Prazapati氏らは「宿主の炭化水素の匂いを嗅ぎ分けることで、中から出てくる同族の性別を識別しているのでは」と結論づけています。

Prazapati氏らは「中から出てくる前にオスかメスかを察知できるという能力は、生殖上の利点がある」とコメント。今後はNasonia vitripennis以外の寄生バチでの調査も行う予定だとしています。

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in 生き物, Posted by darkhorse_log

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