iOS 14.5でプライバシーが強化されてiOSへの企業の広告費はどう変化したのか?
AppleはiOS 14.5でプライバシー強化を行いましたが、これにより「アプリが広告表示のためにユーザーの行動を追跡すること」が、ユーザーの許可制になりました。Facebookを始めとする広告企業に大きな打撃を与えると指摘された仕様変更ですが、実際のところ、iOSに対する広告費はどのように変化したのかを、マーケティング企業のSingularが公開しています。
iOS ad spend has been dropping since the release of iOS 14.5
https://www.singular.net/blog/ios-ad-spend-dropping/
AppleはiOS 14.5でApp Tracking Transparency(ATT)というプライバシー機能を導入し、「アプリがユーザーの広告識別子を利用すること」をユーザーが選択できるようにしました。アプリは広告識別子を利用してユーザーの行動を把握し、その興味や関心に基づいた広告を表示します。このため、広告識別子を利用できないことは企業にとって不利益になると考えられています。
Singularのデータによると、ATTの導入により、iOSに対する企業の広告費は減少し続けているとのこと。
以下はモバイル広告のうち、Androidに対する広告費(青)とiOSに対する広告費(赤)を示したグラフ。2021年2月の1週目では、Androidに対する広告費は全体の56.16%、iOSに対する広告費は43.84%でほぼ半々でした。しかし、時間の経過と共にグラフの差が開き、6月14日から20日までの1週間では、Androidに対する広告費が70.29%でiOSに対する広告費が29.71%となりました。
2021年2月1日時点でのiOSへの総広告費をベースに考えると、6月14日時点のiOSへの総広告費は「0.6(60%)」まで減少しています。
ただし、iOS 14.5がリリースされる前には、通常よりも多くの広告費がiOSに対して支払われたとSingularは説明。これにより、iOSへの広告費の減少幅が大きく見えるとのことです。
また、Singularの調べによると、iOSユーザーのうち、iOS 14.5にアップデートした人は全体の52%。国によっても差があり、ドイツはユーザー全体の64.39%、日本は全体の63.77%がアップデートしましたが、南アフリカでは38.7%にとどまっています。
2021年5月21日の時点で世界全体で見たiOS 14.5の利用率は20%未満でした。このとき、ユーザーの19.4%がアプリによる広告追跡を許可していましたが、iOSユーザーが52%にまで増加すると、広告追跡が許可される割合は23.64%にまで上昇しました。
広告追跡が許可される、つまりオプトインされる割合も、国によって異なります。プライバシー強化について大々的に宣伝されているアメリカではオプトインの割合が16.83%ですが、あまり宣伝されていないブラジルではほぼ4割がオプトインしています。
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